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遺言・相続実務問題研究会「実務家が陥りやすい相続・遺言の落とし穴」

 相続や遺言の相談が増えています。

 最近出た標記の本は,出版社の新日本法規で紹介されている以下の目次を読むだけでも参考になります。

第1章 相続人・法定相続分
【1】相続人の範囲及び法定相続分の落とし穴
【2】養子の子に養親の代襲相続権はあるのか?
【3】養子には、実方の父母及びその血族の相続について相続権はあるのか?
【4】夫婦の一方のみと養子縁組をしている場合の落とし穴
【5】嫡出子・嫡出でない子の相続分の落とし穴
【6】廃除しても代襲相続があるのか?
【7】遺言書に記載すれば相続人の廃除が必ず認められるのか?
【8】相続人廃除について調停申立てはできるのか?
【9】「一切相続させない」という遺言文言の落とし穴
【10】遺言書の検認申立てをしない相続人は相続欠格となるのか?
【11】遺言書破棄で相続欠格を主張する場合、相続欠格となる相続人のみを被告とすればよいか?
第2章 相続放棄・限定承認
【12】賃借物件を引き払うと相続放棄できなくなるのか?
【13】債務超過ではあるが自宅や事業用資産を取得できるのか?
【14】相続人が相続放棄をしつつ遺贈により遺産を取得できるのか?
【15】包括遺贈の放棄の落とし穴
【16】限定承認の落とし穴
【17】相続放棄すると相続税の基礎控除で不利となるのか?
第3章 遺言書
【18】一生身の回りの世話をして生活費をくれるなら、自宅土地建物をやるという死因贈与契約の落とし穴
【19】無効な遺言は相続において何の意味も持たないのか?
【20】改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS―R)の落とし穴
【21】未分割の不動産の持分を遺贈する場合の落とし穴
【22】母親の面倒を見ることを条件とする遺贈の落とし穴
【23】遺言に預貯金残高は記載しておいた方がよいのか?
【24】相続人でない受遺者の情報としては氏名・住所を記載しておけば十分なのか?
【25】「相続させる」旨の遺言と代襲相続の落とし穴
【26】受遺者が先に死亡した場合の処理はどうなるか?
【27】遺言執行者に清算権限を与えて各相続人に分配させるという方法の登記上・税務上の落とし穴
【28】「その余の一切の……」の遺言文言に潜む落とし穴
【29】受遺者の意思を確認しておくことは重要なのか?
【30】包括遺贈があるが債務を免れたい場合の落とし穴
【31】遺言による認知の落とし穴
【32】固定資産評価証明書に基づいて不動産を特定するのか?
【33】遺産の中に私道がある場合でも遺言書に書かなくてもよいか?
【34】遺言書に「有価証券」「預金」「株式」と記載する場合の落とし穴
【35】遺言書に「金融資産」と記載する場合の落とし穴
【36】貸金庫開扉権限を記載する場合の落とし穴
【37】在外資産がある場合の遺言の落とし穴
【38】特定物件を遺贈する遺言が包括遺贈とされることがあるのか?
【39】遺言書に遺言執行者の報酬が定められていない場合はどうするのか?
【40】生前贈与後に遺言を作成する場合の落とし穴
【41】不動産の特定が不十分で登記できない場合はどうするか?
第4章 遺言執行
【42】相続人の処分権限が制限される旨記載した就職通知を出すべきなのか?
【43】遺留分減殺請求がされている場合であっても、遺言書の記載に従い遺留分を無視して執行してよいか?
【44】遺言執行者が葬儀費用を相続財産から支出してよいのか?
【45】遺言執行者の提起した訴訟が遺言無効で却下された場合の訴訟費用は誰が負担するか?
