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改正個人情報保護法16条の2(不適正な利用の禁止)

 個人情報保護法が改正され、原則として令和4年4月1日に施行されます(同法83条から87条の法定刑の引き上げについては、令和2年12月12日から施行されています)。

 同法16条の2により、違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがある方法で個人情報を利用するこが禁止されることになりました。

 立法の背景には、官報公告を利用してインターネット上の地図と破産者の氏名等を関連付けて公開した破産者マップの事件や、類似のサイトの問題が発生したことが挙げられ、規制対象として、①差別を誘発する利用方法、②違法な行為を営むことが疑われる者への個人情報の提供、③不当要求対策のための反社会的勢力等の名簿の開示などが具体例として挙げられていますが、同条が、「不当な」行為も含めていることから、規制範囲が広範になる可能性もあり、相談を受ける弁護士としては注意が必要です。

 なお、「送達を受けるべき者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合」に公示送達をすることができる旨の改正もなされました(改正個人情報保護法58条の4第1項1号)。




いわゆる「同一労働同一賃金」の法的意味

 日本で導入された正規・非正規の格差是正のための同一労働同一賃金ガイドラインや、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律8条による法的規制は、①賃金に限られないすべての労働条件に関するものであること、②通勤手当や福利厚生施設の利用等においては「同一労働」ではなくても同一扱いをするべきか議論されるべきこと、③そもそも「同一労働」を要件とすることなく不合理な労働条件の相違を禁止しようとする内容であること等から、法的には誤解を招く表現であると考えられます。

 正確には「不合理な相違禁止規制」とも呼ぶべきだと考えられますが、令和2年10月に出された5つの最高裁判決を踏まえた短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律対応を内容とする最近出版された弁護士執筆の実務書のタイトルは、「最新同一労働同一賃金27の実務ポイントー令和3年4月完全施行対応ー」(新日本法規)、「同一労働同一賃金対応の手引き(第2版)」というように、スローガン的な分かりやすさを重視したものになっています。

 なお、ジュリスト最新号の特集名は「正規・非正規の不合理な待遇格差とはー5つの最高裁判例を契機に」となっています。

短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律8条(不合理な待遇の禁止)

 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。




医療機関に対する個別指導・監査対応

 先日、愛知県弁護士会主催の「業務開拓!行政弁護士への誘い~保険医に対する指導・監査への弁護士の関与~」を受講しました。

 保険医療機関の指定及びこれに対する指導・監査の場面において、指定権限庁からの不相当な指導・監査も報告されているということで、弁護士が関与することの必要性が高い分野といわれており、講師の井上清成弁護士から、豊富な実務経験を踏まえた実践的な内容と、根拠となる最低限の条文、若干の裁判例が紹介されました。

 参考文献として紹介された社会保険診療研究会編「医師のための保険診療入門2020」(じほう)のほか、進藤勝久著「保険審査委員による保険診療&請求ガイドライン2020-21年版」(医学通信社)、厚労省のサイト(保険診療における指導・監査)などを確認しています。




割賦販売法の改正とクレジットカード・セキュリティガイドライン【2.0版】

1 令和3年4月1日施行される改正割賦販売法の改正の概要は以下のとおりです。

⑴ 従来の包括支払可能見込額調査に代わる与信審査手法によることを許容する「認定包括信用購入あつせん業者」の創設

⑵ 極度額10万円以下の包括信用購入あつせん業を営む事業者の新たな登録制度による規制を合理化する「登録少額包括信用購入あつせん業者」の創設

⑶ 新たなクレジットカード番号等の保持主体を適切管理義務の主体に追加するため、クレジットカード番号等の適切管理の義務主体の拡充

⑷ 利用者の事前の承諾を要することなく、電子による利用明細等の提供を行うことを許容する、書面交付の電子化

⑸ 業務停止命令の導入

2 クレジットカード・セキュリティガイドライン【2.0版】は、上記1⑶によりクレジットカード番号等の適切管理義務者として追加された事業者を、「決済代行業者等」及び「コード決済事業者等」として定義した上で、当該事業者に求められる指針対応について以下のような改正をおこなっています。

