名古屋市の弁護士 森田清則(愛知県弁護士会)トップ >>


ようこそ,弁護士 森田清則のブログへ

私が所属する「弁護士法人 心」のサイトはこちらです。


注文者の破産手続開始決定と請負人の解除権

 現行民法642条は,注文者が破産手続開始決定を受けた場合の請負人の有する解除権の行使について,文言上制限をしていないことから,完成後であっても行使できると考えられていました。

 しかし,改正民法642条1項ただし書は仕事の完成後は,損害の拡大を防止するために契約の解除を認める必要はないこと等を考慮し,請負人は注文者の破産手続開始による解除をすることができない旨定めています。




相殺の充当の規定

 現民法512条は相殺の充当について,単純に弁済の充当の規定を準用していますが(488条から491条),民法506条に定められているとおり相殺には遡及効がある点で弁済とは異なる考慮が必要と考えられていました。

 そこで改正民法512条は,債権者が債務者に有している1個または数個の債権と債権者が債務者に負担している1個または数個の債務について,⑴充当の順序に関する合意をしたときはそれによって消滅すること,⑵合意をしないときは,債権者の債権と負担する債務は相殺適状となった時期の順序に従って相殺によって消滅すること(同条1項),相殺適状の時期が同じ元本債権相互間と利息・費用債権の充当について,相当する弁済の充当の規定を準用しています(同条2項)。




就業規則に定められた解雇事由は限定列挙と考えるべきか

 就業規則の解雇条項は解雇事由を限定列挙したものか、例示にすぎないかについては学説上の争いがあるようです。

 労働基準法89条3号により解雇事由の定めが就業規則の絶対的必要的記載事項とされたことが、限定列挙説の根拠と主張されることもありますが、実務上は、解雇事由として包括的な条項が規定されていることが多く、実際上の違いはないと一般に考えられています。




年次有給休暇の時季指定義務

 労働基準法が改正され,平成31年4月から,年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して,年次有給休暇の日数のうち年5日については,使用者が時季を指定して取得させることが必要となりました。

 使用者は,時季指定にあたっては,労働者の意見を聴取し,その意見を尊重するよう努めなければならず,労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し,3年間保存することも求められます。

 なお,年次有給休暇を5日以上取得済みの労働者や計画的付与により5日以上付与された労働者に対しては,使用者による時季指定は不要であり,労働者が自ら申し出て取得した年次有給休暇の日数,計画的付与により与えられた日数については,5日から控除することができることになります。

 これまでの有給休暇の取得状況などをふまえ,具体的な対策が求められることになります。




租税手続きにおける錯誤についての最高裁の考え方

 9月25日に,「給与所得に係る源泉所得税の納税告知処分について,法定納期限が経過したという一事をもって,その納付義務を成立させる支払の原因となる行為の錯誤無効を主張してその適否を争うことが許されないとはいえない」という判示事項の最高裁判例が出されています(最高裁ホームページ)。

 これは,原審の広島高裁が,「申告納税方式の下では,同方式における納税義務の成立後に,安易に納税義務の発生の原因となる法律行為の錯誤無効を認めて納税義務を免れさせることは,納税者間の公平を害し,租税法律関係を不安定にすることからすれば,法定申告期限を経過した後に当該法律行為の錯誤無効を主張することは許されないと解される。源泉徴収制度の下においても,源泉徴収義務者が自主的に法定納期限までに源泉所得税を納付する点では申告納税方式と異なるところはなく,かえって,源泉徴収制度 は他の租税債権債務関係よりも早期の安定が予定された制度であるといえることか らすれば,法定納期限の経過後に源泉所得税の納付義務の発生原因たる法律行為につき錯誤無効の主張をすることは許されないと解すべきである。 」と判示したことを受けてのものです。

 しかしながら,最高裁は結論として,「上告人は,本件債務免除が錯誤により無効である旨の主張をするものの,前記2(5)の納税告知処分が行われた時点までに,本件債務免除により生じた経済的成果がその無効であることに基因して失われた旨の主張をしておらず,したがって,上告人の主張をもってしては, 本件各部分が違法であるということはできない。そうすると,本件各部分が適法であるとした原審の判断は,結論において是認することができる。論旨は,結局,採 用することができない。 」と判示して,納税者の上告を棄却しています。