【46】遺言執行者は、遺留分のない相続人に対しても相続財産目録等の交付義務を負うのか?
【47】遺言の無効を主張する相続人がある場合、遺言執行者はどう処理するのか?
【48】遺言執行者たる弁護士は遺留分減殺請求を受ける相続人の代理人となれるのか?
第5章 遺留分
【49】遺留分減殺請求に関する手続選択の落とし穴
【50】遺言の効力を争うときの落とし穴
【51】「現金で贈与を受けた」のか「不動産で贈与を受けた」のかでは大違いなのか?
【52】相続人に対する生前贈与と遺留分減殺請求の落とし穴
【53】遺留分侵害額の計算の落とし穴
第6章 遺産分割
【54】後見人と被後見人の遺産分割協議(後見人に著しく有利な結果となった場合)の落とし穴
【55】後見人と被後見人の遺産分割協議(特別代理人が選任されなかった場合)の落とし穴
【56】預貯金以外の賃料債権や、貸付金返還請求権等は当然分割となるのか?
【57】一部の相続人に遺産の一部を先行して渡し、相続人から切り離す場合の落とし穴
【58】相続債務残存の可能性がある場合に相続分の譲渡を行うときの要検討事項とは?
【59】非協力的な相続人がいる場合の裁判所選択についての誤解
【60】収益物件の収益を独り占めしている相続人がいる場合の対処法とは?
【61】遺産である建物を共同相続人の一人が占拠している場合の対処法とは?
【62】一部の遺産について先行して遺産分割する場合の落とし穴
【63】債務を負担しないという遺産分割協議に意味はあるのか?
【64】代償金の支払を担保できるのか?
【65】父の遺産分割における不公平を母の遺産分割で考慮できるのか?
【66】代償分割を希望する場合の落とし穴
【67】換価分割の場合の諸費用や税金は誰がどのように負担するのか?
【68】代償分割の場合の代償金は税務上取得費として認められるのか?
【69】代償分割の場合の代償金を裁判所が定める際、譲渡所得税はどのように考慮されるのか?
【70】遺言と異なる遺産分割はできるのか?
第7章 寄与分・特別受益
【71】特別受益と寄与分が問題となる場合の対象財産評価の落とし穴
【72】生命保険金は特別受益とならないのか?
【73】特別受益は持戻しが原則なのか?
【74】被相続人の家に無償で居住していることは特別受益となるのか?
第8章 遺産分割の前提問題・付随問題
【75】遺言書が作成されていない場合に葬儀費用を相続財産から支出できるのか?
【76】遺言書の記載に従い葬儀費用を相続財産から支出できるのか?
【77】相続放棄を予定している場合に葬儀費用を相続財産から支出してもよいのか?
【78】相続人以外の共有者も存在する不動産の処理の落とし穴
【79】老親の扶養・介護をするという約束を前提とした遺産分割の落とし穴
【80】遺産名義が被相続人と異なる場合の処理の落とし穴
【81】共同相続した非上場株式の議決権については、相続分の割合に応じて行使するのか?
【82】公営住宅の賃借権の処理の際の落とし穴
第9章 遺産分割後のトラブル
【83】地裁や高裁で和解し遺産について不動産登記をする際の落とし穴
【84】遺産分割協議において不動産が一部漏れていた場合はどうなるのか?
【85】遺産分割後に多額の債務があることが判明した場合はどうなるのか?
【86】遺産分割で取得した土地の面積が不足していた場合はどうなるのか?
【87】遺産分割で取得した土地の隣地所有者と境界争いが発生した場合はどうなるのか?
【88】遺産分割後に土壌汚染があることが判明した場合はどうなるのか?
【89】遺産分割後に母子関係の存在を確認する判決が確定した場合はどうなるのか?
【90】遺産分割で取得した土地に土壌汚染が判明した場合、相続税について更正の請求ができるのか?




