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不動産登記についての相続法改正

 不動産の相続登記について,改正がされました。

 もともと不動産登記には対抗力が認められています(民法177条)。

 一方で相続した不動産については,原則として法定相続分に限っては登記なくして第三者に対抗することができるとされていましたが,法定相続の場合,遺産分割による場合,遺言による場合,遺贈による場合など様々なケースについて,例外も存在しています。

 些細な違いから結論が異なることは法的均衡を欠く,という観点から,今回の改正ではより明快に法定相続分を超える権利の取得については,登記なくして対抗することが出来ないものとされました(改正民法899条の2)。

 今回の改正により,今後の相続についてより一層不動産登記の重要性が高まるものと考えられます。




配偶者居住権

 相続法改正で配偶者居住権という制度が新設されました。

 これまでの相続手続きでは,残された配偶者の生活をいかに保護するか,という問題がありました。

 特に問題となるのは被相続人とその配偶者が被相続人名義の持ち家に住んでいたような場合で,他にこれといった相続財産が無いようなケースです。

 このようなケースでは不動産を共同相続人で共有すればその後の管理が複雑になりますし,生存配偶者が単独で不動産を相続するとした場合には,他の相続人への遺留分その他の代償金などを支払う必要があるため,生存配偶者に十分な資力がなければ選べないことになります。

 またほかの相続人が不動産を相続するとした場合には生存配偶者がその不動産を賃借して居住し続けるようなケースも考えられますが,そういった場合には賃料や契約解除の可能性といった面で,その後の生存配偶者の生活に支障をきたすおそれがあります。

 そこで新設されたのが配偶者居住権(改正民法1028条以下)ということになります。

 生存配偶者はその居住建物が相続財産の場合は,その全部を無償で,その終身までの間使用収益できる権利を取得します。

 この場合には居住建物については生存配偶者以外の相続人が相続することとなります。

 配偶者居住権を第三者に対抗するためには登記が必要になります(改正民法1031条)。




秘匿決定事件の審理

 刑事裁判は公開の法廷で行われますが,被害者の氏名等が起訴状朗読,冒頭陳述,書証の取調べ,論告・弁論等で明らかにされる場合には,特に,性犯罪をはじめとする被害者の名誉やプライバシーが著しく害されることが容易に想像されます。

 そこで,刑事訴訟法290条の2は,被害者の特定事項を公判廷で明らかにしない旨の決定,いわゆる秘匿決定について定めています。

 秘匿決定がなされた刑事事件では,弁護士,検察官はもちろん,裁判官も,名前をうっかり言わないよう細心の注意を払うことが求められます。

 先日弁護人として出頭した名古屋高裁の秘匿決定事件では,秘匿決定がなされたことを示す筒が,弁護人,検察官,裁判官,及び,傍聴人にも一見して分かるように,複数立てられました。




労働関係訴訟の実務〔第2版〕第16講「普通解雇と解雇権濫用法理」を読む。

 標記の本は,労働事件の実務を担当するうえで,是非とも参照するべき文献の一つだと考えられています(今年愛知県弁護士会で実施されている労働法ゼミのテキストでもあります。)。

 第16講「普通解雇と解雇権濫用法理」は,伊良原恵吾裁判官の担当です。

 伊良原裁判官の問題意識は,普通解雇,特に「能力不足,成績不良等の人的理由による」普通解雇の有効性判断について,単なる杓子定規的な「準則」的運用ではない,一定の予見可能性と具体的妥当性をもたらす「もの差し」(判断基準)の探求を行うべきという点にあります。

 上記「ものさし」とは,具体的には,①将来的予測の原則,及び,②最終的手段の原則,を指します。

 内容として,それぞれ,①雇用契約の履行に支障を及ぼす債務不履行事由が将来にわたって継続するものと予測される場合に(根本論文「ドイツの議論状況も参考にすれば,継続的契約関係における契約の解消手段としての「解雇」は,「解除」と異なり,将来効を有する権利として,過去の債務不履行に対する単なる制裁として位置づけられるのではなく,その目的は契約関係が何らかの事情で破綻しているため,将来に向けて継続的契約関係を解消する点にある。したがって,解雇権のこうした本来的な性格に鑑みれば,解雇事由が現に客観的に存しているだけでなく,将来においてもその事由が継続することが解雇に際して求められることは必然的な要請であると考える。」),②その契約を解消するための最終手段として行使されるべきもの(根本論文「解雇権という,継続的契約関係の他方当事者の利益に必然的に影響を与える契約解消型形成権に伴って課される必然的な要請(他者の利益を侵害する故に目的と手段が均衡することが要請される)だと考える」)と主張しています。

 労働者側の主張立証上の留意点として,使用者の雇用維持義務を大きく後退させるようなものではないことを明確にした上で使用者の労働能率・勤務成績に対する評価に対する反論に加え,指導・注意に従ったか,向上への意欲はあるか,労働能率・勤務成績不良もやむを得ないといえる合理的な特段の事情があるか,が挙げられています。

 使用者側の主張立証上の留意点として,就業規則記載の解雇事由に着目した立証に加え,労働能率・勤務成績向上のための指導,注意等をしたか,人事管理に不適切なところはなかったか,採用時に特段の能力があることを条件としていたか,他に配置する部署が存在したか,本人の雇用を継続することによって会社業務の正常な遂行に与える影響は大きいか,という点があげられています。

