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就業規則の不利益変更に対する労働者との合意と最低基準効との関係

 就業規則に規定されている労働条件を引き下げる場合,個々の労働者が同意したとしても,引き下げることはできないことが,労働契約法12条に定められています(就業規則の最低基準効とよばれます)。

 就業規則の不利益変更に対する個別の労働者の同意と変更後の就業規則の有効性について最高裁平成28年2月19日判決(山梨県民信用組合事件)は,「労働契約の内容である労働条件は,労働者と使用者との個別の合意によって変更することができるものであり,このことは,就業規則に定められている労働条件を不利益に変更する場合であっても,その合意に際して就業規則の変更が必要とされることを除き,異なるものではないと解される(労働契約法8条,9条本文参照)」と判示しています。

 就労働契約法8条と9条は,労働条件に関するいわゆる合意原則を定めている規定であり,最高裁は同意の有無について,「労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも判断されるべき」と判示しています。




季刊刑事弁護100号記念模擬裁判員裁判

 2019年11月2日に,高野隆弁護士を弁護人役,後藤貞人弁護士を検察官役とする標記の模擬裁判が企画されています。

 各地で開催されている模擬裁判は,検察官役が検察官であることから,検察官役も検察官のほうが良いような気もしますが,どちらも刑事弁護の分野で著名な先生であり,台本などない真剣勝負のやりとりが期待でき,非常に勉強になるものと思います。

 最新の季刊刑事弁護で紹介されています。




タイプフェイスの著作物性と法的保護

 タイプフェイス(文字フォント,(印刷用)書体)の著作物性について,最高裁平成12年9月7日判決は,「印刷用書体が・・・著作物に該当するというためには、それが従来の印刷用書体に比して顕著な特徴を有するといった独創性を備えることが必要であり、かつ、それ自体が美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えていなければならないと解するのが 相当である。」「印刷用書体について右の独創性を緩和し、又は実用的機能の観点から見た美しさがあれば足りるとすると、この印刷用書体を用いた小説、 論文等の印刷物を出版するためには印刷用書体の著作者の氏名の表示及び著作権者の許諾が必要となり、これを複製する際にも著作権者の許諾が必要となり、既存の印刷用書体に依拠して類似の印刷用書体を制作し又はこれを改良することができなくなるなどのおそれがあり(著作権法19条ないし21条、27条)、著作物の公正な利用に留意しつつ、著作者の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与しよ うとする著作権法の目的に反することになる。また、印刷用書体は、文字の有する情報伝達機能を発揮する必要があるために、必然的にその形態には一定の制約を受 けるものであるところ、これが一般的に著作物として保護されるものとすると、著作権の成立に審査及び登録を要せず、著作権の対外的な表示も要求しない我が国の著作権制度の下においては、わずかな差異を有する無数の印刷用書体について著作権が成立することとなり、権利関係が複雑となり、混乱を招くことが予想される。」と厳格な基準を提示し,問題となったゴナ書体について著作物性を否定しました。

 ただし,タイプフェイスの開発には多額の投資と労力が必要であることから,著作権法以外による保護を考えるべきという議論もなされています。




相続財産についての情報は,被相続人の生前に個人情報保護法2条1項にいう「個人に関する情報」に当たるものであったとしても,直ちに相続人等の「個人に関する情報」に当たるとはいえない(最高裁平成31年3月18日判決)

 原審広島高裁岡山支部は,「ある相続財産についての情報であって被相続人に関するものとしてその生前に法2条1項にいう「個人に関する情報」であったものは,当該相続財産が被相続人の死亡により相続人や受遺者(以下「相続人等」という。)に移転することに伴い,当該相続人等に帰属することになるから,当該相続人等に関するものとして上記「個人に関する情報」に当たる。本件印鑑届書の情報は,本件預金口座に係る預金契約上の地位についての情報であって亡母に関するものとして上記「個人に関する情報」であったから,亡母の相続人等として上記預金契約上の地位を取得した被上告人に関するものとして上記「個人に関する情報」に当たる。」と判断していましたが,最高裁は以下のとおり判示しました。

「⑴法は,個人情報の利用が著しく拡大していることに鑑み,個人情報の適正な取扱いに関し,個人情報取扱事業者の遵守すべき義務等を定めること等により,個人情報の有用性に配慮しつつ,個人の権利利益を保護することを目的とするものである。法が,保有個人データの開示,訂正及び利用停止等を個人情報取扱事業者に対して請求することができる旨を定めているのも,個人情報取扱事業者による個人情報の適正な取扱いを確保し,上記目的を達成しようとした趣旨と解される。このような法の趣旨目的に照らせば,ある情報が特定の個人に関するものとして法2条1項にいう「個人に関する情報」に当たるか否かは,当該情報の内容と当該個人との関係を個別に検討して判断すべきものである。したがって,相続財産についての情報が被相続人に関するものとしてその生前に法2条1項にいう「個人に関する情報」に当たるものであったとしても,そのことから直ちに,当該情報が当該相続財産を取得した相続人等に関するものとして上記 「個人に関する情報」に当たるということはできない。

