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株式の相続

 株式が複数の相続人に相続された場合,法定相続分に従って当然に分割されるのではなく,1株1株について共有に属することになります。

 会社法106条本文は,株式が共有に属するときに権利行使する際には,当該共有者は,株式について権利を行使する者を1人定めて会社に対し通知する必要があることを規定しています。

 権利行使者は,持ち分の価格の過半数で決定することになります(最高裁平成9年1月28日判決)。




遺留分の金銭債権化と事業承継との関係

 旧法の下では,遺留分減殺請求権を行使すると,当然に物権的効果が生じ,遺贈等の目的財産は遺留分権利者と遺贈等を受けた者との間で共有になることから,遺贈等の目的財産が事業用財産であった場合には,円滑な事業承継を困難にし,また,共有関係の解消をめぐって新たな紛争が生じるという問題が指摘されていました。

 改正法により金銭債権化され,遺留分侵害者が贈与等により取得した財産そのものの全部又は一部が遺留分権利者に移転することはなくなり,当該財産をめぐる法律関係の複雑化,事後的な権利変動が防止される点で,被相続人の意思に沿って,事業承継が進みやすいと考えられます。

 一方で,旧法では,遺留分侵害者としては,贈与等により取得した対象財産の減殺(共有化を含む。)を甘受するか,金銭で弁償するか(旧1041条項)の選択が可能であったが,改正法では,金銭支払い以外の選択の余地がない点が問題となる事案もあると考えられます。




遺産分割前に処分された遺産の取扱いについての相続法改正

 実務では,遺産分割は遺産分割の時に実際に存在する財産を共同相続人間で分配する手続きであるという考え方に従って,共同相続人の一人が遺産分割前に遺産の一部を処分した場合には,その時点で実際に存在する財産基準に遺産分割を行い,当該処分によって当該共同相続人が得た利益も遺産分割において考慮しないという取扱いがされていました。

 そうすると,当該処分をした者の最終的な取得額が当該処分を行わなかった場合と比べて大きくなり,他の共同相続人の遺産分割における取得額が小さくなるという計算上の不公平が生じ得ることとなり問題となっていました。

 例外的に,遺産分割の当事者の間で当該処分された財産を遺産分割の対象とする旨の合意が成立した場合等には,その財産を遺産分割の対象とする取扱いがされていました。

 民法906条の2は以下のとおり定め、上記のような不都合を解消するようにしています。

⑴ 共同相続人全員の同意によって,処分された財産が遺産の分割時に存在するものとみなすことができる(906条の2第1項)。

⑵ 共同相続人の一人が遺産分割前に遺産に属する財産を処分した場合には, 当該共同相続人の同意を得ることを要しない(906条の2第2項)。




配偶者居住権を換金する必要が生じた場合

 配偶者居住権が、一旦成立したあと、配偶者が障害等で施設に入所するなどして不要となる場合があり得ます。

 また,配偶者居住権を処分して入居資金を用意したい場合には,配偶者居住権を居住建物の所有者に買い取ってもらうか,同所有者の承諾を得たうえで,建物を第三者に賃貸する方法が一応考えられます。

 しかし,居住建物の所有者に対する買取請求権の制度は検討された結果,立法化されなかったため,建物所有者の上記承諾を得られるかは制度上不確定です。

 配偶者と居住建物の所有者との間で,予め,「配偶者が存続期間満了前に配偶者居住権を放棄するときは,居住建物の所有者が,配偶者に対して残存期間分の価値相当額の金銭を支払うこと」を合意しておくことが一応検討されているようですが,アドバイスを行う弁護士としては,以下の通達の存在を念頭に置く必要があります。

<通達 配偶者居住権が合意等により消滅した場合>

9-13の2 配偶者居住権が,被相続人から配偶者居住権を取得した配偶者と当該配偶者居住権の目的となっている建物の所有者との間の合意若しくは当該配偶者による配偶者居住権の放棄により消滅した場合又は民法第1032条第4項((建物所有者による消滅の意思表示))の規定により消滅した場合において,当該建物の所有者又は当該建物の敷地の用に供される土地(土地の上に存する権利を含む。)の所有者(以下9―13の2において「建物等所有者」という。)が,対価を支払わなかったとき,又は著しく低い価額の対価を支払ったときは,原則として,当該建物等所有者が,その消滅直前に,当該配偶者が有していた当該配偶者居住権の価額に相当する利益又は当該土地を当該配偶者居住権に基づき使用する権利の価額に相当する利益に相当する金額(対価の支払があった場合には,その価額を控除した金額)を,当該配偶者から贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。(令元課資2-10追加)

