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仮執行宣言付きの敗訴判決の言い渡しを受けた場合の対応

1 金銭の支払請求等の訴訟を提起され、第1審で敗訴した場合、金銭の支払命令に加えて、仮執行宣言が付されることが通常です。

 仮執行宣言が付されると、判決を不服として控訴したとしても、原告は強制執行をすることができます。

 仮執行宣言による強制執行を防ぐ制度として、民事訴訟法は、強制執行停止制度を定めています。

2 強制執行停止制度の流れは、以下のとおりです。

⑴ 控訴申立と強制執行停止決定を申立てる。

 控訴を申し立てる場合には、控訴に関する委任状と資格証明書、強制執行停止申立てに関する委任状と資格証明がそれぞれ必要です。

 追完が認められる場合もあります。

 控訴の申し立てには、印紙等が必要となります。

⑵ 裁判所から立担保命令が出される。

 担保金の額は第1審判決で認容された額の8割程度と一般に言われているようですが、上下することも経験しました。

 担保金の額は、強制執行申立てを行わなければわからないため、タイミングによっては、翌日以降にしか分からないこともあります。

⑶ 立担保命令を出した裁判所の所在地を管轄する供託所に供託する。

 供託するに際しては、上記とは別の書式の委任状と資格証明書が要求されます。

 供託の方法は、振込、電子納付、現金持参の方法がありますが、スピードを重視しつつ、事務所の取引金融機関がどの程度の金額まで対応しているか(1000万円以上供託するべき場合もあります。)なども確認しておく必要があります。

 名古屋地裁本庁で言い渡された判決の場合には、名古屋法務局で供託することになります。

⑷ 立担保命令を出した裁判所に供託書を持参し強制執行停止決定が出される。

3 担保のための金銭を準備することも重要ですが、以上について、敗訴判決が言い渡されたのちに、迅速に対応することが求められます。

 適宜、担当書記官や法務局と電話で連絡をとりながら、必要書類の不備をなくしつつ、裁判所や法務局に実際に赴く回数を減らす工夫も必要です。

 控訴審で和解する場合には、担保取り消しについての同意条項を定めておくべきです。

担保取り消しの場合には、供託所に対する委任状が改めて要求されます。




隣地から越境した竹木の枝の対応方法

 越境してきた竹木の枝は、竹木の所有者の所有権に属しますが、どのような手続きによって越境してきた枝の切除が認められるかについて、改正前民法では、竹木の所有者に対し枝を切除するよう請求することができる旨定めていましたが、竹木の所有者が自発的に枝を切除しない場合には、訴訟提起して判決を取得し、強制執行を行うことが必要とされていました。

 今年4月から施行されている民法233条3項は、①土地の所有者が竹木の所有者に対し枝を切除するよう一定の期間を定めて催告したにもかかわらず当該期間内に切除が行われなかったとき、②竹木の所有者が不明もしくはその所在が不明のとき、③急迫の事情があるときは、自ら切除することができることを定めました。

 上記①の「一定の期間」は、日本弁護士連合会の所有者不明土地問題等に関するワーキンググループや、参議院法務委員会では、「基本的には2週間程度」という見解が示されています。

 枝と異なり根が越境しているときには、民法は従来から自ら切除できる旨定められていましたが、この意義を、根の切除請求権とは別個独立した実体法上の権利と考える立場と、物権的妨害排除請求権の一種として根の切除請求権が認められることを前提に、当該請求権の自力救済を承認したと考える立場がありました。

 前者の立場は、根が越境して土地に侵入したことにより根が土地に附合し土地の所有者が根の所有権を取得したと考えることから、切除した根も土地所有者が保持することが導かれることになりますが、後者の立場は、根の所有権が竹木の所有者にあることは変わらないことから、切除した根を保持することはできないことになります。

 なお、改正民法233条2項は、竹木が数人が共有している場合には、各共有者が越境した枝を切除することができる旨定められ、不特定又は所在不明の共有者以外の共有者に対して枝を切除するよう催告したにもかかわらず当該共有者が切除しないときは、自ら切除することができることになります。




現行NISA制度の概要

1 NISA(少額投資非課税制度)は、金融所得一体課税への取り組みの中で、個人の株式投資を促進することにより、家計の資産形成を支援するとともに、株式市場を活性化し、経済成長に必要な成長資金の拡大を図るため、平成22年度税制改正で導入され、平成26年1月1日から施行され、種々の改正を経て現行の制度に至っています。

2 通常、株式や投資信託などの金融商品に投資をした場合、これらを売却して得た利益や受け取った配当に対して、20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)がかかります。NISA口座内で、毎年一定金額の範囲内で購入したこれらの金融商品から得られる利益が非課税になる制度ですが、NISA口座では、売買の損失が発生しても、特定口座や一般口座で保有する他の株式等の配当金や売買益等との損益通算はできません。