⑵本件印鑑届書にある銀行印の印影は,亡母が上告人との銀行取引において使用するものとして届け出られたものであって,被上告人が亡母の相続人等として本件預金口座に係る預金契約上の地位を取得したからといって,上記印影は,被上告人と上告人との銀行取引において使用されることとなるものではない。また,本件印鑑届書にあるその余の記載も,被上告人と上告人との銀行取引に関するものとはいえない。その他,本件印鑑届書の情報の内容が被上告人に関するものであるというべき事情はうかがわれないから,上記情報が被上告人に関するものとして法2 条1項にいう「個人に関する情報」に当たるということはできない。 」

 個人情報保護法,及び,相続事件に関する最高裁判例として確認しておく必要があります。




知的財産法の侵害に該当しない場合の一般不法行為の成否及び退職従業員の秘密保持義務・競業避止義務

 個別の知的財産法違反が否定された場合に、民法709条の一般不法行為が成立するかについては、議論がありました。

 著作権法が問題となった北朝鮮事件(最高裁平成23年12月8日判決)は、著作権法6条各号に該当しない著作物であることから著作権法の保護を受けない著作物について、「(著作権)法が規律の対象とする著作物の利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り、不法行為を構成するものではないと解するのが相当である。」と判示し、知的財産法による保護が否定された情報の利用行為は、原則として不法行為の成立を否定する立場をとったと考えられます。

 なお、不正競争防止法の「営業秘密」に該当しないとの判断をしたうえで、「控訴人は,本件原告製品を模倣されないことによる利益を侵害された旨主張するものと解されるところ,控訴人が主張する本件原告製品を模倣されないことにより享受する利益は,不競法が規律の対象とする営業秘密の利用による利益と異なる利益をいうものとは解されない。そうすると,本件原告製品に係る本件情報が不競法2条6項の営業秘密に当たるとはいえないから,被控訴人の上記利用行為が不法行為を構成するとみることはできない。」と判示した知財高裁平成30年7月3日判決があります。

 労働問題を取扱う弁護士としては、退職従業員に対して秘密保持義務・競業避止義務の有効性を考えるうえでも、重要な視点となり得ると考えられます。




翻案と二次的著作物

 著作権法2条1項11号は、二次的著作物について、「著作物を・・・翻案することにより創作した著作物をいう」と規定しています。

 江差追分事件(最高裁平成13年6月28日判決)は、翻案について、「既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう」としています。

 具体的表現に変更等が加えられていても創作的な表現でなければ翻案とはいえず、複製の範囲にとどまるということになります。




愛知県迷惑行為防止条例(平成31年1月1日施行)

 いわゆる愛知県の迷惑防止条例が改正,施行されています。

 改正の理由は,「県内におけるストーカー事案は、年々増加しておりますが、その中には、ストーカー行為を敢行していながら恋愛感情を否定し、ストーカー規制法の適用を免がれようとする事案や、そもそも恋愛感情を伴わない妬み、恨みなどの悪意の感情から外形的にはストーカー行為と同様のつきまとい、押し掛け等の行為を執拗に繰り返す陰湿な事案も発生しておりますが、こうした行為に対し規制する法令がありませんでした。また、痴漢、のぞき見、盗撮及び卑わいな言動の検挙件数は、高止まりの状態が続いており、さらには、小型薄型で高性能なスマートフォンの普及等により、盗撮被害が、学校、事務所、さらには住居の浴室、トイレ等、プライベートな場所においても発生するなど、条例では規制されなていない場所にまで及んでおりました。こうした現状を踏まえ、県民生活の安全、安心を確保するために、この度、本条例が改正されることとなりました。」とされています。

 条例の名称が変更されていますので,弁護人選任届の罪名の記載にも注意が必要です。

 




AIを利用したソフトウェアが第三者に損害を与えた場合

 ユーザーから提供を受けたデータをもとに,AI技術を用いて開発したソフトウェアが,第三者に損害を与えた場合の責任の主体を特定することはかなり困難であることが予想されます。

 提供を受けたデータに原因があるのか,プログラムに起因するのかの判断が事実上難しいと考えられるからです。

 このような事態についての責任分担を適切に規定した契約を締結できなければ,ユーザーとソフトウェアベンダーとの契約は,交渉段階で不成立となってしまうことも容易に考えられるところです。




保釈保証金の納付

 保釈の申請が通った場合,定められた保釈保証金,いわゆる保釈金を裁判所に納付する必要があります。

 数百万円の現金を,名古屋地裁,岐阜地裁(いずれも本庁)へ持参して納付した経験があります。

 いわゆる否認事件で,保釈の申請が認められた経験もあります。




前払式特定取引

 割賦販売法には,前払式特定取引として,①割賦・前払いによる商品の売買の取次ぎ,及び,②割賦前払いによる指定役務の提供の2種類の定めがあります。

 ①は,指定商品に限定されない商品の売買の取次ぎであって購入者にに対する商品の引渡しに先立って購入者から商品の代金の全部または一部を2カ月以上にわたり,かつ,3回以上に分割して受領するもので,百貨店等でみられる「友の会」が具体例として挙げられます。

 ②は,指定役務の提供,又は,指定役務の提供をすることもしくは指定役務の提供を受けることの取次ぎであって,指定役務の提供を受ける者から対価の全部または一部を2カ月以上にわたり3回以上に分割して受領するもので,冠婚葬祭などの「互助会」を具体例としてあげることができます。

 前払式特定取引においては,業者の許可制,営業保証金の供託,及び,前受金保全措置が定められています。




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