要件事実マニュアル(第6版)
名古屋地裁の期日に出頭する際には、愛知県弁護士会にある名法書店に寄るのがここ数年のルーティンになっています。
本日は、10時からの期日と10時30分からの期日の間に、名法書店に寄ったところ、岡口基一裁判官の要件事実マニュアル全5巻が並んでいました。
改訂されるたびに購入していますが(最近も、同書に掲載されていた裁判例を引用した準備書面を提出したところです。)、今回の改訂は、債権法の改正以外にも、第5版以降の多くの法改正を反映したものになっているようです。
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名古屋地裁の期日に出頭する際には、愛知県弁護士会にある名法書店に寄るのがここ数年のルーティンになっています。
本日は、10時からの期日と10時30分からの期日の間に、名法書店に寄ったところ、岡口基一裁判官の要件事実マニュアル全5巻が並んでいました。
改訂されるたびに購入していますが(最近も、同書に掲載されていた裁判例を引用した準備書面を提出したところです。)、今回の改訂は、債権法の改正以外にも、第5版以降の多くの法改正を反映したものになっているようです。
刑の一部執行猶予制度は平成28年6月から施行されています。
刑の一部執行猶予制度は、言い渡された実刑期間のうち、一定期間を執行して施設内処遇した上で、残りの期間の執行を猶予し、相応の期間執行猶予の取消しによる心理的強制の下で社会内処遇により更生をうながすことによりその者の再犯防止、改善更生を図る制度とされています。
実刑と(全部)執行猶予の中間ではなく、実刑の一種という理解が正当ともされています。
刑法27条の2第1項は、「再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるとき」と定めていますが、①施設内処遇及び仮釈放のみでは再犯の抑止が困難な被告人について、②仮釈放の期間を超えて行う再犯抑止に有用な社会内処遇が具体的に想定でき、③その実効性期待できる場合に、必要性・相当性を肯定できるとされています。
弁護士としては、依頼者である被告人の意向も踏まえつつ、法律上は全部執行猶予を付すことができる場合でも、一部執行猶予を意識した弁護活動が求められる場合があるといえるでしょう。
所得税法157条1項で規定されているいわゆる同族会社の行為計算否認規定の適用は、経済的、実質的見地において当該行為又は計算が合理的経済人の行為として不合理、不自然なものと認められるか否かが基準とされ、①異常もしくは変則的か、②租税回避以外に正当で合理的な理由もしくは事業目的がないかという観点から、所得税の負担が不当に減少されていないかが判断されることと一般に考えられています。
同規定が適用された場合に,他の税目,例えば法人税法上の課税の調整がされるべき場合については,それを調整する規定として平成18年に所得税法157条3項が定められたと考えられているようです。
なお,同規定の適用が問題と一応なった裁判例として,大阪高判平成30年11月2日TAINS Z888‐2207、大阪地判平成30年4月19日TAINS Z888‐2201があります。
厳密には,訴訟段階では,必要経費該当性を否定し,同族会社の行為計算否認規定の適用の解釈論及び具体的なあてはめまでは検討されていません。
ほかに,理由付記が不十分である旨の納税者側の主張もありましたが,認められていません。
上記裁判の納税者側の代理人弁護士には,同志社大学の占部教授がついており,同教授の関連する最近の論考として,「所得税法における必要経費の概念と判断基準 : 直接関連性要件と必要性要件はどのように用いられているか 」があります。
最高裁昭和55年12月17日決定は,検察官による公訴権の逸脱・濫用について,以下のとおり述べています。
「検察官は,現行法制の下では,公訴の提起をするかしないかについて広範な裁量権を認められているのであって,公訴の提起が検察官の裁量権の逸脱によるものであるからといって直ちに無効となるものでないことは明らかである。たしかに,右裁量権の行使については種々の考慮事項が刑訴法に列挙されていること(刑訴法248条),検察官は公益の代表者として公訴権を行使すべきものとされていること(検察庁法4条),さらに,刑訴法上の権限は公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ誠実にこれを行使すべく濫用にわたってはならないものとされていること(刑訴法1条,刑訴規則1条2項)などを総合して考えると,検察官の裁量権の逸脱が公訴の提起を無効ならしめる場合のありうることを否定することはできないが,それはたとえば公訴の提起自体が職務犯罪を構成するような極限的な場合に限られるものというべきである。」
公訴権濫用については,①嫌疑なき起訴,②訴追裁量権の逸脱,③違法捜査に基づく起訴の3類型に分けて議論されるのが一般的ですが,②の類型について,「差別的起訴」という言葉で表現して研究する論文として,黒川享子「差別的起訴について」があり,同論文では,近年の差別的不起訴の主張がほとんど退けられている一因として差別的起訴の立証方法が確立されていないという分析をしています。
また同論文では,アメリカの議論を参考に,当該起訴が平等保護条項に違反していないか否かという訴訟条件の問題であることを明確にするべきこと等を主張されています。
弁護士が刑事事件の弁護人として,公訴提起を無効と主張するべき場面は多くはありませんが,理論的な整理をしておく意義はあると考えられます。
内定の法的性質を始期付解約権留保付労働契約の成立と解釈することが実務上通説となっており,事案によって「就労始期付」と「効力発生始期付」に分けて考えるべき場合があると考えられていますが,両者を区別する基準が必ずしも判然としないこと等により,判断を二分化することについては疑問を呈する立場もあります。
就労始期付と判断される場合には,労働契約上の拘束関係は内定時から生じるため,就労を前提としない範囲,例えば,企業の名誉・信用の保持,秘密保持等については,就業規則の適用や業務命令による義務付けが肯定されやすくなります。
一方,効力発生始期付と判断される場合には,入社日までは労働契約の効力は発生していないので,就業規則の適用や業務命令による義務付けは否定的と解されます。