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事業場外労働みなし制度

 事業場外労働みなし制度とは、①労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなし(所定労働時間みなし)、ただし、②当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合は、当該業務の遂行に必要とされる時間労働したものとみなし(通常必要時間みなし)、さらに、③上記②の場合において労使協定が締結されたときは、その協定で定める時間を上記②の「当該業務の遂行に必要とされる時間」とする(協定時間みなし)制度です(労働基準法38条の2)。

 「通常必要とされる労働時間」とは、想定される平均的な労働時間とされるので、実労働時間算定に準じた取扱いともいえ、実労働時間の算定困難性を認めて事業場外みなし制を適用した東京地判平成22年7月2日等も、事業場外労働の実態等を具体的に検討した上で通常必要時間を算定しています。

 最高裁平成26年1月24日は、使用者が労働者の勤務状況を具体的に把握することが困難か否かという観点から判断しており、実務の具体的な判断としては、①事前に具体的な勤務内容が定められ、②業務上の裁量の幅が限られ、③使用者がその内容に沿って業務遂行を指示しているだけでなく、④添乗日報のような事後の報告(自己申告)の正確性が確認できれば、労働時間算定困難性は否定されることになるものと考えられます。




菅野和夫「労働法<第12版>」

 もうすぐ出るようです(弘文堂ホームページ)。

 水町先生の詳解労働法とあわせて,労働事件を扱う弁護士必携の本だと思います。

 荒木先生や土田先生も近いうちに改訂版を出してほしいところです。




配偶者居住権と持戻し免除の意思表示

 相続人に対する贈与や遺贈は特別受益として扱われ,被相続人から遺産の先渡しを受けたものとして,遺産分割における取り分を計算することになります。

 具体的には,その贈与等の価額を遺産の価額に持ち戻した上で,遺産の総額に各相続人の相続分を乗じ,贈与等を受けた相続人は贈与等の価額を差し引いて遺産分割における各自の取り分を計算します。

このような持戻し計算をすることにより,贈与等があっても贈与等を受けた相続人の最終的な取り分は変わらないことになってしまいます。

 そこで,被相続人が特定の贈与等について,その価額を遺産に含めない意思を示していた場合(いわゆる持戻し免除の意思表示がされていた場合)には,このような計算をする必要がなくなり,最終的な取り分が増えることになります。

 遺贈又は死因贈与により配偶者居住権を取得した場合には、配偶者居住権の価値相当額を当該配偶者が取得したことになるため、特別受益に該当することになりますが、婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が,配偶者に対してなした配偶者居住権の遺贈については,持戻し免除の意思表示が推定されることが、改正民法1028条3項が,改正民法903条4項を準用していることから導かれます。




取得時効に基づく一時所得の年度帰属

 時効取得に基づく一時所得の年度帰属は,民法学説における援用の議論や,税法上の観点等から,①占有開始時,②時効完成時,③時効援用時,④時効取得について判決等が確定した場合,が理論上考えられます。
 東京地裁平成4年3月10日では,納税者が④,課税庁が③を主張しましたが,同判決は、課税庁の主張した③時効援用を主張した年度に帰属する旨判示しました。
 時効取得の主張が認められるためには,短くても10年の占有継続が要件ですから(民法162条1項,同2項参照),時効取得の援用ができる事実関係の下では,①の立場の主張では、自動的に課税の消滅時効期間が経過していることになり(国税通則法72条1項,地方税法18条1項は,租税の徴収権は原則として法定納期限から5年間行使しないことにより時効により消滅する旨規定しています〔金子宏租税法〔23版〕871ページ〕。)、およそ時効取得が認められた場合には課税ができないことを意味することになり、「筋が悪い」主張という印象を受けます




個人根保証に関する規律の対象

 改正民法465条の2第2項は、「一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約」を根保証契約と定義し、書面又は電磁的記録で「極度額」を定めなければ無効と定めています。

 立法担当者の解説では、不動産の賃借人が賃貸借契約に基づいて負担する債務の一切を個人が保証する場合、代理店等を含めた取引先企業の代表者との間で損害賠償債務や取引債務等を保証する場合、介護等の施設への入居者の負う各種債務を保証する場合が挙げられていますが、「一定の範囲に属する不特定の債務」に該当する債務に該当するものが多数あるものと考えられます。

 弁護士としては、該当しそうな契約について、その類型に応じて、限度額をいくらに設定するかの検討も求められることになります。

 取引基本契約に基づいて継続的取引を行っている場合には(このような取引に基づいて発生する債務は、「一定の範囲に属する不特定の債務」に該当するものと考えられます。)、取引残高が極度額を超えるとその超過部分は保証の対象外となることから、取引残高の確認がより一層求められることになります。