(1) 決済代行業者等(割賦販売法35条の16第1項第4号又は第7号該当事業者)

 ① PCI DSS に準拠し、これを維持・運用する。

 ② 非保持化(非保持と同等/相当を含む)の対策を講じている対面取引は、当該対策に加え、リスクに応じた必要なセキュリティ対策を講じるとともに、適切な管理運営を行う。

(2) コード決済事業者等(割賦販売法35条の16第1項第5号又は第6号該当事業者)

 ① PCI DSS に準拠し、これを維持・運用する。

 ② コード決済事業者等から委託を受けてカード情報を他の決済情報により特定できる状態で管理している事業者についてもPCI DSSに準拠し、これを維持・運用する。




労働者に対する損害賠償請求の裁判例

1 使用者の労働者に対する損害賠償請求について、最高裁昭和51年7月8日判決は、「使用者の事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他の諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償又は求償の請求をすることができるものと解すべきである」と判示しています。

2 労働者の責任制限の基準は、①労働者の帰責性(故意・過失の有無・程度)、②労働者の地位・職務内容・労働条件、③損害発生に対する使用者の寄与度(指示内容の適否、保険加入による事故予防・リスク分散の有無等)とされています(菅野和夫「労働法 第12版」163頁)。

3 裁判例については、判例タイムズ1468号5ページの村木洋二裁判官の「被用者が使用者又は第三者に損害を与えた場合における使用者と被用者の間の賠償・求償関係」に掲載されている裁判例一覧が非常に参考になります。

 以下に、比較的弁護士として相談にのることの多い類型についての裁判例をいくつか紹介します(交通事故類型は除きます)。

⑴ 福岡地裁平成30年9月14日判決

 長距離トラックの運転手であった労働者が突然失踪したことにより受注していた運送業務が履行不能となった事案で、「労働者は、労働契約上の義務として、具体的に指示された業務を履行しないことによって使用者に生じる損害を、回避ないし減少させる措置をとる義務を負うと解される」と判示し、履行不能となった業務の受注金額から経費を控除した金額について労働者の損害賠償義務を認めた。

⑵ 東京地裁平成17年12月14日判決

 予算が決められた工事を発注する場合には予算を超えて発注することは許されておらず、金額を決めずに発注することも許されていないにもかかわらず、建設会社の製作推進部統括部長が見積りを取ることなく発注をし、これを隠蔽したまま退職したことに対して、会社が取引先に支払った金額を損害賠償請求した事案で、損害賠償義務を認めた。

⑶ 東京地裁平成15年12月12日判決

 中古車販売会社の店長が、客から代金全額が入金されてから納車するという会社のルールを知りながら、入金がない段階で車両を客に引渡して回収不能となった事案で、損害賠償義務を認めた。

⑷ 大阪地裁平成11年1月29日判決

 課長の地位にあった労働者が、見積価格での商品の仕入れが可能であったにもかかわらず、あえて1割高い価格で仕入れをした行為が会社の利益に反する背任行為に当たるとして、退職金の不支給及び会社からの損害賠償請求を認めた。

⑸ 東京地裁平成4年9月30日判決

 労働者が入社約1か月後の退職により会社に与えた損害200万円を賠償する旨の合意が有効であると判断し、うち70万円の損害賠償義務を認めた。




旧労働契約法20条に関する最高裁判決とパート有期雇用法8条の解釈

 令和2年10月に旧労働契約法20条に関する5つの最高裁判例、すなわち、退職金が問題となったメトロコマース事件、賞与及び私傷病による欠勤中の賃金問題となった大阪医科薬科大学事件、年末年始勤務手当、有給の病気休暇に係る相違、年始期間の祝日給に係る相違、有給の夏季冬季休暇に係る相違が問題となった日本郵便事件3件(東京、大阪、佐賀)が出ました。

