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「法律家のための企業会計と法の基礎知識」(青林書院)

 執筆陣には,古田佑紀弁護士,神作裕之東京大学大学院法学政治学研究科教授,佐伯仁志東京大学大学院法学政治学研究科教授のほか,著名な弁護士,公認会計士が名を連ねています。

「本書は,法律家が理解しておくべき企業会計の基礎的な知識をおさえた上で,法と企業会計との関係を,法律家及び公認会計士の視点から概観し,さらに法律家が最も関心のあるであろう会計基準に違反する会計処理がなされた場合の法的論点について,過去の事例を踏まえながら網羅的な解説を試みた。このような目的のために,本書は,実務家である弁護士と公認会計士,刑法と会社法の研究者が分担して執筆したが,結果として,法律家だけではなく,公認会計士にとっても意義のある解説書となったように思われる。」という紹介文が記載されています。




任意後見契約の意義・概要

  任意後見契約とは、委任者が、受任者に対し、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況における自己の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務の全部又は一部を委託し、その委託に係る事務について代理権を付与する委任契約であって、家庭裁判所により任意後見監督人が選任された時からその効力を生ずる旨の定めのあるものをいいます。

 判断能力がすでに低下している者を対象とするのが法定後見制度であるのに対し、任意後見制度は、判断能力が低下していない段階に判断能力が低下した時に備えてあらかじめ準備しておく制度であり、契約は公正証書によること、任意後見監督人を通じて監督が行われること、委任者が精神上の障害により判断能力が不十分となった時に任意後見監督人が家庭裁判所により選任されることにより契約の効力が生じることが特徴といえます。

 任意後見契約のみを締結し判断能力低下後に任意後見人が活動する将来型、通常の任意代理の委任契約と任意後見契約を締結し本人の判断能力低下前は前者の任意代理契約に基づいて財産管理を行い判断能力低下後は任意後見契約に移行する移行型、任意後見契約と同時に任意後見監督人の選任の申立を同時に行う即時型があります。

 「精神上の障害により本人の事理を弁識する能力が不十分な状況にあること」という実体要件から、補助・保佐・後見に該当する者すべてについて、任意後見監督人を選任できることになります。

 任意後見監督人が選任された本人が実質的に被保佐人や被後見人の状況にあっても、法律上の欠格事由(取締役に関する会社法331条1項2号など)に該当しないという点がメリットとして挙げられることもあります。

 一方で,任意後見契約は代理権の授与であり契約が発効しても本人の行為能力に制限はないことから,効力発生後に消費者被害にあったとしても判断能力の低下を理由に取消しをすることができない点はデメリットといえるでしょう。

 任意後見契約が登記されている場合には任意後見監督人の選任の前後を問わず原則として法定後見開始の審判をすることができないこと、法定後見の開始を受けている本人について任意後見監督人の選任申立がされた場合には原則として任意後見監督人を選任して法定後見開始の審判は取り消されることになります(前者につき任意後見法10条1項、後者につき任意後見法4条1項2号・2項)。




詐害信託と受託者・受益者の主観的要件

 信託の設定により信託譲渡された信託財産は、委託者の責任財産から外れることになり、委託者に対する債権者の利益が害される場合があり得ます。

 そこで、信託法は、民法上の詐害行為取消権と同趣旨の詐害信託についての取消権を規定しています。

 債務者側の要件として、債権者を害することが必要であることは、詐害行為取消権と同様と考えられますが、委託者が受益者の場合には、委託者が取得する受益権の価値を控除することとされています。

 主観的要件については、受託者は信託により固有の利益を有する者ではないので、「受託者が債権者を害すべき事実を知っていたか否か」は考慮されないことが定められ、利益を有する受益者の主観的態様は問題にされることになります。

 信託法は、多数の受益者が存在する場合も含めて、一部でも債権者を害すべき事実を知らなかった受益者がいれば取消権を行使できない旨定め、取消しを不当に免れる目的で無償で受益者として指定し、あるいは無償で受益権を譲渡した場合は取消権の行使が妨げられない旨規定しています。

 なお、取消権の被告が受託者であることは信託法11条が明示していますが、受託者が受益者の善意の主張立証を行うべきことは善管注意義務などから導かれると考えられますが、さらに受益者への訴訟告知などの義務があるのかも議論がなされています。




