名古屋市の弁護士 森田清則(愛知県弁護士会)トップ >>


ようこそ,弁護士 森田清則のブログへ

私が所属する「弁護士法人 心」のサイトはこちらです。


従業員が業務上の事故により死亡し、遺族が労働者災害補償保険法に基づく給付を受けたため、労働保険料が増額されたことを損害として、使用者が事故の加害者に対し損害賠償を請求した事案において、保険料の負担が増えたことを不法行為から生ずる損害とは認めることができないとした事例(大阪高裁平成28年11月29日判決)

 判例時報2377号54頁に掲載されています。

 従業員が業務に従事中に第三者の不法行為により死亡したことについて、労災法に基づく給付されたことにより画像データを増額された使用者が支払う労働保険料の額が、当該第三者の不法行為と相当因果関係の損害と考えることができるかという問題です。

 上記大阪高判も一審の京都地裁平成28年7月1日判決も、結論として相当因果関係のある損害ではないと判示しています。




使用者の責めに帰すべき事由による労務の履行不能と債務の本旨に従った履行の提供

 労働者は、使用者の「責めに帰すべき事由」による履行不能の場合には、民法536条2項により、賃金請求権を有することとされています。

 実務では、権利濫用により無効と評価される解雇、休職、自宅待機等で問題となります。

 労働者が履行の意思と能力を保持していなければ、後に解雇等が無効とされたとしても解雇期間中の賃金請求権は認められないというのが菅野説です(菅野409頁。転職をして新たな使用者の職務に専念しているという場合は保持しているとはいえないとされます。)。

 ペンション経営研究所事件(東京地判平成9年8月26日)では、履行不能が使用者の責めに帰すべき事由によるものであることを主張立証する前提として、労働者が客観的に就労する意思と能力を有していることを主張立証すべきである旨判示されています。

 この点については、履行の意思と能力の喪失が使用者の責めに帰すべき事由によって引き起こされたといえる場合には、全体として使用者の帰責事由を肯定するべきという観点から、履行の意思と能力自体を独立の要件事実と解釈するべきではないという考え方も主張されています。




消費貸借の借主が期限前弁済した場合の規律

 消費貸借における返還時期の定めは、通常、借主の目的物の返還を猶予するもので、借主に返還時期まで借り続ける義務を負わせるものとは考えられていません。

 また、借主が返還時期の前に目的物を返還すること自体を否定する必要はないとも考えられます。

 そこで、改正民法591条2項は、借主が返還時期の定めにかかわらずいつでも目的物を返還することができることを定めつつ、同条3項が返還時期の前に目的物を返還したことによって貸主が現実に損害を受けた時の損害賠償請求権を認めています。

 損害が現実に生じているとして返済時期までの利息相当額を請求できるかについては、個々の事情を踏まえて判断されるものと考えられます。




催告せずに代金減額請求ができる場合

 改正債権法は、特定物売買であるか不特定物売買であるかに関係なく、売主は種類・品質・数量に関して契約の内容に適合した目的物を引き渡す債務を負うことを前提にして、引き渡された目的物が契約の内容に適合しないときには、買主の手段として、①修補や代替物の引き渡し等の追完の請求(562条1項本文)、②代金減額請求(563条1項・2項)、③損害賠償の請求(564条)、④契約の解除(564条)を規定しています。

 改正民法563条は、引き渡された目的物が契約の内容に適合しない場合には、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、期間内に履行の追完がないときには、買主は不適合の程度に応じて代金減額請求をすることができる旨定めました。

 さらに、改正民法563条2項は、催告せずに代金減額請求できる場合として、履行の追完が不能であるとき、売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき、契約の性質又は当事者の意思表示により特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達成することができない場合で売主が履行の追完をしないままその時期を経過したとき、買主が催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるときを定めています。




民法483条と特定物ドグマ

 特定物については,品質・性状は契約の内容とはならない,したがって,現状において引き渡せばよいという特定物ドグマの考え方の根拠として,従来,旧民法483条が援用されてきました。

