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他人のコンピューターを利用したビットコインのマイニング

 判例時報2379号126頁に,仲道教授のドイツ連邦通常裁判所判決の評釈が掲載されています。

 『日本における同種事案の取扱い』の項目で,日本での処理(可罰性と没収・追徴)の検討がなされています。




社内での不倫を理由に懲戒解雇が認められた裁判例

 社内不倫は,基本的な発想としては私生活上の行為と位置づけられるため,原則として懲戒の理由とはならないと考えられます。

 しかしながら,企業秩序に直接関連し,企業秩序を乱すに至ってしまった場合には,懲戒解雇も有効と考えられています。

 白石哲編著・労働関係訴訟の実務〔第2版〕400頁には,社内不倫を理由とする懲戒解雇を有効とした裁判例が紹介されています。




輸出免税の趣旨と仕向地主義

 消費税法7条は、輸出される物品や国外で提供されるサービスの消費税を免税する、いわゆる輸出免税の制度を規定しています。

 消費税は消費者が負担するべきであることから国内で消費されない輸出される物品に課税する根拠がないこと、生産地国と消費地国の双方での課税(二重課税)を排除し輸入国である仕向地の製品と同じ条件での競争を可能にするという国際的中立性を確保する必要があると考えれば、国内で発生した消費税の負担の調整及び税抜きでの輸出という国境税調整が必要となります。

 消費税の税額計算において、輸出免税の対象となる課税資産の譲渡等の対価の額は課税標準に含まれない(消費税法45条、同法7条)が、輸出免税の対象となる課税資産の譲渡等のための仕入税額は仕入税額控除の対象とする(消費税法30条)、いわゆるゼロ税率の採用が求められることになります。

 一方で、源泉地主義のもとでは、輸入品と国産品との価格競争力が各国の税率に左右されることになることから、中立性に疑問が残ることになります。

 結論として、消費税法は、物品やサービスの輸入国(仕向地国)に課税権があるという仕向地主義を採用していることなります。




裁判官に対する懲戒申立て事件全文

 最高裁ホームページに掲載されています。

 裁判所法49条の「品位を辱める行状」について,「職務上の行為であると,純然たる私的行為であるとを問わず,およそ裁判官に対する国民の信頼を損ね,又は裁判の公正を疑わせるような言動をい うものと解するのが相当である。」と判示し,結論として戒告を認めています。 

 表現の自由との関係では,「憲法上の表現の自由の保障は裁判官にも及び,裁判官も一市民としてその自由を有することは当然であるが,被申立人の上記行為は,表現の自由として裁判官に許容される限度を逸脱したものといわざるを得ないものであって,これが懲戒の対象となることは明らかである。

 また,そうである以上,本件申立てが,被申立人にツイッターにおける投稿をやめさせる手段として,あるいは被申立人がツイッターにおける投稿をやめることを誓約しなかったことを理由にされた不当なものということはできない。

 そして,被申立人は,本件ツイートを行う以前に,本件アカウントにおける投稿によって裁判官の品位と裁判所に対する国民の信頼を傷つけたなどとして2度にわたる厳重注意を受けており,取り分け2度目の厳重注意は,訴訟に関係した私人の感情を傷つけるものである点で本件と類似する行為に対するものであった上,本件ツイートの僅か2か月前であったこと,当該厳重注意を受ける前の事情聴取の際, 被申立人は,訴訟の関係者を傷つけたことについて深く反省しているなどと述べていたことにも照らすと,そのような経緯があるにもかかわらず,本件ツイートに及んだ被申立人の行為は,強く非難されるべきものというほかない。」と判示しています。

 同じく補足意見は,「ちなみに,現役裁判官が,ツイッターにせよ何にせよ,SNSその他の表現手段によってその思うところを表現することは,憲法の保障する表現の自由によって保護されるべきであることは,いうまでもない。

 しかしながら,裁判官はその職責上,品位を保持し,裁判については公正中立の立場で臨むことなどによって,国民の信頼を得ることが何よりも求められている。

 本件のように,裁判官であることが広く知られている状況の下で表現行為を行う場合には,そのような国民の信頼を損なうものとならないよう,その内容,表現の選択において,取り分け自己を律するべきであると考える。

 そして,そのような意味での一定の節度あるいは限度というものはあるものの, 裁判官も,一国民として自由な表現を行うということ自体は制限されていないのであるから,本件のような事例によって一国民としての裁判官の発信が無用に萎縮することのないように,念のため申し添える次第である。」と述べています。




従業員が業務上の事故により死亡し、遺族が労働者災害補償保険法に基づく給付を受けたため、労働保険料が増額されたことを損害として、使用者が事故の加害者に対し損害賠償を請求した事案において、保険料の負担が増えたことを不法行為から生ずる損害とは認めることができないとした事例(大阪高裁平成28年11月29日判決)