菊池雄星投手「人の失敗から学ぶのではなく、自分で失敗してようやく分かる僕は、凡人だ。」

 日経新聞の夕刊で、埼玉西武ライオンズの菊池雄星投手の「読書日記」の連載が続いています。

 菊池投手といえば、花巻東高校(あの二刀流で有名な大谷翔平選手の母校でもあります。)からドラフト1位でプロ入りし、早くからの活躍が期待されていましたが、けがなどの影響もありすぐには結果が出せなかったというイメージがありました(今シーズンは、二段モーションの問題もありました。)。

 しかし、ここ数年の活躍は目を見張るものがあり、日本を代表する左腕投手としての地位を築いたといえるでしょう。

 菊池投手は、意外にも読書家ということで連載がなされているわけですが、第3回では最近話題となっている清水潔氏の「殺人犯はそこにいる」をとりあげて、標記のコメントを掲載しています。




信託設定意思と信託の定義の関係

 信託の成立には、信託意思、すなわち、委託者が信託を設定する意思を有していることが必要と考えられています。

 旧信託法下で出された、地方自治体が公共工事の前払金として建設業者に支払った場合に当該自治体を委託者権受益者、建設業者を受託者とする信託が成立したことを認めた最高裁平成14年1月17日判決は、本来は信託ではないが救済手段として認めたものと分析する見解と、「信託を設定する」という明示の意思を有していない場合にも信託設定意思を肯定できる事案であるという見解があったようです。

 改正信託法は、2条1項で信託の定義を定め3条で信託の方法を定めて、旧信託法よりも詳細な規定になっていますが、信託意思の具体的内容としては、信託の定義を意図することを指すのか、受託者の高度の義務のようなものまでを含んでいることが必要なのかの議論もあるようです。

 定義に着目する場合には、2条1項の信託の定義のなかで、財産の分別管理や信託財産の独立性の要素が書き込まれていないことから、不十分という指摘があり、プラスαの要素が必要だと考えられます。




信託の優位性~成年後見制度・遺言との関係

 成年後見制度を含めた法定後見制度は、その理念に反し、本人の権利を制限あるいは地位をはく奪する側面があることに加え、家庭裁判所が後見人の不祥事対策として導入した、後見制度支援信託の適用と併せて、かなり硬直的な財産管理しか行うことができないと指摘されます。

 遺言は、それが公正証書遺言の形式による場合であっても、遺言能力や、「口授」の要件の具備などでその有効性が争われることがあり、また、成年後見人は成年被後見人の財産の管理処分権を有することになりますが、被後見人が遺言でその処分を指定していた相続財産についてもその管理処分権が及び、被相続人の意思が達成できない弊害についても指摘されています。

 さらに、成年後見制度信託の対象となった財産は、受託者である信託銀行の所有となり、相続財産ではなくなり、遺言の目的をおよそ達成することができないということになってしまいます。

 適切に目的を定めて信託契約を締結すれば、委託者や受益者の判断能力が喪失したとしても受託者の任務に変更がなく、当初の信託の目的通りに事務処理が継続することが可能という意味で、信託の優位性が認められます。

 信託契約が、意思能力が十分な時期になされることにより、その有効性が覆されることも少ないという指摘もあります。

 なお、信託の利用については、任意後見制度の併用を推奨する意見もあります。




エンプティ・ボーティングと事業承継信託

 株式の経済的価値に利害を有しない者が議決権を行使することの弊害について、会社法の議論として、エンプティ・ボーティングの問題(株主としての経済的な持分(economic ownership)を超える大きさの議決権行使に伴う弊害)として議論がされています。

 わかりやすい具体例としては、株式の経済的価値に利害を有しない者は、会社の企業価値の向上を阻害したり、企業価値を下落させる議決権行使を促す側面があるという点です。

 事業承継の手段として利用が想定されている株式信託は、株式を信託財産としつつ受益者と議決権行使を指示する指図権者にずれが生じるスキームが通常です。

 そうすると、経済的利益と議決権の分離が行われていると評価することができ、上記のエンプティ・ボーティングの観点からの検討も必要です。




信託管理人、信託監督人、受益者代理人

 信託法が受益者のための機関として設置を認めている制度として、信託管理人、信託監督人、受益者代理人があります。

1 信託管理人は、受益者が現に存在しない場合に、信託行為によって指定される者であり、未存在の受益者のために自己の名をもって受益者の権利に関する一切の行為を行うため(信託法125条1項)、未成年者・成年被後見人、被保佐人はなることができません(信託法124条)。