 令和2年4月1日から施行されている短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(いわゆる「パート有期雇用法」)8条の解釈の先例的意義を有するかが議論されています。

 大阪医科薬科大学事件、メトロコマース事件の各最高裁判決が当該労働条件の性質・目的とは無関係に旧労働契約法20条に規定する諸事情を考慮に入れている点で、当該労働条件の性質及び目的に照らして適切と認められる事情を考慮するというパート有期雇用法8条に合致しないことを理由にその先例的意義を疑問視する見解も主張されているところです。

 労働事件を扱う弁護士は、平成30年に出されたハマキョウレックス事件最高裁判決及び長澤運輸事件最高裁判決と合わせて、最高裁判例の考え方を整理しておく必要があります。

短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律8条

事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。




雇用に関する男女平等についての法規制

 雇用に関する男女平等の定めは、主に労働基準法及び男女雇用機会均等法に定められています。

 まず、賃金については、労基法4条が定めており、賃金以外については、男女雇用機会均等法が以下のとおり、具体的に規制をしています。

 ⑴ 5条、6条 賃金以外の労働条件・事象

 ⑵ 9条1項 婚姻、出産したことを退職理由として予定することの禁止 

 ⑶ 9条2項 婚姻したことを理由とする解雇の禁止

 ⑷ 9条3項 女性に特有の事由を理由とした不利益取扱の禁止

  (近時の重要判例である広島中央保健協同組合事件(最判平26・10・23)は、労基法65条3項に基づく妊娠中の軽易業務への転換に際して副主任を免ぜられ、育児休業の終了後も副主任に任ぜられなかったことが男女雇用機会均等法9条3項に反するかが問題となりましたが、その理解には雇用機会均等法の理解が必須です。)

 ⑸ 11条 セクハラについて事業主が必要な措置を講じるべきこと

 ⑹ 7条 間接差別

 なお、女性であることを理由に賃金差別を受けたと主張する労働者は、不法行為による損害賠償請求権により賃金差別の額及び慰謝料を請求することができると解しつつ、労基法4条により賃金差別を無効とした後に、差別された女性労働者の賃金の基準が明確である場合においては、労基法4条と同法13条の趣旨や類推適用により差額請求権が生じうると解するのが裁判例及び学説上有力とされており、労働事件を扱う弁護士は理解しておく必要があります。




シンガー・ソーイング・メシーン・カムパニー事件の事実関係

 シンガー・ソーイング・メシーン・カムパニー事件最高裁判決(最判昭和48年1月19日民集27巻1号27頁)は、退職金債権の放棄の有効性が問題となった事案で、労働者の自由な意思に基づくと認め得る合理的な理由が客観的に存在するときは有効との判断基準を示し、結論として退職金債権の放棄を有効と判断したことで有名な最高裁判例です。

 実際の事実関係は、以下のとおりであり、労働事件を扱う弁護士としては、結論と合わせて理解しておくべきだと思います(最高裁判例を一部引用。上告人が労働者。①当該労働者がそれなりの地位にあったこと、②競争関係にある他の会社に就職することが判明していたこと、③旅費等の使用に疑惑が生じていた点に対する損害の填補を会社が求めた経緯で書面が作成されたことに要約できると思います)。

 「原審の確定するところによれば、上告人は、退職前被上告会社の西日本における総責任者の地位にあつたものであり、しかも、被上告会社には、上告人が退職後直ちに被上告会社の一部門と競争関係にある他の会社に就職することが判明しており、さらに、被上告会社は、上告人の在職中における上告人およびその部下の旅費等経費の使用につき書面上つじつまの合わない点から幾多の疑惑をいだいていたので、右疑惑にかかる損害の一部を填補する趣旨で、被上告会社が上告人に対し原判示の書面に署名を求めたところ、これに応じて、上告人が右書面に署名した」




