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女性の6か月の再婚禁止期間の廃止(令和4年法律102号)

 民法733条1項は、女性は離婚後6カ月を経過した後でないと再婚できないと定めていました(いわゆる、「待婚期間」「再婚禁止期間」と呼ばれています)。

 民法772条1項、2項が、妻が結婚中に妊娠した子は、夫の子と推定し、さらに、結婚した日から200日以降、または離婚後300日以内に生まれた子は、その結婚中に妊娠したものであると、女性が生んだ子の父親が誰かを推定していることから、女性が再婚後間もなく生んだ子の父親が誰かを巡って争いになることを防ぐためというのがその理由とされていました。

 しかし、再婚禁止期間が父親が誰かを推定するためであれば、6カ月(180日)は必要以上に長く、離婚後100日経過してから再婚すれば、離婚した前夫と再婚後の夫で、父親の推定は重ならないことは明らかであることは長らく指摘されていました。

 待婚期間の制度自体が違憲であることが争われた最高裁平成27年12月16日判決が100日を超える再婚禁止期間は違憲との判決を下し、再婚禁止間は6カ月から100日に改正されるとともに、離婚したときに妊娠していないこと、離婚の後に出産した場合には、離婚後すぐにでも再婚できることになりました(民法733条2項)。

 さらに、再婚禁止期間の規定自体が削除されました。




遺贈による所有権移転登記の簡略化について

 所有者不明土地が発生する原因を解消するための方策として、相続登記の申請が義務化されました(施行は2024年4月1日から)。

 それに先立ち、改正不動産登記法63条3項が、今年の4月から遺贈による所有権の移転登記手続きの簡略化を規定しています。

 相続人が受遺者である場合に、遺贈を原因とする所有権移転登記について、登記権利者である受遺者単独での登記申請が可能となりました。

 従来は、受遺者が相続人であっても、登記義務者である相続人全員か遺言執行者との共同申請が要求されていたことの負担解消が図られたことになります。




運転免許に関する意見の聴取(聴聞)手続き

 愛知県警本部では、毎週木曜日午前9時から開催されることが決まっており、原則として受付の順に、随時、カーテンで仕切られた部屋に呼ばれ、「聴聞官」と、主にメモをとったり点数制度を説明する担当の方により行われます。

 愛知県警本部の最寄駅は、最近名前の変わった「名古屋城駅」です。

 交通違反の事実や事故の事実、被害者がいる場合には被害者の回復状況や示談の進捗、対象者の意見や有利な証拠の提出を行うことが出来ます。

 事前に弁護士が補佐人や代理人の立場で出席することを伝えておけば、それなりの時間を融通する印象です。

 聴聞の結果を公安委員会に報告し、お昼までには、「運転免許取消処分書」の交付による正式に処分が通知されます。

 正式な処分が通知されるまでの時間は、外出することもできます。

 処分の通知がなされる直前に、免許の返納を行います。 

 処分結果に不服がある場合には、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内に公安委員会に審査請求をすることが出来ますし、知った日の翌日から起算して6か月以内に県を被告にして取消訴訟をすることもできます。

 この取消し訴訟で県を代表するのは公安委員会です。

 なお、審査請求や取消訴訟をしても、処分の効力はそのままであることから、効力を停止したい場合には、執行停止の申立てを行い認められる必要があります。

 刑事手続きとは別個独立した手続きではあるものの、基本的には前提となる事実関係をもとに法的処分が行われるものであることから、もう片方の手続きの進捗状況を気にはするようであり、聴聞官から刑事手続きの進行状況を聞かれたり、起訴するか否かを決める検察官から聴聞手続きの進捗や結果を聞かれることが通常です。




通訳が必要な証人尋問の留意点

 証人尋問では、各証人に割り振られた時間内に行うことが求められます。

 また、原則として、質問に対しては短く回答することが求められ、回答が質問内容と対応していなかったり、回答が長い場合には、途中で、主に裁判官から制止されることもあります。

 通訳が必要な証人の場合、証人の回答は外国語でなされることから、どのような内容なのか、どれくらいで終わるのか等の予測ができません。

 当然ながら、証人の回答が長ければ長いほど、通訳による日本語の回答も長くなることになります。

 尋問を行う弁護士には、より的確な尋問が求められます。




弁護士ドットコムの裁判官データベース

 最近運用が開始され、弁護士の間では少し話題になっている弁護士ドットコムが運用を開始した「裁判官データベース」。

 「裁判官をもっと身近に、司法をもっと身近に」という記載もあり、訴訟を取り扱う一弁護士としても興味本位に見てみました。

 まだまだ、書き込みは少ないですが(サイトには、「ポジティブなものネガティブなものともに歓迎いたします。」との記載あり。)、実際に当たったことのある(現在係属中を含む。)裁判官の名前が複数ありました。