「履行に代わる損害賠償」と「履行とともにする損害賠償」と履行請求権との関係

 債務不履行に基づく損害賠償は、債務が履行されたのと等しい経済的地位の回復を目的とする「履行に代わる損害賠償」と、債務の履行がされたとしてもなお残る損害の回復を目的とする「履行とともにする損害賠償」の二つに分類して議論されています。

 「履行に代わる損害賠償」は、本来の履行によって得られるべき経済的地位を金銭で実現することから本来の債務の履行を受けることは、二重どりになるという意味で両立しないことになります。

 改正民法415条2項は、債務不履行に基づく損害賠償として「履行に代わる損害賠償請求」を行うための一定の要件(①履行不能、②債務者の明確な履行拒絶、③契約の解除、④債務不履行による契約解除権の発生)を定めることにより、本来の履行を求める履行請求権を優先する考え方を採用したと考えられています。

 なお、上記②債務者の履行拒絶、又は、④債務不履行による契約解除権の発生の場合には、履行請求権も存在している、すなわち、履行請求権と「履行に代わる損害賠償請求権」が併存していることになり、両請求権の調整の規定は、明文上定められていません。




免責的債務引受の引受人が債務者に対して求償権を取得しないことの意味

 改正民法では,債務引受に関する明文の規定が設けられました。

 併存的債務引受の場合には,債務者と引受人は連帯債務者となるため両者の負担部分を観念することができ,別段の合意がなければ連帯債務における求償関係の規定(442条から445条)によることになります。

 一方で,免責的債務引受の場合には,改正民法472条の3が,引受人が債務者に対して求償権を取得しない旨定めています。

 債務者と引受人との間で別段の合意があれば別ですが,免責的債務引受の場合には,引受人が債務者が負っていた債務を引受人が引受け自己の債務として弁済することが理由とされます。

 求償権を実質的に確保する手段としては,併存的債務引受契約によったり,債務者と引受人間で委任契約を締結して費用償還請求権を行使する方法や,保証契約を締結する方法などが考えられます。




最近の労働法関連の書籍

 働き方改革法等について,以下の本を購入して検討を進めています。

・「働き方改革とこれからの時代の労働法」(商事法務)

・「Q&A働き方改革法の解説と企業の実務対応」(ロギカ書房)

・「「働き方改革関連法」改正にともなう就業規則変更の実務」(清文社)

・「残業代請求の理論と実務」(旬報社)




不動産登記についての相続法改正

 不動産の相続登記について,改正がされました。

 もともと不動産登記には対抗力が認められています(民法177条)。

 一方で相続した不動産については,原則として法定相続分に限っては登記なくして第三者に対抗することができるとされていましたが,法定相続の場合,遺産分割による場合,遺言による場合,遺贈による場合など様々なケースについて,例外も存在しています。

 些細な違いから結論が異なることは法的均衡を欠く,という観点から,今回の改正ではより明快に法定相続分を超える権利の取得については,登記なくして対抗することが出来ないものとされました(改正民法899条の2)。

 今回の改正により,今後の相続についてより一層不動産登記の重要性が高まるものと考えられます。




配偶者居住権

 相続法改正で配偶者居住権という制度が新設されました。

 これまでの相続手続きでは,残された配偶者の生活をいかに保護するか,という問題がありました。

 特に問題となるのは被相続人とその配偶者が被相続人名義の持ち家に住んでいたような場合で,他にこれといった相続財産が無いようなケースです。

 このようなケースでは不動産を共同相続人で共有すればその後の管理が複雑になりますし,生存配偶者が単独で不動産を相続するとした場合には,他の相続人への遺留分その他の代償金などを支払う必要があるため,生存配偶者に十分な資力がなければ選べないことになります。

 またほかの相続人が不動産を相続するとした場合には生存配偶者がその不動産を賃借して居住し続けるようなケースも考えられますが,そういった場合には賃料や契約解除の可能性といった面で,その後の生存配偶者の生活に支障をきたすおそれがあります。

 そこで新設されたのが配偶者居住権(改正民法1028条以下)ということになります。

 生存配偶者はその居住建物が相続財産の場合は,その全部を無償で,その終身までの間使用収益できる権利を取得します。

 この場合には居住建物については生存配偶者以外の相続人が相続することとなります。

 配偶者居住権を第三者に対抗するためには登記が必要になります(改正民法1031条)。




秘匿決定事件の審理

 刑事裁判は公開の法廷で行われますが,被害者の氏名等が起訴状朗読,冒頭陳述,書証の取調べ,論告・弁論等で明らかにされる場合には,特に,性犯罪をはじめとする被害者の名誉やプライバシーが著しく害されることが容易に想像されます。

 そこで,刑事訴訟法290条の2は,被害者の特定事項を公判廷で明らかにしない旨の決定,いわゆる秘匿決定について定めています。

 秘匿決定がなされた刑事事件では,弁護士,検察官はもちろん,裁判官も,名前をうっかり言わないよう細心の注意を払うことが求められます。

 先日弁護人として出頭した名古屋高裁の秘匿決定事件では,秘匿決定がなされたことを示す筒が,弁護人,検察官,裁判官,及び,傍聴人にも一見して分かるように,複数立てられました。