要件事実マニュアル(第6版)

 名古屋地裁の期日に出頭する際には、愛知県弁護士会にある名法書店に寄るのがここ数年のルーティンになっています。

 本日は、10時からの期日と10時30分からの期日の間に、名法書店に寄ったところ、岡口基一裁判官の要件事実マニュアル全5巻が並んでいました。

 改訂されるたびに購入していますが(最近も、同書に掲載されていた裁判例を引用した準備書面を提出したところです。)、今回の改訂は、債権法の改正以外にも、第5版以降の多くの法改正を反映したものになっているようです。




刑の一部執行猶予

 刑の一部執行猶予制度は平成28年6月から施行されています。

 刑の一部執行猶予制度は、言い渡された実刑期間のうち、一定期間を執行して施設内処遇した上で、残りの期間の執行を猶予し、相応の期間執行猶予の取消しによる心理的強制の下で社会内処遇により更生をうながすことによりその者の再犯防止、改善更生を図る制度とされています。

 実刑と(全部)執行猶予の中間ではなく、実刑の一種という理解が正当ともされています。

 刑法27条の2第1項は、「再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるとき」と定めていますが、①施設内処遇及び仮釈放のみでは再犯の抑止が困難な被告人について、②仮釈放の期間を超えて行う再犯抑止に有用な社会内処遇が具体的に想定でき、③その実効性期待できる場合に、必要性・相当性を肯定できるとされています。

 弁護士としては、依頼者である被告人の意向も踏まえつつ、法律上は全部執行猶予を付すことができる場合でも、一部執行猶予を意識した弁護活動が求められる場合があるといえるでしょう。

 

 

 