 判例時報2377号54頁に掲載されています。

 従業員が業務に従事中に第三者の不法行為により死亡したことについて、労災法に基づく給付されたことにより画像データを増額された使用者が支払う労働保険料の額が、当該第三者の不法行為と相当因果関係の損害と考えることができるかという問題です。

 上記大阪高判も一審の京都地裁平成28年7月1日判決も、結論として相当因果関係のある損害ではないと判示しています。




使用者の責めに帰すべき事由による労務の履行不能と債務の本旨に従った履行の提供

 労働者は、使用者の「責めに帰すべき事由」による履行不能の場合には、民法536条2項により、賃金請求権を有することとされています。

 実務では、権利濫用により無効と評価される解雇、休職、自宅待機等で問題となります。

 労働者が履行の意思と能力を保持していなければ、後に解雇等が無効とされたとしても解雇期間中の賃金請求権は認められないというのが菅野説です(菅野409頁。転職をして新たな使用者の職務に専念しているという場合は保持しているとはいえないとされます。)。

 ペンション経営研究所事件(東京地判平成9年8月26日)では、履行不能が使用者の責めに帰すべき事由によるものであることを主張立証する前提として、労働者が客観的に就労する意思と能力を有していることを主張立証すべきである旨判示されています。

 この点については、履行の意思と能力の喪失が使用者の責めに帰すべき事由によって引き起こされたといえる場合には、全体として使用者の帰責事由を肯定するべきという観点から、履行の意思と能力自体を独立の要件事実と解釈するべきではないという考え方も主張されています。




消費貸借の借主が期限前弁済した場合の規律

 消費貸借における返還時期の定めは、通常、借主の目的物の返還を猶予するもので、借主に返還時期まで借り続ける義務を負わせるものとは考えられていません。

 また、借主が返還時期の前に目的物を返還すること自体を否定する必要はないとも考えられます。

 そこで、改正民法591条2項は、借主が返還時期の定めにかかわらずいつでも目的物を返還することができることを定めつつ、同条3項が返還時期の前に目的物を返還したことによって貸主が現実に損害を受けた時の損害賠償請求権を認めています。

 損害が現実に生じているとして返済時期までの利息相当額を請求できるかについては、個々の事情を踏まえて判断されるものと考えられます。




催告せずに代金減額請求ができる場合

 改正債権法は、特定物売買であるか不特定物売買であるかに関係なく、売主は種類・品質・数量に関して契約の内容に適合した目的物を引き渡す債務を負うことを前提にして、引き渡された目的物が契約の内容に適合しないときには、買主の手段として、①修補や代替物の引き渡し等の追完の請求(562条1項本文)、②代金減額請求(563条1項・2項)、③損害賠償の請求(564条)、④契約の解除(564条)を規定しています。

 改正民法563条は、引き渡された目的物が契約の内容に適合しない場合には、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、期間内に履行の追完がないときには、買主は不適合の程度に応じて代金減額請求をすることができる旨定めました。

 さらに、改正民法563条2項は、催告せずに代金減額請求できる場合として、履行の追完が不能であるとき、売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき、契約の性質又は当事者の意思表示により特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達成することができない場合で売主が履行の追完をしないままその時期を経過したとき、買主が催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるときを定めています。




民法483条と特定物ドグマ

 特定物については,品質・性状は契約の内容とはならない,したがって,現状において引き渡せばよいという特定物ドグマの考え方の根拠として,従来,旧民法483条が援用されてきました。

 改正民法483条は,「契約・・・及び取引上の社会通念に照らしてその引渡しをすべき時の品質を定めることができないとき」という要件を追加することで,物の品質が契約上の義務内容となる売買契約等では,「現状」で引き渡しても契約の履行とはならない旨明らかにされています。

 なお、しっかりと契約の解釈を行うことにより,「品質を定めることができないとき」という事態は,なかなか想定できないという指摘もあるようです。




賃貸不動産の譲渡と賃貸人の地位の留保

 改正民法605条の2第2項前段は,不動産の譲渡人及び譲受人が賃貸人の地位を譲渡人に留保する合意をし,その不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは,賃貸人の地位は譲受人に移転しないことを規定しています。

 賃借人の保護を図る観点から,改正民法605条の2第2項後段は,上記の譲受人と譲渡人の賃貸借が終了した場合には,譲渡人に留保されていた賃貸人の地位は,譲受人に当然に移転することを規定しています。

 賃貸不動産の譲渡が行われた際には賃貸人の地位が当然に移転するという判例の考え方を踏まえて,多数の賃借人から個別に賃貸人の地位を留保する同意を得て資産の流動化を行う(賃貸物件を信託的に譲渡する、譲渡担保に供する、不動産小口化商品として取引するなど)という手間が省けるという実務上のメリットが見込まれるとのことです。




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