 例えば、争点整理は強引だが記録をよく読んでいない、とか、心証開示後に真逆の判決を下し高裁で覆ったことがある等の書き込みがあれば、依頼者にどこまで共有するべきか悩ましい問題にもなりますし、依頼者との方針を決める際には無視できない要素となりそうです。




女性の再婚禁止期間の廃止

 令和4年12月10日、民法の嫡出推定制度の見直し等を内容とする民法等の一部を改正する法律(令和4年法律第102号。)が成立し、女性の再婚禁止期間が廃止されました。

 令和6年4月1日から施行されます。

 もともと民法733条1項は、女性の最近禁止期間を6ヵ月と定めていました。

 平成8年のいわゆる民法改正要綱において100日に短縮する案がしめされていたところ、女性の再婚禁止期間の合憲性が問題となった最高裁平成27年12月16日大法廷判決は、平成20年頃までには、100日を超える期間を定める部分は憲法に違反する旨判断していました。

 女性の再婚禁止期間を定めること自体が違憲である旨の意見も付されていました。

 今回、上記のとおり、女性の再婚禁止期間の定め自体が廃止されたことの意義は大きいですが、併せて、婚姻の解消等の日から300日以内に子が生まれた場合であっても、母が前夫以外の男性と再婚した後に生まれた子は、再婚後の夫の子と推定すること、夫のみに認められていた嫡出否認権を、子及び母にも認めたこと、嫡出否認の訴えの出訴期間を1年から3年に伸ばすこと、認知の無効の訴えの規律が改正されるなどの関連する大きな改正がなされています。

 弁護士としては、正確に理解しておく必要がありますし、立法論として、同性婚や、(選択的)夫婦別姓、共同親権の議論などの動向も気になるところです。

 夫婦別姓に関する最高裁令和3年6月23日大法廷判決の宮崎裕子裁判官と宇賀克也裁判官の反対意見では、「婚姻により当事者の一方のみが生来の氏名に関する人格的利益を享受し続けるのに対し、他方は自分自身についてのかかる人格的利益を享受できず、かつ、かかる人格的利益の喪失による負担を負い続ける状況になる」という指摘は重要です。




裁判所への出廷

 コロナ禍の影響と、裁判所によるWEBによる審理の推進(地方裁判所では、TEAMSを利用しています。なんらかの原因により接続が上手くいかない場合には、急遽電話をつないで審理を行うということもありますが、最近は減ってきた印象です。)により、通常の裁判手続きでは、弁護士が実際に裁判所に出廷することは少なくなりました。

 以前は、本庁ではなく、支部ではWEBによる審理に対応していない時期もありましたが、最近はそのようなことはなくなりました。

 私の経験でも、金沢地裁や東京地裁など、名古屋市に事務所のある弁護士にとって遠方の裁判所に係属した事件でも、一度も実際に出廷することなく終了した事件がありますが、現状では、尋問の期日はやはり、出廷する必要があり、遠方の裁判所でも実際に出廷する必要があります。

 なお、労働審判事件では、以前からWEBによる審理も実際行われており(出廷するか、WEBにより参加するかは、当事者の希望が原則認められています。)、WEBによる労働審判も経験しました。

 これまでは、WEBでは、厳密には期日は開かれず、書面による準備手続きが実施されているという扱いであったことから、準備書面の陳述をすることができず、尋問の期日に口頭弁論を実施し、陳述や証拠調べを行われていましたが、民事訴訟法の改正により、WEBでも準備的口頭弁論を実施することが可能になりました。

 以上のことは民事事件であり、公判請求された刑事事件の場合には、被告人を弁護する弁護人として、コロナ禍においても裁判所に出廷することが必要でした。

 名古屋地裁に出廷すると、愛知県弁護士会の図書室に行って本や法律雑誌を眺めたり、名法書店に寄って法律書籍を購入することになりますし、久しぶりに同期の弁護士に会ったりすることもあります。

 名古屋地裁では、弁護士以外の一般の方が裁判所に入る際には、手荷物検査が必要ですが、弁護士も弁護士バッチが弁護士の身分証明書がないと、手荷物検査を受ける必要があり、期日ぎりぎりに到着した場合はあせることになります。




脳・心臓疾患を伴う過労死の労災認定

1 脳・心臓疾患を伴う過労死について、「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」(平成13・12・12基発1063号)を改正した、「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」(令和3年9月14日基発0914第1号)が現在適用されています。