労働関係訴訟の実務〔第2版〕第16講「普通解雇と解雇権濫用法理」を読む。

 標記の本は,労働事件の実務を担当するうえで,是非とも参照するべき文献の一つだと考えられています(今年愛知県弁護士会で実施されている労働法ゼミのテキストでもあります。)。

 第16講「普通解雇と解雇権濫用法理」は,伊良原恵吾裁判官の担当です。

 伊良原裁判官の問題意識は,普通解雇,特に「能力不足,成績不良等の人的理由による」普通解雇の有効性判断について,単なる杓子定規的な「準則」的運用ではない,一定の予見可能性と具体的妥当性をもたらす「もの差し」(判断基準)の探求を行うべきという点にあります。

 上記「ものさし」とは,具体的には,①将来的予測の原則,及び,②最終的手段の原則,を指します。

 内容として,それぞれ,①雇用契約の履行に支障を及ぼす債務不履行事由が将来にわたって継続するものと予測される場合に(根本論文「ドイツの議論状況も参考にすれば,継続的契約関係における契約の解消手段としての「解雇」は,「解除」と異なり,将来効を有する権利として,過去の債務不履行に対する単なる制裁として位置づけられるのではなく,その目的は契約関係が何らかの事情で破綻しているため,将来に向けて継続的契約関係を解消する点にある。したがって,解雇権のこうした本来的な性格に鑑みれば,解雇事由が現に客観的に存しているだけでなく,将来においてもその事由が継続することが解雇に際して求められることは必然的な要請であると考える。」),②その契約を解消するための最終手段として行使されるべきもの(根本論文「解雇権という,継続的契約関係の他方当事者の利益に必然的に影響を与える契約解消型形成権に伴って課される必然的な要請(他者の利益を侵害する故に目的と手段が均衡することが要請される)だと考える」)と主張しています。

 労働者側の主張立証上の留意点として,使用者の雇用維持義務を大きく後退させるようなものではないことを明確にした上で使用者の労働能率・勤務成績に対する評価に対する反論に加え,指導・注意に従ったか,向上への意欲はあるか,労働能率・勤務成績不良もやむを得ないといえる合理的な特段の事情があるか,が挙げられています。

 使用者側の主張立証上の留意点として,就業規則記載の解雇事由に着目した立証に加え,労働能率・勤務成績向上のための指導,注意等をしたか,人事管理に不適切なところはなかったか,採用時に特段の能力があることを条件としていたか,他に配置する部署が存在したか,本人の雇用を継続することによって会社業務の正常な遂行に与える影響は大きいか,という点があげられています。

 伊良原裁判官の問題意識は,根本到教授の論文を参考としたものである旨明記されているところですが,実務でよく参照される類書にはない視点ということもできそうであり,一弁護士としては,慎重な検討が必要なのではないかという感想を持ちました。

 伊良原裁判官は,17講「解雇事由が併存する場合における解雇権濫用法理の運用」も執筆されており,あわせて参照するべきだと考えられます。

 特に,就業規則に規定された普通解雇事由についての例示列挙説と限定列挙説の対立の実務上の意味についての分析は参考になりました。




注文者の破産手続開始決定と請負人の解除権

 現行民法642条は,注文者が破産手続開始決定を受けた場合の請負人の有する解除権の行使について,文言上制限をしていないことから,完成後であっても行使できると考えられていました。

 しかし,改正民法642条1項ただし書は仕事の完成後は,損害の拡大を防止するために契約の解除を認める必要はないこと等を考慮し,請負人は注文者の破産手続開始による解除をすることができない旨定めています。




相殺の充当の規定

 現民法512条は相殺の充当について,単純に弁済の充当の規定を準用していますが(488条から491条),民法506条に定められているとおり相殺には遡及効がある点で弁済とは異なる考慮が必要と考えられていました。

 そこで改正民法512条は,債権者が債務者に有している1個または数個の債権と債権者が債務者に負担している1個または数個の債務について,⑴充当の順序に関する合意をしたときはそれによって消滅すること,⑵合意をしないときは,債権者の債権と負担する債務は相殺適状となった時期の順序に従って相殺によって消滅すること(同条1項),相殺適状の時期が同じ元本債権相互間と利息・費用債権の充当について,相当する弁済の充当の規定を準用しています(同条2項)。




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