 伊良原裁判官の問題意識は,根本到教授の論文を参考としたものである旨明記されているところですが,実務でよく参照される類書にはない視点ということもできそうであり,一弁護士としては,慎重な検討が必要なのではないかという感想を持ちました。

 伊良原裁判官は,17講「解雇事由が併存する場合における解雇権濫用法理の運用」も執筆されており,あわせて参照するべきだと考えられます。

 特に,就業規則に規定された普通解雇事由についての例示列挙説と限定列挙説の対立の実務上の意味についての分析は参考になりました。




注文者の破産手続開始決定と請負人の解除権

 現行民法642条は,注文者が破産手続開始決定を受けた場合の請負人の有する解除権の行使について,文言上制限をしていないことから,完成後であっても行使できると考えられていました。

 しかし,改正民法642条1項ただし書は仕事の完成後は,損害の拡大を防止するために契約の解除を認める必要はないこと等を考慮し,請負人は注文者の破産手続開始による解除をすることができない旨定めています。




相殺の充当の規定

 現民法512条は相殺の充当について,単純に弁済の充当の規定を準用していますが(488条から491条),民法506条に定められているとおり相殺には遡及効がある点で弁済とは異なる考慮が必要と考えられていました。

 そこで改正民法512条は,債権者が債務者に有している1個または数個の債権と債権者が債務者に負担している1個または数個の債務について,⑴充当の順序に関する合意をしたときはそれによって消滅すること,⑵合意をしないときは,債権者の債権と負担する債務は相殺適状となった時期の順序に従って相殺によって消滅すること(同条1項),相殺適状の時期が同じ元本債権相互間と利息・費用債権の充当について,相当する弁済の充当の規定を準用しています(同条2項)。




就業規則に定められた解雇事由は限定列挙と考えるべきか

 就業規則の解雇条項は解雇事由を限定列挙したものか、例示にすぎないかについては学説上の争いがあるようです。

 労働基準法89条3号により解雇事由の定めが就業規則の絶対的必要的記載事項とされたことが、限定列挙説の根拠と主張されることもありますが、実務上は、解雇事由として包括的な条項が規定されていることが多く、実際上の違いはないと一般に考えられています。




年次有給休暇の時季指定義務

 労働基準法が改正され,平成31年4月から,年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して,年次有給休暇の日数のうち年5日については,使用者が時季を指定して取得させることが必要となりました。

 使用者は,時季指定にあたっては,労働者の意見を聴取し,その意見を尊重するよう努めなければならず,労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し,3年間保存することも求められます。

 なお,年次有給休暇を5日以上取得済みの労働者や計画的付与により5日以上付与された労働者に対しては,使用者による時季指定は不要であり,労働者が自ら申し出て取得した年次有給休暇の日数,計画的付与により与えられた日数については,5日から控除することができることになります。

 これまでの有給休暇の取得状況などをふまえ,具体的な対策が求められることになります。




租税手続きにおける錯誤についての最高裁の考え方

 9月25日に,「給与所得に係る源泉所得税の納税告知処分について,法定納期限が経過したという一事をもって,その納付義務を成立させる支払の原因となる行為の錯誤無効を主張してその適否を争うことが許されないとはいえない」という判示事項の最高裁判例が出されています(最高裁ホームページ)。

 これは,原審の広島高裁が,「申告納税方式の下では,同方式における納税義務の成立後に,安易に納税義務の発生の原因となる法律行為の錯誤無効を認めて納税義務を免れさせることは,納税者間の公平を害し,租税法律関係を不安定にすることからすれば,法定申告期限を経過した後に当該法律行為の錯誤無効を主張することは許されないと解される。源泉徴収制度の下においても,源泉徴収義務者が自主的に法定納期限までに源泉所得税を納付する点では申告納税方式と異なるところはなく,かえって,源泉徴収制度 は他の租税債権債務関係よりも早期の安定が予定された制度であるといえることか らすれば,法定納期限の経過後に源泉所得税の納付義務の発生原因たる法律行為につき錯誤無効の主張をすることは許されないと解すべきである。 」と判示したことを受けてのものです。

 しかしながら,最高裁は結論として,「上告人は,本件債務免除が錯誤により無効である旨の主張をするものの,前記2(5)の納税告知処分が行われた時点までに,本件債務免除により生じた経済的成果がその無効であることに基因して失われた旨の主張をしておらず,したがって,上告人の主張をもってしては, 本件各部分が違法であるということはできない。そうすると,本件各部分が適法であるとした原審の判断は,結論において是認することができる。論旨は,結局,採 用することができない。 」と判示して,納税者の上告を棄却しています。

 源泉徴収義務について,納税者に厳しい判断がなされたという評価も可能であり,弁護士・税理士の立場でも検討が必要な判例といえます。




消費税率引上げとそれに伴う対応に関する総理発言について(会長コメント)

 日税連会長のコメントが掲載されています(日本税理士会連合会ホームページ)。

 軽減税率については,「その円滑な実施に向け適切に対応してまいります。あわせて、税理士法に規定された税制及び税務行政に対する建議権に基づき、事業者に負担の少ない税制の構築を目指し、引き続き提言してまいります。」と記載されています。

 軽減税率(「複数」税率と表現したほうが,より制度の本質を表現できると思いますが)の導入について,税理士会として賛成しているように読めますが,反対している税理士も多い印象です。




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