2 対象疾病は以下のとおりとされています。

⑴ 脳血管疾患

ア 脳内出血(脳出血)

イ くも膜下出血

ウ 脳梗塞

エ 高血圧性脳症

⑵ 虚血性心疾患等

ア 心筋梗塞

イ 狭心症

ウ 心停止(心臓性突発死を含む。)

エ 重篤な心不全

オ 大動脈解離

3 認定要件として、原則として、以下の⑴から⑶の業務による明らかな過重負荷を受けたことにより上記2の対象疾病を発症した場合には、業務に起因する疾病として扱うものとされています。

⑴ 発症前の長期間にわたって、著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務(以下「長期間の過重業務」という。)に就労したこと ※長期間とは、6か月を指します。疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と位置付けられる労働時間について、発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できるとされています。

⑵ 発症に近接した時期において、特に過重な業務(以下「短期間の過重業務」という。)に就労したこと ※短期間とは、1週間を指します。労働時間について具体的な定めはありません。

⑶ 発症直前から前日までの間において、発生状態を時間的及び場所的に明確にし得る異常な出来事(以下「異常な出来事」という。)に遭遇したこと

4 相談にのる弁護士としては、その他の部分の認定基準の理解と、取消訴訟まで含めた的確な見通しを行うことが重要と考えられます。

 一般に、行政の認定基準は講学上の通達であり、裁判所の判断を拘束しないとされており、例えば労働の過重性については時間数という量的なものではなく質的な負荷要因も十分に考慮する傾向があり、実際、認定基準では過労死と認定されない事案について、裁判所により救済される場合もあると指摘されています。




施設送致申請(少年法26条の4第1項)

 少年法26条の4は、保護観察を付された場合、保護観察官等による指示に反し、遵守事項に違反することを繰り返す場合について、少年院送致等の施設内処遇を言い渡すことが出来る旨定めています。

 保護観察とは、社会内処遇の一種で、少年を施設に収容することなく通常の生活を営ませながら改善更生の処遇を行うもので、少年の居住地を管轄する保護観察所が行うことが、更生保護法に定められています。

 なお、少年法には、家庭裁判所で審判が開始された後、少年の終局処分を一定期間留保して、調査官に少年を観察させる試験観察という制度もあります。

 具体的な要件は、①保護観察所長から遵守事項を遵守するよう警告を発せられたにもかかわらず、遵守事項を遵守せず、②その程度が重いときに、保護観察所長が、家庭裁判所に対し、本人を施設に送致する決定をするよう求める施設送致申請を行い(更生保護法67条2項)、③家庭裁判所が保護観察の保護処分によっては本人の改善及び更生を図ることが出来ないと認めることです。

 問題となる遵守事項として、例えば、「保護観察に付されたときに保護観察所の長に届け出た住所又は転居することについて保護観察所の長から許可を得た住居に居住すること」があります。

 保護観察の意味に加えて、付添人として活動する弁護士からも、少年に丁寧に説明するべき条項です。




騙取金による弁済が不当利得となる場合

 いわゆる騙取金による弁済について、被騙取者による不当利得返還請求が認められるかについては、最高裁昭和49年9月26日判決が、不当利得制度一般に加えて、以下のとおり要件を判示しています。

 「およそ不当利得の制度は、ある人の財産的利得が法律上の原因ないし正当な理由を欠く場合に、法律が、公平の観念に基づいて、利得者にその利得の返還義務を負担させるものであるが、いま甲が、乙から金銭を騙取又は横領して、その金銭で自己の債権者丙に対する債務を弁済した場合に、乙の丙に対する不当利得返還請求が認められるかどうかについて考えるに、騙取又は横領された金銭の所有権が丙に移転するまでの間そのまま乙の手中にとどまる場合にだけ、乙の損失と丙の利得との間に因果関係があるとなすべきではなく、甲が騙取又は横領した金銭をそのまま丙の利益に使用しようと、あるいはこれを自己の金銭と混同させ又は両替し、あるいは銀行に預入れ、あるいはその一部を他の目的のため費消した後その費消した分を別途工面した金銭によつて補填する等してから、丙のために使用しようと、社会通念上乙の金銭で丙の利益をはかつたと認められるだけの連結がある場合には、なお不当利得の成立に必要な因果関係があるものと解すべきであり、また、丙が甲から右の金銭を受領するにつき悪意又は重大な過失がある場合には、丙の右金銭の取得は、被騙取者又は被横領者たる乙に対する関係においては、法律上の原因がなく、不当利得となるものと解するのが相当である。」

 特に、悪意・重過失の理論的な位置づけについて学説上の議論が多くあるところですが、弁護士実務上は、悪意重過失の主張立証が重要となります。




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