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金子租税法第23版

 もうすぐ出るようです。




受託者と任意後見人の兼任の是非

 高齢者の財産管理や財産承継対策として家族信託を検討するべき場面が増えてきましたが,信託の設定のみですべての場面に対応が可能な場合はむしろ例外的であり,例えば,身上監護の観点から任意後見の併用をするべき場合もあります。

 信託に加えて任意後見の併用を行う場合には,受託者と任意後見人の兼任が可能なのか,適切なのかについて悩ましい事案もあります。

 受託者が受益者に対して給付を行う行為は受託者と受益者との間で利害は一致していることから,受託者と任意後見人が同一人物であっても直ちに利益相反になるわけではなく,ほかに適任者がいない場合には受託者と任意後見人を兼任せざるをえない場合もありますし,受託者と任意後見人の兼任により効率的な事務処理が可能という点を指摘できる一方で,受託者兼任意後見人に対する監督が不十分となり,濫用の恐れに適切に対応できないことも考えられます。

 受託者は受益者代理人にはなれないことが信託法144条・124 条2号に規定されていますが,任意後見人の法律上の位置づけとしては受益者の代理人に準じる立場といえるのであり,兼任するべきかについては慎重にするべきとはいえます。

 なお,兼任しない場合に,受託者と任意後見人の方針が一致せず,デッドロックになりうる場面(信託財産の自宅不動産を売却して施設に入所する時期など)も想定されることから,信託を提案する弁護士としては,事案ごとの検討が求められることは間違いないと思います。




信託能力を考える視点

 いわゆる民事信託・家族信託を設定する場合,委託者の判断能力,すなわち,信託を有効に設定する能力があるかについての検討が必要となります。

 基本的な発想としては,信託の内容に応じて,遺言能力を判断する際の要素が参考にされるべきです。

 弁護士が遺言能力を検討する際に参照することの多い, 土井文美裁判官の「遺言能力(遺言能力の理論的検討及びその判断・審理方法)」(判 タ1423号・15ページ~)では,① 遺言者の年齢 ② 病状を含めた心身の状況及び健康状態とその推移 ③ 発病時と遺言時との時期的関係 ④ 遺言時及びその前後の言動 ⑤ 日頃の遺言についての意向 ⑥ 受贈者との関係 ⑦ 遺言の内容 等の要素を評価根拠事実と評価障害事実とに分類した上で総合考慮して判断するとされています。




支配人の意義

 商法21条1項及び会社法11条1項の支配人の意義について、通説的見解は、商人・会社から営業に関する包括的な代理権、すなわち、一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を与えられた使用人をさすと考えています。

 通説的見解に対しては、取引をしようとする相手方が当該使用人の代理権の制限をその都度確認する必要があるという点で支配人制度の意義がなくなることになります。

 このような観点から、支配人の意義を商人・会社により本店または支店の営業の主任者である地位に選任された使用人と考えるべきとする有力説が主張されています。

 有力説からは、営業主の意思に関係なく、「支配人」は、商法21条1項・3項あるいは会社法11条1項・3項の代理権を有することになる。

 なお、商法25条・会社法14条は、「ある種類または特定の事項の委任を受けた使用人」を規定しており、代理権の範囲が限定されているが、裁判上の行為を除く当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する点、代理権に加えた制限は善意の第三者に対抗できない点は、支配人の規定と同様です。




受託者の公平義務と民事信託

 信託法33条は,「受益者が二人以上ある信託においては,受託者は,受益者のために公平にその職務を行わなければならない。」と,いわゆる受託者の公平義務を定めています。

 以下のような民事信託の事例で,受託者の公平義務が議論されています。

 収益物件を信託財産とし,受託者が同物件の売却権限を有すること,一次受益者の生きている間は同物件からの収益を分配し,一次受益者がなくなった後は二次受益者に残余財産を分配するという受益者連続信託を想定した場合,同物件の価値の下落との関係で,受託者による同物件の売却のタイミングによっては,片方の受益者を害すると評価でき得る。

 信託の目的などを適切に設定することにより,受託者の権限行使に不当な負担がかからないような工夫が必要と考えられます。




休職期間満了による雇用契約の終了と労働者の対応

 いわゆる私傷病休職の休職期間満了による雇用契約の終了を主張する使用者は、就業規則に規定された休職命令の発令及び休職期間満了の事実を主張立証することになります(私傷病休職制度は、一定期間私傷病で労働できないことを理由に直ちに労働契約関係を解消することが労働者に過酷であることを踏まえて、解雇または退職を一定期間猶予する制度と位置付けられています。)。

