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井田良先生「死刑制度の存廃をめぐってー議論の質を高めるために」

 判例時報2428号151ページに掲載されています。

 井田先生自身は,死刑廃止論に与しているとのことですが,死刑存置論,廃止論のいずれかの立場に立つのではなく,「議論の質を高めるために」それぞれの論拠について議論をしている論文です。

 具体的には死刑の一般予防効果,被害感情,誤判の可能性などについて,検討されています。

 また,死刑制度の運用については,存置論,廃止論いずれの立場からも合意形成が可能という立場から,具体的な提言もなされており,弁護士としては一読しておく必要があると思います。




使用者責任の「事業の執行について」の意義

 事業執行性の要件は、使用者の「事業」の範囲内において、被用者が行った行為と被用者の「職務」との間に関連性が存在することを意味するものとされ、裁判例及び学説によって、①使用者の事業の範囲に属するか、②被用者の職務の範囲に属するかという二段階で検討、判断されることになりますが、権限を逸脱したり濫用したような取引的不法行為の事案や、事業の執行との関係がはっきりしない事実的不法行為の事案では、難しい判断となります。

 取引的不法行為の使用者責任が問題となった最高裁平成22年3月30日判決では、当該不法行為が、単に使用者の事業の範囲内にあるというだけでは不十分であり、客観的、外形的に見て、当該被用者が担当する職務の範囲に属するものでなければ使用者責任は成立しない旨判示しています。

 事実的不法行為としてよく議論されるのが、被用者によるけんか、交通事故、暴力行為などですが、被用者が会社内で盗撮を行った行為について、盗撮された従業員が会社に対して使用者責任を追及したという東京地裁平成25年9月25日判決では、当該盗撮行為の事業執行性について否定されています。




事業承継ガイドラインの事業承継に向けた5ステップ

 中小企業庁が公表している事業承継ガイドラインでは、以下の5ステップが紹介されています(内容についてはかなり要約をしています。)。

 事業承継に関する文献では言及されることが多いので、概要を知っていると役立つと思います。

1 事業承継に向けた準備の必要性の認識

  概ね60歳を迎えた経営者に対して,事業承継準備に取組むきっかけを提供することが重要。

2 経営状況・経営課題等の把握(見える化)

 ⑴ 会社の経営状況の見える化

  ア 適正な決算処理が行われているかを点検する。

  イ 保有する自社株式の数を確認するとともに株価評価を行う。 

  ウ 自社の知的資産について,他社ではなく,なぜ,自社が取引先に選ばれているのか等という観点から自社の企業価値の源泉について適切に認識する。

  エ 自社の業界内における位置付け等を客観評価する。

 ⑵ 事業承継課題の見える化

  ア 後継者の有無を確認する。

  イ 将来の相続発生を見据えて,相続税額の試算,納税方法等を検討する。

3 事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)

 ⑴ 本業の競争力強化

   「強み」をつくり,「弱み」を改善する。

 ⑵ 経営体制の総点検

   ガバナンス,内部統制の向上に向けた取組み など

 ⑶ 経営強化に関する取組

   財務状況をタイムリーかつ正確に把握する,経営者自ら利害関係者に財務情報を説明することにより信用力を獲得する など

 ⑷ 業績が悪化した中小企業における事業承継 

   債務免除などの事業再生が必要な場合には,弁護士等の専門家に相談することが重要。

   代表者個人の負債整理について,経営者保証ガイドラインの利用。

4―1 親族内・従業員承継の場合~事業承継計画の策定

 ⑴ 中長期目標の設定

 ⑵ 事業承継計画の策定

  ア 自社の現状分析

  イ 今後の環境変化の予測と対応策・課題の検討

  ウ 事業承継の時期等を盛り込んだ事業の方向性の検討

  エ 具体的な目標の設定

  オ 円滑な事業承継に向けた課題の整理

4-2 社外への引継ぎの場合~M&A等のマッチングの実施(第5)

 ⑴ M&A仲介機関の選定

 ⑵ 売却条件の検討

   従業員の雇用・処遇を現状のまま維持したい など

5 事業承継の実行




日弁連作成「事業承継トラブル・チェックシート」

 日本弁護士連合会のサイトに,「事業承継トラブル・チェックシート」【現経営者向け】同【後継者向け】がアップされています(https://www.nichibenren.or.jp/news/year/2020/200127.html)。

 事業承継を検討する際には,経営者の意向は当然大事ですが,後継者候補(になりうる方を含む。)の方の意向も非常に大事です。

 上記チェックシートでは,そのような観点から,チェックシートとそれに対する回答が平易な表現で作成されています。




転居命令違反が解雇事由になるかが争われた事例(消極)

 判例タイムズ1467号185頁に掲載されている東京地裁平成30年6月8日判決です(東京高裁平成30年11月14日判決で公訴棄却の判断がなされているとのことです。)。

