内定の法的性質を始期付解約権留保付労働契約の成立と解釈することが実務上通説となっており,事案によって「就労始期付」と「効力発生始期付」に分けて考えるべき場合があると考えられていますが,両者を区別する基準が必ずしも判然としないこと等により,判断を二分化することについては疑問を呈する立場もあります。
就労始期付と判断される場合には,労働契約上の拘束関係は内定時から生じるため,就労を前提としない範囲,例えば,企業の名誉・信用の保持,秘密保持等については,就業規則の適用や業務命令による義務付けが肯定されやすくなります。
一方,効力発生始期付と判断される場合には,入社日までは労働契約の効力は発生していないので,就業規則の適用や業務命令による義務付けは否定的と解されます。
1 改正民法465条の10第1項は,主債務者の保証人に対する情報提供義務を課しています。提供すべき情報の具体的内容は,①財産及び収支の状況,②主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況,③主たる債務の担保として他に提供し,又は提供しようとするものがあるときは,その旨及びその内容が規定されています。
2 情報提供義務を負うのは,債権者ではなく主債務者ですが,民法465条の10第2項は,主債務者が情報を提供しない,あるいは,事実と異なる情報を提供した場合には,債権者がそのことを知り又は知ることができたときは,保証人が保証契約を取り消すことができると定めています。
要するに,主債務者が情報提供をしなかったことを債権者が「知ることができたとき」にも保証契約の取消しが可能となることから,債権者としては,主債務者が民法465の10第1項に規定された情報提供を正しく行ったかどうかの調査を行うべきことになります。
3 どの程度の調査を行う必要があるかについては,債権者に厳格な調査義務を課すものではなく,こういう説明を受けたという書面を保証人から提出させれば,原則として十分であり,保証人から債務者の説明の内容を聞く必要はないと考えられているようです。
4 保証人が代表取締役の場合についても,保証人に対する情報提供義務について免除される規定はないため,当然適用されることになり,保証人である代表取締役が情報提供義務の対象となる事項について誤認し,それによって保証契約の締結をした場合に,債権者がそのことを知っていたか知ることができた時に保証契約が取り消されることになります。
しかし,そのような事態はごくまれだとおもわれ,「代表者が資料を有していること等を確認するなどの簡易な方法をとれば足りると解される。」という見解も主張されています(立法を担当した裁判官や弁護士が執筆している筒井健夫ほか「Q&A改正債権法と保証実務」〔金融財政事情研究会〕)。