事業場外労働みなし制の考え方

1 まず、以下の行政通達がありますが、一見して、「使用者の具体的指揮監督」、「労働時間の管理」、「指示」という概念の関係があいまいという印象をうけます。

「事業場外労働に関するみなし労働時間制の対象となるのは、事業場外で業務に従事し、かつ、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難な業務であること。したがって、次の場合のように、事業場外で業務に従事する場合であっても、使用者の具体的な指揮監督が及んでいる場合については、労働時間の算定が可能であるので、みなし労働時間制の適用はないものであること。

① 何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合

② 事業場外で業務に従事するが、無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら労働している場合

③ 事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けたのち、事業場外で指示どおりに業務に従事し、事業場にもどる場合」

2 最高裁平成26年1月24日判決は、事業場外労働みなし制の要件である労働時間算定困難性について、使用者が労働者の勤務状況を具体的に把握することが困難か否かという観点から判断しています。

 労働時間の算定が困難であることと使用者の指揮監督とは本来別の次元であると考えられることから、理論的には相当と考えられますが、実務上の問題としては、事業場外労働みなし制が有効に認められるためには、どの程度の困難さが求められるかということになります。




相続人以外の者の貢献を考慮するための方策(特別の寄与)

 相続人ではない者(相続人の配偶者等)が被相続人の療養看護に努めるなどの貢献を行った場合であっても,遺産の分配を受けることができないという不公平を解消し,被相続人の療養看護等に尽くした者の貢献に報いるために,相続人に対し,その貢献に応じた額の金銭(特別寄与料)の支払を請求することができるようにするため,特別の寄与の制度が新設されました。 

 これにより,相続人以外の被相続人の親族が,被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与をした場合,その親族は,相続の開始後相続人に対し,寄与に応じた額の金銭の支払いを請求することができることになります。

 特別寄与料の額は,寄与の時期,方法及び程度,相続財産の額その他一切の事情を考慮して,特別寄与料の額を定めることとsれており(1050条3項),特別寄与料の額は,被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができないことが定められています(同条4項)。

 権利行使期間については,家庭裁判所に対する調停・審判の申立ては,①特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月以内,②相続開始の時から1年以内にしなければならないとされ(1050条2項,いずれも除斥期間),最長でも相続開始時から1年以内に申立てる必要があります。

 特別寄与料の額に相当する金額を被相続人から遺贈により取得したものとみなし,相続税が課税されることになりますが,相続税の計算では,特別寄与者は「一親等の血族や配偶者以外の者」に該当するため2割加算する必要があることになります(相続税法18条1項)。

 準委任契約等の財産権上の請求権も排除されていないこと等からも,このような税務上の取扱には疑問も残るところです。

 なお,特別寄与料は,相続人の相続税の課税価格から控除されるため,相続税申告後に特別寄与者から請求を受けた場合,更正の請求をすることができることが規定されています(相続税法32条1項7号)。




条解弁護士法〔第5版〕

 もうすぐ出るようです(弘文堂ホームページ)。

 弁護士法の解説本は類書もありますが,やはりこの本が一番参考になると思います。




株式の相続

 株式が複数の相続人に相続された場合,法定相続分に従って当然に分割されるのではなく,1株1株について共有に属することになります。

 会社法106条本文は,株式が共有に属するときに権利行使する際には,当該共有者は,株式について権利を行使する者を1人定めて会社に対し通知する必要があることを規定しています。

 権利行使者は,持ち分の価格の過半数で決定することになります(最高裁平成9年1月28日判決)。




遺留分の金銭債権化と事業承継との関係

 旧法の下では,遺留分減殺請求権を行使すると,当然に物権的効果が生じ,遺贈等の目的財産は遺留分権利者と遺贈等を受けた者との間で共有になることから,遺贈等の目的財産が事業用財産であった場合には,円滑な事業承継を困難にし,また,共有関係の解消をめぐって新たな紛争が生じるという問題が指摘されていました。

 改正法により金銭債権化され,遺留分侵害者が贈与等により取得した財産そのものの全部又は一部が遺留分権利者に移転することはなくなり,当該財産をめぐる法律関係の複雑化,事後的な権利変動が防止される点で,被相続人の意思に沿って,事業承継が進みやすいと考えられます。

 一方で,旧法では,遺留分侵害者としては,贈与等により取得した対象財産の減殺(共有化を含む。)を甘受するか,金銭で弁償するか(旧1041条項)の選択が可能であったが,改正法では,金銭支払い以外の選択の余地がない点が問題となる事案もあると考えられます。




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