 改正民法483条は,「契約・・・及び取引上の社会通念に照らしてその引渡しをすべき時の品質を定めることができないとき」という要件を追加することで,物の品質が契約上の義務内容となる売買契約等では,「現状」で引き渡しても契約の履行とはならない旨明らかにされています。

 なお、しっかりと契約の解釈を行うことにより,「品質を定めることができないとき」という事態は,なかなか想定できないという指摘もあるようです。




賃貸不動産の譲渡と賃貸人の地位の留保

 改正民法605条の2第2項前段は,不動産の譲渡人及び譲受人が賃貸人の地位を譲渡人に留保する合意をし,その不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは,賃貸人の地位は譲受人に移転しないことを規定しています。

 賃借人の保護を図る観点から,改正民法605条の2第2項後段は,上記の譲受人と譲渡人の賃貸借が終了した場合には,譲渡人に留保されていた賃貸人の地位は,譲受人に当然に移転することを規定しています。

 賃貸不動産の譲渡が行われた際には賃貸人の地位が当然に移転するという判例の考え方を踏まえて,多数の賃借人から個別に賃貸人の地位を留保する同意を得て資産の流動化を行う(賃貸物件を信託的に譲渡する、譲渡担保に供する、不動産小口化商品として取引するなど)という手間が省けるという実務上のメリットが見込まれるとのことです。




経済産業省情報経済課編「AI・データの利用に関する契約ガイドラインと解説」(商事法務)

 先日、経済産業省が、AI・データ利用に関する契約ガイドラインを公表しました(経産省ホームページ)。

 標記の本は、ガイドライン作成の経緯や、今後のAIの進展に向けての課題などの解説と、ガイドライン自体が掲載されています。

 弁護士には、AIの特殊性を踏まえた、アドバイスが求められる場面が増えていると感じています。




名古屋税理士会親睦ソフトボール大会開催

今年も、名古屋税理士会の各支部対抗のソフトボール大会が開催されました。

ナゴヤドームで行われた昨年は準優勝でしたが、今年は、我が名古屋中村支部Aチームが優勝しました。

関支部に5対4(1回戦),名古屋東支部に5対2(2回戦),名古屋中支部に7対0(準決勝),中川支部に4対0(決勝)で勝利しました。

昨年に引き続き、僕はキャッチャーで出場しました。

優勝賞金は、祝勝会と最新のバット購入に充てられる予定です。

765E26A2-C143-4325-A651-BFE072F3154E.jpegのサムネール画像のサムネール画像




投資判断におけるアルゴリズム・AIの利用と法的責任

 「アルゴリズム・AIの利用を巡る法律問題研究会」報告書という形式で,日本銀行のサイトにアップされています。

  メンバーは,有吉尚哉,井上聡,加藤貴仁,加毛明,神作裕之,神田秀樹,佐伯仁志,道垣内弘人,森下哲朗の各先生とのことです。




信託する不動産を登記申請する方法

 信託の設定の方法は,信託法3条に定めのあるとおり,信託契約,遺言信託,自己信託の3つの方法があり,不動産を信託する場合の登記申請の方法も,それぞれの信託の方法により異なります。

 信託契約の場合には,受託者が登記権利者,委託者が登記義務者となって登記申請をすることになりますが,通常の所有権移転登記の申請に加えて,受託者が信託の登記を単独申請するという形式をとることが不動産登記法98条に定められており,法務局に提出すべき書類についても,通常の所有権移転登記の添付書類に加えて,不動産登記法97条に定められている信託に関する情報をまとめた書面も提出する必要があります。

 遺言信託の場合にも,信託契約の場合と同様に所有権移転登記と信託の登記を併せて申請することになりますが,この場合の所有権移転登記については,遺贈による登記申請と同様に遺言執行者の有無により必要とされる手続きが異なります。

 自己信託の場合には,所有権についての権利の変更の登記と信託の登記を併せて申請するという形式をとりますが(不登法第98条③),受託者が登記権利者兼義務者となる点,法務局に提出すべき書類に公正証書(信託法第3条三)が含まれる点などが特徴であり,注意が必要となる点です。

 不動産を信託する際の解説については,いろいろな書籍に記載がありますが,信託を設定する際には,司法書士に依頼することが必要といえます。




1234567891011