刑法
(刑の一部の執行猶予)
第二十七条の二 次に掲げる者が三年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けた場合において、犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるときは、一年以上五年以下の期間、その刑の一部の執行を猶予することができる。
 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その刑の全部の執行を猶予された者
 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
 前項の規定によりその一部の執行を猶予された刑については、そのうち執行が猶予されなかった部分の期間を執行し、当該部分の期間の執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日から、その猶予の期間を起算する。
 前項の規定にかかわらず、その刑のうち執行が猶予されなかった部分の期間の執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった時において他に執行すべき懲役又は禁錮があるときは、第一項の規定による猶予の期間は、その執行すべき懲役若しくは禁錮の執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日から起算する。
(刑の一部の執行猶予中の保護観察)
第二十七条の三 前条第一項の場合においては、猶予の期間中保護観察に付することができる。
 前項の規定により付せられた保護観察は、行政官庁の処分によって仮に解除することができる。
 前項の規定により保護観察を仮に解除されたときは、第二十七条の五第二号の規定の適用については、その処分を取り消されるまでの間は、保護観察に付せられなかったものとみなす。
(刑の一部の執行猶予の必要的取消し)
第二十七条の四 次に掲げる場合においては、刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消さなければならない。ただし、第三号の場合において、猶予の言渡しを受けた者が第二十七条の二第一項第三号に掲げる者であるときは、この限りでない。
 猶予の言渡し後に更に罪を犯し、禁錮以上の刑に処せられたとき。
 猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられたとき。
 猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないことが発覚したとき。
(刑の一部の執行猶予の裁量的取消し)
第二十七条の五 次に掲げる場合においては、刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消すことができる。
 猶予の言渡し後に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき。
 第二十七条の三第一項の規定により保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守しなかったとき。
(刑の一部の執行猶予の取消しの場合における他の刑の執行猶予の取消し)
第二十七条の六 前二条の規定により刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消したときは、執行猶予中の他の禁錮以上の刑についても、その猶予の言渡しを取り消さなければならない。
(刑の一部の執行猶予の猶予期間経過の効果)
第二十七条の七 刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消されることなくその猶予の期間を経過したときは、その懲役又は禁錮を執行が猶予されなかった部分の期間を刑期とする懲役又は禁錮に減軽する。この場合においては、当該部分の期間の執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日において、刑の執行を受け終わったものとする。
薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律
(趣旨)
第一条 この法律は、薬物使用等の罪を犯した者が再び犯罪をすることを防ぐため、刑事施設における処遇に引き続き社会内においてその者の特性に応じた処遇を実施することにより規制薬物等に対する依存を改善することが有用であることに鑑み、薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関し、その言渡しをすることができる者の範囲及び猶予の期間中の保護観察その他の事項について、刑法(明治四十年法律第四十五号)の特則を定めるものとする。
(定義)
第二条 この法律において「規制薬物等」とは、大麻取締法(昭和二十三年法律第百二十四号)に規定する大麻、毒物及び劇物取締法(昭和二十五年法律第三百三号)第三条の三に規定する興奮、幻覚又は麻酔の作用を有する毒物及び劇物(これらを含有する物を含む。)であって同条の政令で定めるもの、覚醒剤取締法(昭和二十六年法律第二百五十二号)に規定する覚醒剤、麻薬及び向精神薬取締法(昭和二十八年法律第十四号)に規定する麻薬並びにあへん法(昭和二十九年法律第七十一号)に規定するあへん及びけしがらをいう。
 この法律において「薬物使用等の罪」とは、次に掲げる罪をいう。
 刑法第百三十九条第一項若しくは第百四十条(あへん煙の所持に係る部分に限る。)の罪又はこれらの罪の未遂罪
 大麻取締法第二十四条の二第一項(所持に係る部分に限る。)の罪又はその未遂罪
 覚醒剤取締法第四十一条の二第一項(所持に係る部分に限る。)、第四十一条の三第一項第一号若しくは第二号(施用に係る部分に限る。)若しくは第四十一条の四第一項第三号若しくは第五号の罪又はこれらの罪の未遂罪
 麻薬及び向精神薬取締法第六十四条の二第一項(所持に係る部分に限る。)、第六十四条の三第一項(施用又は施用を受けたことに係る部分に限る。)、第六十六条第一項(所持に係る部分に限る。)若しくは第六十六条の二第一項(施用又は施用を受けたことに係る部分に限る。)の罪又はこれらの罪の未遂罪
 あへん法第五十二条第一項(所持に係る部分に限る。)若しくは第五十二条の二第一項の罪又はこれらの罪の未遂罪
(刑の一部の執行猶予の特則)
第三条 薬物使用等の罪を犯した者であって、刑法第二十七条の二第一項各号に掲げる者以外のものに対する同項の規定の適用については、同項中「次に掲げる者が」とあるのは「薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律(平成二十五年法律第五十号)第二条第二項に規定する薬物使用等の罪を犯した者が、その罪又はその罪及び他の罪について」と、「考慮して」とあるのは「考慮して、刑事施設における処遇に引き続き社会内において同条第一項に規定する規制薬物等に対する依存の改善に資する処遇を実施することが」とする。
(刑の一部の執行猶予中の保護観察の特則)
第四条 前条に規定する者に刑の一部の執行猶予の言渡しをするときは、刑法第二十七条の三第一項の規定にかかわらず、猶予の期間中保護観察に付する。
 刑法第二十七条の三第二項及び第三項の規定は、前項の規定により付せられた保護観察の仮解除について準用する。
(刑の一部の執行猶予の必要的取消しの特則等)
第五条 第三条の規定により読み替えて適用される刑法第二十七条の二第一項の規定による刑の一部の執行猶予の言渡しの取消しについては、同法第二十七条の四第三号の規定は、適用しない。
 前項に規定する刑の一部の執行猶予の言渡しの取消しについての刑法第二十七条の五第二号の規定の適用については、同号中「第二十七条の三第一項」とあるのは、「薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律第四条第一項」とする。




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