3 現行NISAは、成年が利用できる一般NISA・つみたてNISA、未成年が対象のジュニアNISAの3種類があります。
⑴ 一般NISAは、株式・投資信託等を年間120万円まで購入でき、最大5年間非課税で保有でき、つみたてNISAは、一定の投資信託を年間40万円まで購入でき、最大20年間非課税で保有できる制度ですが、一般NISA、つみたてNISAはどちらか一方しか利用できません。
⑵ ジュニアNISAは、株式・投資信託等を年間80万円まで購入でき、最大5年間非課税で保有できます。

4 令和6年からの新NISA制度の開始により、一般NISAは成長投資枠、つみたてNISAはつみたて投資枠に実質移行して大幅に拡充されることになり、ジュニアNISAについては、新規の口座開設が2023年までとされています。




不貞の相手方に対する離婚に伴う慰謝料請求は原則として認められないとされた最高裁平成31年2月19日判決

 最高裁平成31年2月19日判決は、夫婦の一方が他方配偶者と不貞行為に及んだ第三者に対し、離婚をやむなくされ精神的苦痛を受けたと主張して、離婚に伴う慰謝料請求(いわゆる「離婚慰謝料」)をした事案についての判断を示しました。

 結論として、不貞の相手方である第三者が、単に不貞行為に及ぶにとどまらず、当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情のない限り、離婚に伴う慰謝料を請求することはできないと判示しました。

 学説上は否定説が有力とされている不貞行為自体を理由とする、いわゆる「不貞慰謝料」の短期消滅時効の起算点は不貞行為を知った時ですが、離婚慰謝料の短期消滅時効の起算点は離婚時とされていることが本事案でのポイントだと思います。

 また慰謝料の額としても、離婚慰謝料の方が大きくなる傾向にあるとされていますが、最終的に離婚するか否かは夫婦自身が決めることから、謙抑的であるべきとされていました。

 弁護士としては、特段の事情については、「客観的に何らかの付加的な行為(例えば、不貞行為をもった配偶者を騙し、脅迫するなどして離婚に追い込んだ。)があって初めて「離婚のやむなきに至らしめた」と評価されることになるものと解される」という指摘が重要です。




女性の6か月の再婚禁止期間の廃止(令和4年法律102号)

 民法733条1項は、女性は離婚後6カ月を経過した後でないと再婚できないと定めていました(いわゆる、「待婚期間」「再婚禁止期間」と呼ばれています)。

 民法772条1項、2項が、妻が結婚中に妊娠した子は、夫の子と推定し、さらに、結婚した日から200日以降、または離婚後300日以内に生まれた子は、その結婚中に妊娠したものであると、女性が生んだ子の父親が誰かを推定していることから、女性が再婚後間もなく生んだ子の父親が誰かを巡って争いになることを防ぐためというのがその理由とされていました。

 しかし、再婚禁止期間が父親が誰かを推定するためであれば、6カ月(180日)は必要以上に長く、離婚後100日経過してから再婚すれば、離婚した前夫と再婚後の夫で、父親の推定は重ならないことは明らかであることは長らく指摘されていました。

 待婚期間の制度自体が違憲であることが争われた最高裁平成27年12月16日判決が100日を超える再婚禁止期間は違憲との判決を下し、再婚禁止間は6カ月から100日に改正されるとともに、離婚したときに妊娠していないこと、離婚の後に出産した場合には、離婚後すぐにでも再婚できることになりました(民法733条2項)。

 さらに、再婚禁止期間の規定自体が削除されました。




遺贈による所有権移転登記の簡略化について

 所有者不明土地が発生する原因を解消するための方策として、相続登記の申請が義務化されました(施行は2024年4月1日から)。

 それに先立ち、改正不動産登記法63条3項が、今年の4月から遺贈による所有権の移転登記手続きの簡略化を規定しています。

 相続人が受遺者である場合に、遺贈を原因とする所有権移転登記について、登記権利者である受遺者単独での登記申請が可能となりました。

 従来は、受遺者が相続人であっても、登記義務者である相続人全員か遺言執行者との共同申請が要求されていたことの負担解消が図られたことになります。




運転免許に関する意見の聴取(聴聞)手続き

 愛知県警本部では、毎週木曜日午前9時から開催されることが決まっており、原則として受付の順に、随時、カーテンで仕切られた部屋に呼ばれ、「聴聞官」と、主にメモをとったり点数制度を説明する担当の方により行われます。