 事案は、配置転換により勤務場所までの通勤時間が約3時間となったところ、会社が、勤務場所近くに転居するよう転居命令を発したが労働者が従わなかったことから、解雇したというものです。

 会社が、当該労働者の長距離通勤が労働安全衛生法上不相当であると考えたことが事の発端だと考えられ、裁判所も、一般論として、個別の合意なく労働者の勤務場所を決定し、勤務場所の変更に伴う居住地の変更を命じて労務の提供を求める権限を有する旨判示しています。

 そのうえで、当該転居命令が発された時期や、早朝・夜間の勤務の必要がないことや緊急時の対応が必要ないこと等の業務の内容、単身赴任による負担との比較等を具体的に検討し、転居を命令する義務まではないと判断されています。

 判例タイムズのコメントによれば、転居命令について判断した裁判例は見当たらないということで、労務管理を考える際に、その判断枠組みや事実の検討が参考になるものと思います。




休業補償給付の要件「労働することができない」の意義

 休業補償給付の要件として「労働することができない」がありますが,「労働することができない」とは,一般的に労働不能であることを意味すると考えられています。

 つまり,現実に勤務先で行える仕事があるかないかにかかわらず,軽作業をできる状態であれば,「労働することができない」には該当しないと判断されることになります。

 例えば,医師が「軽作業は可能」という意見を出している場合には,通院日以外は休業補償給付は支給されないということになります。




認定支援機関の更新手続き

 事業承継関係で最近重要な機能を有している認定支援機関の制度ですが,平成30年5月に中小企業等経営強化法が改正され,同年7月9日に施行され,5年間の有効期間が設けられました。

 平成27年7月以前に認定を受けた認定支援機関については,更新の経過措置として令和2年3月31日までの集中受付期間が定められています。

 4月1日以降は書面による更新申請ができず,「認定支援機関電子申請システム」による電子申請のみ認められることになります。




退職の意思表示の有効性判断に,いわゆる「自由な意思」の判断枠組みは適用されるか

 労働者に不利益な労働条件変更がなされた場合に有効になるためには,労働者の単なる同意ではなく、「自由な意思に基づく同意」を要求する一連の最高裁判例があります。

 まず退職金債権放棄の意思表示について,「それが上告人の自由な意思に基づくものであることが明確でなければならない」と判示し結論として有効性を肯定したシンガー・ソーイング・メシーン事件です。

 次に、均等法9条3項で禁止される妊娠等を理由とする不利益取扱いに当たる降格について労働者が承諾した場合の効力が問題になった事案で,禁止される不利益取扱いに該当しない場合として,「当該労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき」と判示し結論として否定した,広島中央保健生協(C生協病院)事件があります。

 退職金規程の不利益変更について,「労働者の同意の有無については,当該変更を受け入れる旨の労働者の行為の有無だけでなく,……当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも,判断されるべき」と判示した山梨県民信用組合事件があります。

 退職については,原則として労働者が自由にできるという意味では,上記裁判例で問題となった法律上の規制がないことから,「自由な意思」に基づく判断がなされたかという厳格な審査を要しないのではないかという考え方も十分成り立つと考えられます。

 相談にのる弁護士としては、仮に「自由な意思」に基づくかの判断枠組みを採用する場合には、理論的には、退職の意思表示の瑕疵との関係についても整理しておく必要があると思います。




町野朔「刑法総論」

 結果地無価値論で有名な町野朔先生が、信山社から刑法総論の本を出すようです。

 法科大学院の刑法科目では、町野先生のほか、林幹人先生、島田聡一郎先生、岩瀬徹先生から講義を受けました。




消滅時効期間の改正

1 令和2年4月1日から施行される改正民法では、消滅時効期間についての重要な変更があります。

2 原則的な時効期間と起算点について、166条1項1号で主観的起算点の考え方を導入し、『権利を行使することができることを知った時』から5年間、同項2号で客観的起算点として『権利を行使することができる時』から10年間の消滅時効期間を規定しています。

 上記166条1項2号は現行法と同じ文言であることから、従来の客観的起算点を基準とする10年の消滅時効に加えて、同項1号の主観的起算を基準とする5年の消滅時効期間が導入されたということになります。

 「権利を行使することができる時」という文言の従来の解釈として、法律上の障害がなくなった時と考えられていましたが、さらに、判例では、「権利行使が現実的に期待できるものであること」という解釈を示し、債権者の救済を図る場面もあったところですが、客観的起算点の解釈適用で考慮すればよいという見解が有力のようです。

3 生命身体に対する侵害については、例外的な消滅時効期間の規律が導入され、債務不履行責任と不法行為責任での統一化がはかられています。

4 賃金請求権については、労働基準法で定められた2年を5年に改正するべきとも考えられますが、労働政策審議会は、当面の間3年とするべき旨の建議を提出しています。




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