 対象となる労働者としては、復職の申し入れと債務の本旨に従った労務の提供ができる程度に病状が回復したことを立証できれば、雇用契約終了の効果を妨げることができると解されています。




認知症の事前対策~信託の活用場面

(事例)

 高齢者甲の財産は自宅不動産と金銭であるが,甲が,将来老人ホーム等に入居することになった場合には,自宅不動産を売却し,入居費用や生活費,介護費用などに充てたいと考えている。

(検討事項)

 甲が自宅不動産を売却したい時点,あるいは,売却するべき時点において,甲の判断能力が低下している場合(後見相当と判断されるような場合)には,売却が困難となる事態が想定される。

 また,甲の判断能力が後見相当に至る前の段階でも,甲が自宅不動産や金銭の管理を十分にできない不安もある。

(信託の概要)

⑴ 信託目的

 将来における甲の意思能力の減退または喪失があっても,信託財産を管理すること,自宅不動産に甲を居住させること,甲が自宅不動産に居住することが困難になった場合には自宅不動産を売却すること,信託財産に属する金銭から甲に対し,生活費,介護費,医療費等を支払うことにより,甲の安定した生活を支援することを目的とする。

⑵ 信託行為

  甲と長男Aとの信託契約

⑶ 信託財産

  自宅不動産,金銭

⑷ 当事者等 

  委託者:甲

  当初受託者:長男A

  後継受託者:次男B

  受益者:甲

⑸ 信託期間・信託の終了事由

  甲が死亡するまで

(その他の事項)

 信託口口座の開設,公証人との調整,任意後見契約の締結,遺言の必要性,弁護士の継続的な関わり方 など




成年年齢の引下げ等を内容とする改正民法の施行日

 平成30年6月13日に成立し,同月20日に公布された,成年年齢の引下げを内容とする「民法の一部を改正する法律」は,平成34年(2022年)4月1日に施行されることになっています。

 ①民法4条が定めている成年年齢を20歳から18歳に引き下げること,②民法731条が定める女性の婚姻可能最低年齢を16歳から18歳に引き上げることが,民法自体の改正の主な内容です。




労災保険給付の不支給処分取消訴訟に対する会社側の補助参加の利益

 いわゆる労災事故と思われる事故が発生した場合、被災労働者が労災保険給付請求を先行させたうえで、支給決定後に会社を被告に安全配慮義務違反に基づく民事訴訟を提起することが行われることがあります。

 まず会社が、労災保険給付の不支給処分の取消訴訟に補助参加する目的としては、被災労働者が後続する民事訴訟で不利とならないように取消訴訟に参加することが考えられます。

 しかしながら、取消訴訟での業務起因性の判断が、安全配慮義務の判断に事実上の影響力もないと考えられるため、補助参加の利益はないと一般に考えられています。

 次に、労災保険のメリット制を前提として、業務起因性ありという判断で不支給処分が取消しされることにより保険料が上がることを防ぐ目的で補助参加するということが考えられます。

 この場合には、会社の法律上の利害関係に関わることは明らかであり、補助参加の利益があると考えられています。

 なお、メリット制の適用により引き上げられた保険料の認定処分について、会社側が保険料の引き上げの理由となった保険給付支給処分の違法性を争うことができるかについては、①原告適格の問題(行政事件訴訟法9条1項)と、②違法性の承継の有無が問題となりますが、東京地判平成29年1月31日及び東京高判平成29年9月21日は、①を肯定し、②については、保険給付処分が取り消されたり無効なものでない限りは違法の主張ができないと判断しています。




固定資産税における台帳課税主義

 固定資産税は、固定資産の所在する市町村が課税する税であり、固定資産の所有の事実に着目して課される財産税と位置付けられています。

 いわゆる台帳課税主義とは、固定資産課税台帳に登録されたところに従って課税されるルールで、縦覧の制度により課税の公平を確保する仕組みがあります。

 地方税法341条9号は、固定資産課税台帳の種類として、土地課税台帳、土地補充課税台帳、家屋課税台帳、家屋補充課税台帳、償却資産課税台帳を規定しています。

 




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