 受益者の利益を保護する者として自己の名をもって権限を行使する点で、受益者の代理人ではありません。

 「受益者が現に存しない場合」とは、受益者が後に指定されることとなっている場合に加えて、生まれていない者を受益者にする場合を含むものと考えられています。

 信託管理人は、「委託者が死亡した時点」や「信託設定後5年を経過した時点」というような停止条件・始期の定めが認めれられています。

2 信託監督人は、信託管理人と異なり、「受益者が現に存する場合」に、信託行為によって指定され、一応、受益者が受託者の監督を適切に行うことができない場合にそれを行う機関として想定されています(裁判所による信託監督人の選任に関する信託法131条4項は、「受益者が受託者の監督を適切に行うことができない特別の事情がある場合」に限っています)。

 信託監督人は、受益者のために自己の名をもって単独受益権(信託法92条各号)を行使することができますが、受益権の放棄(同17条)、受益権取得請求権(同18号)、受益証券発行信託において自らが受益者であることの受益権原簿への記載請求権・同原簿の記載事項を記録した書面の請求権(同21号、23号)は除外されています。

 受益者代理人は、信託管理人・信託監督人がすべての受益者保護のための制度であるのに対し、自ら代理する受益者のために行為する者で、受益者本人が現存している必要があります。

3 受益者代理人は信託行為によって指定される者であり(信託法138条1項。なお、個々の受益者が自ら委任契約を締結し代理人を選任することは認められます。)、受益者保護目的の場合(幼い子を受益者とする信託の場合など)と、信託の運営を円滑に行う目的の場合(受益者の変動が予想される場合や、投資目的で受益権を有している受益者の場合など)が考えられます。

 受益者代理人によって代理をされる受益者は、単独受益者権を除いて権利を行使することができなくなります(信託法139条4項)。




後継ぎ遺贈型受益者連続信託の存続期間

 いわゆる後継ぎ遺贈型受益者連続信託については、委託者がその死後においても特定の財産を長期に拘束し、物資の流通を阻害する点については問題があると考えられています。

 そこで、信託法91条は、「受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定め(受益者の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨の定めを含む。)のある信託は、当該信託がされた時から30年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間、その効力を有する」と定めています。

 信託設定時から30年を経過した後にある生存者が受益権を取得すると、その者の死亡または受益権の消滅により当該信託は終了するとする見解が一般的ですが、信託設定時から30年を経過したときに生存している者はその後順次受益権を取得できるとする見解もあります(この見解は、条文の「30年を経過した時以後に」が「現に存する」に係っていると読んでいることになります)。

 なお、信託法91条は、条文上、「受益者の死亡」を事由とする後継ぎ遺贈型連続信託について期間制限を定めていますが、受益者の死亡以外の事由による受益者連続型信託について、期間制限なくその信託の有効性が認められるとはいえず、不当に長期間に財産の拘束を認めるものとして、公序良俗(民法90条)に反し無効になり得ると考えられます。




受託者が第三者に信託事務処理の委託を行うことが許される場合

  信託法28条は、①信託行為に信託事務の処理を第三者に委託する旨又は委託することができる旨の定めるがあるとき(1号)、②信託行為に信託事務の処理の第三者への委託に関する定めがない場合において、信託事務の処理を第三者に委託することが信託の目的に照らして相当と認められるとき(2号)、③信託行為に信託事務の処理を第三者に委託してはならない旨の定めがある場合において、信託事務の処理を第三者に委託することにつき信託の目的に照らしてやむを得ない事由があると認められるとき(3号)、を受託者が第三者に信託事務処理の委託が許される場合として規定しています。

 立案担当者の解説では、信託事務の処理の第三者への委託について、受託者の義務としてではなく受託者の権限としてとらえたうえで、旧信託法よりも第三者への委託の範囲を実質的に拡大したものと位置づけています。

 なお、委託者が受託者を信頼して信託契約を行った場合に、その信頼の対象が受託者自身による事務処理に限られると考えることに違和感を持つ見解もあるようです。

 信託法35条は,「第28条の規定により信託事務の処理を第三者に委託」する場合の受託者の義務を定めており,同条1項は,「信託の目的に照らして適切な者に委託しなければならない」こと,同条2項は,第三者委託をした後について,「当該第三者につ対し,信託の目的の達成のために必要かつ適切な監督を行わなければならない」と定めています。

 信託法40条1項は,第三者への信託事務処理の委託について任務を怠った受託者について損失填補または原状回復の責任を定め,同条2項は,受託者が28条の規定に反して第三者に信託事務の処理を委託した場合の信託財産の損失填補責任について,委託と損失の発生との因果関係がないことを証明しない限り責任を負う旨を定めています。




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