(注) 民法第1036条((使用貸借及び賃貸借の規定の準用))において準用する同法第597条第1項及び第3項((期間満了及び借主の死亡による使用貸借の終了))並びに第616条の2((賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了))の規定により配偶者居住権が消滅した場合には,上記の取り扱いはないことに留意する。




相続欠格の該当と宥恕

 民法891条は、被相続人の意思に関係なく一定の事由がある場合に法律上当然に相続権をはく奪する相続欠格を定めています。

 相続欠格制度は公益的な制度と位置付けられており、被相続人の意思によって欠格の効果を消滅させる規定は民法上は定められていません。

 しかし、広島家裁呉支部平成22年10月5日は、同順位の推定相続人の殺害を理由とする欠格者について、被相続人が欠格者を宥恕して相続資格を認める旨の意思表示を推認して相続資格を肯定する審判を出しています。

 廃除の取消しでさえ家庭裁判所の手続きを要する民法の規定の存在等を理由に反対する見解も有力です。




再転相続の熟慮期間の起算点についての最高裁判例

 再転相続の熟慮期間についての民法916条の「その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」の解釈について、最高裁令和元年8月9日判決は、「相続の承認又は放棄をしないで死亡した者の相続人が,当該死亡した者からの相続により,当該死亡した者が承認又は放棄をしなかった相続における相続人としての地位を,自己が承継した事実を知った時をいうものと解すべきである。」と判示しました。




預貯金債権の遺産分割前の払戻制度と仮分割手続き

 平成28年12月19日最高裁大法廷決定において,相続された預貯金債権は,遺産分割の対象財産に含まれるとの判断がされました。

 遺産分割が終了するまでの間は,共同相続人全員の同意を得なければ預貯金の払戻しができないこととなり,葬儀費用や相続債務の弁済などで,被相続人が有していた預貯金を遺産分割前に払い戻す必要がある場合の対策が議論されるようになりました。

法改正により,①各共同相続人が,遺産分割前に裁判所の判断を経ることなく一定の範囲で遺産に属する預貯金債権を行使することができる制度と,仮分割の仮処分の要件を緩和することとされました。

 ① 遺産の分割前における預貯金債権の行使(民法909条の2)

(1) 単独で払戻ができる額 =(相続開始時の預貯金債権の額)×3分の1×(当該払戻しを求める共同相続人の法定相続分)ただし,同一の金融機関に対する権利行使は,150万円が限度です。

(2) 払戻しがされた預貯金については,その権利行使をした共同相続人が遺産の一部分割により取得したものとみなされ, 払戻した預貯金の額が,払戻者の具体的相続分を超過していた場合には, 当該払戻者は,遺産分割手続において他の相続人に対し,超過分を代償金として支払う義務を負います。

 3 家事事件手続法の保全処分の要件緩和(家事事件手続法200条3項)

 (1) 要件

 ア 遺産分割の調停又は審判の本案が,家庭裁判所に係属していること

 イ 遺産に属する預貯金債権を行使する必要があること

  他の共同相続人の利益を害しないこと(相当性)

 (2) 効果

 ・ 預貯金債権を申立人に仮に取得させることになります。

 ・ 本案の遺産分割との関係では,改めて仮分割された預貯金債権を含めて遺産分割の調停又は審判がなされることになります。




配偶者短期居住権の存続期間

 配偶者短期居住権は、使用借権類似の法定の債権と解されています。

 改正民法1037条1項1号は、配偶者短期居住権の終期について、「遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から6箇月を経過する日のいずれか遅い日」と定めています。

 後者については、早期に遺産分割協議が成立しうるときに、配偶者が急な転居に対応できないことのみを理由に遺産分割協議の成立を先延ばしにしないための規定と位置付けられています。

 中間試案補足説明では、「配偶者が意図的に遺産分割協議を引き延ばしているような場合については、権利濫用等の一般条項による可決もあり得る」との指摘がされています。




遺言執行者の特定財産承継遺言に基づく対抗要件具備の権限

 旧法下での相続させる旨の遺言は、改正法では、「遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言」と定義されたうえで、受益相続人が法定相続分を超える部分についての対抗要件を備えるために必要な行為をすることも遺言執行者の権限に含まれることが規定されました(1014条2項)。

 不動産登記実務では、相続させる旨の遺言では、不動産登記法63条2項による受益相続人が単独で登記申請できることになっていますが、最高裁平成11年12月16日判決が、相続させる旨の遺言の事案で、受益相続人以外の相続人が自己への所有権移転登記を経由しているときに、遺言執行者が当該移転登記の抹消登記手続きのほか、受益相続人への真正な登記名義の回復を原因とする登記請求権を有すると判示していることも参考にされたものです。




SFCGの最後配当

 ついにSFCGによる最後配当が行われ,過払金回収についての代理人業務が終了しました。

 10年以上の付き合いになる依頼者さんのファイルは,かなり色あせています。




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