 愛知県警本部の最寄駅は、最近名前の変わった「名古屋城駅」です。

 交通違反の事実や事故の事実、被害者がいる場合には被害者の回復状況や示談の進捗、対象者の意見や有利な証拠の提出を行うことが出来ます。

 事前に弁護士が補佐人や代理人の立場で出席することを伝えておけば、それなりの時間を融通する印象です。

 聴聞の結果を公安委員会に報告し、お昼までには、「運転免許取消処分書」の交付による正式に処分が通知されます。

 正式な処分が通知されるまでの時間は、外出することもできます。

 処分の通知がなされる直前に、免許の返納を行います。 

 処分結果に不服がある場合には、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内に公安委員会に審査請求をすることが出来ますし、知った日の翌日から起算して6か月以内に県を被告にして取消訴訟をすることもできます。

 この取消し訴訟で県を代表するのは公安委員会です。

 なお、審査請求や取消訴訟をしても、処分の効力はそのままであることから、効力を停止したい場合には、執行停止の申立てを行い認められる必要があります。

 刑事手続きとは別個独立した手続きではあるものの、基本的には前提となる事実関係をもとに法的処分が行われるものであることから、もう片方の手続きの進捗状況を気にはするようであり、聴聞官から刑事手続きの進行状況を聞かれたり、起訴するか否かを決める検察官から聴聞手続きの進捗や結果を聞かれることが通常です。




通訳が必要な証人尋問の留意点

 証人尋問では、各証人に割り振られた時間内に行うことが求められます。

 また、原則として、質問に対しては短く回答することが求められ、回答が質問内容と対応していなかったり、回答が長い場合には、途中で、主に裁判官から制止されることもあります。

 通訳が必要な証人の場合、証人の回答は外国語でなされることから、どのような内容なのか、どれくらいで終わるのか等の予測ができません。

 当然ながら、証人の回答が長ければ長いほど、通訳による日本語の回答も長くなることになります。

 尋問を行う弁護士には、より的確な尋問が求められます。




弁護士ドットコムの裁判官データベース

 最近運用が開始され、弁護士の間では少し話題になっている弁護士ドットコムが運用を開始した「裁判官データベース」。

 「裁判官をもっと身近に、司法をもっと身近に」という記載もあり、訴訟を取り扱う一弁護士としても興味本位に見てみました。

 まだまだ、書き込みは少ないですが(サイトには、「ポジティブなものネガティブなものともに歓迎いたします。」との記載あり。)、実際に当たったことのある(現在係属中を含む。)裁判官の名前が複数ありました。

 例えば、争点整理は強引だが記録をよく読んでいない、とか、心証開示後に真逆の判決を下し高裁で覆ったことがある等の書き込みがあれば、依頼者にどこまで共有するべきか悩ましい問題にもなりますし、依頼者との方針を決める際には無視できない要素となりそうです。




女性の再婚禁止期間の廃止

 令和4年12月10日、民法の嫡出推定制度の見直し等を内容とする民法等の一部を改正する法律(令和4年法律第102号。)が成立し、女性の再婚禁止期間が廃止されました。

 令和6年4月1日から施行されます。

 もともと民法733条1項は、女性の最近禁止期間を6ヵ月と定めていました。

 平成8年のいわゆる民法改正要綱において100日に短縮する案がしめされていたところ、女性の再婚禁止期間の合憲性が問題となった最高裁平成27年12月16日大法廷判決は、平成20年頃までには、100日を超える期間を定める部分は憲法に違反する旨判断していました。

 女性の再婚禁止期間を定めること自体が違憲である旨の意見も付されていました。

 今回、上記のとおり、女性の再婚禁止期間の定め自体が廃止されたことの意義は大きいですが、併せて、婚姻の解消等の日から300日以内に子が生まれた場合であっても、母が前夫以外の男性と再婚した後に生まれた子は、再婚後の夫の子と推定すること、夫のみに認められていた嫡出否認権を、子及び母にも認めたこと、嫡出否認の訴えの出訴期間を1年から3年に伸ばすこと、認知の無効の訴えの規律が改正されるなどの関連する大きな改正がなされています。

 弁護士としては、正確に理解しておく必要がありますし、立法論として、同性婚や、(選択的)夫婦別姓、共同親権の議論などの動向も気になるところです。

 夫婦別姓に関する最高裁令和3年6月23日大法廷判決の宮崎裕子裁判官と宇賀克也裁判官の反対意見では、「婚姻により当事者の一方のみが生来の氏名に関する人格的利益を享受し続けるのに対し、他方は自分自身についてのかかる人格的利益を享受できず、かつ、かかる人格的利益の喪失による負担を負い続ける状況になる」という指摘は重要です。




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