 源泉徴収義務について,納税者に厳しい判断がなされたという評価も可能であり,弁護士・税理士の立場でも検討が必要な判例といえます。




消費税率引上げとそれに伴う対応に関する総理発言について(会長コメント)

 日税連会長のコメントが掲載されています(日本税理士会連合会ホームページ)。

 軽減税率については,「その円滑な実施に向け適切に対応してまいります。あわせて、税理士法に規定された税制及び税務行政に対する建議権に基づき、事業者に負担の少ない税制の構築を目指し、引き続き提言してまいります。」と記載されています。

 軽減税率(「複数」税率と表現したほうが,より制度の本質を表現できると思いますが)の導入について,税理士会として賛成しているように読めますが,反対している税理士も多い印象です。




他人のコンピューターを利用したビットコインのマイニング

 判例時報2379号126頁に,仲道教授のドイツ連邦通常裁判所判決の評釈が掲載されています。

 『日本における同種事案の取扱い』の項目で,日本での処理(可罰性と没収・追徴)の検討がなされています。




社内での不倫を理由に懲戒解雇が認められた裁判例

 社内不倫は,基本的な発想としては私生活上の行為と位置づけられるため,原則として懲戒の理由とはならないと考えられます。

 しかしながら,企業秩序に直接関連し,企業秩序を乱すに至ってしまった場合には,懲戒解雇も有効と考えられています。

 白石哲編著・労働関係訴訟の実務〔第2版〕400頁には,社内不倫を理由とする懲戒解雇を有効とした裁判例が紹介されています。




輸出免税の趣旨と仕向地主義

 消費税法7条は、輸出される物品や国外で提供されるサービスの消費税を免税する、いわゆる輸出免税の制度を規定しています。

 消費税は消費者が負担するべきであることから国内で消費されない輸出される物品に課税する根拠がないこと、生産地国と消費地国の双方での課税(二重課税)を排除し輸入国である仕向地の製品と同じ条件での競争を可能にするという国際的中立性を確保する必要があると考えれば、国内で発生した消費税の負担の調整及び税抜きでの輸出という国境税調整が必要となります。

 消費税の税額計算において、輸出免税の対象となる課税資産の譲渡等の対価の額は課税標準に含まれない(消費税法45条、同法7条)が、輸出免税の対象となる課税資産の譲渡等のための仕入税額は仕入税額控除の対象とする(消費税法30条)、いわゆるゼロ税率の採用が求められることになります。

 一方で、源泉地主義のもとでは、輸入品と国産品との価格競争力が各国の税率に左右されることになることから、中立性に疑問が残ることになります。

 結論として、消費税法は、物品やサービスの輸入国(仕向地国)に課税権があるという仕向地主義を採用していることなります。




裁判官に対する懲戒申立て事件全文

 最高裁ホームページに掲載されています。

 裁判所法49条の「品位を辱める行状」について,「職務上の行為であると,純然たる私的行為であるとを問わず,およそ裁判官に対する国民の信頼を損ね,又は裁判の公正を疑わせるような言動をい うものと解するのが相当である。」と判示し,結論として戒告を認めています。 

 表現の自由との関係では,「憲法上の表現の自由の保障は裁判官にも及び,裁判官も一市民としてその自由を有することは当然であるが,被申立人の上記行為は,表現の自由として裁判官に許容される限度を逸脱したものといわざるを得ないものであって,これが懲戒の対象となることは明らかである。

 また,そうである以上,本件申立てが,被申立人にツイッターにおける投稿をやめさせる手段として,あるいは被申立人がツイッターにおける投稿をやめることを誓約しなかったことを理由にされた不当なものということはできない。

 そして,被申立人は,本件ツイートを行う以前に,本件アカウントにおける投稿によって裁判官の品位と裁判所に対する国民の信頼を傷つけたなどとして2度にわたる厳重注意を受けており,取り分け2度目の厳重注意は,訴訟に関係した私人の感情を傷つけるものである点で本件と類似する行為に対するものであった上,本件ツイートの僅か2か月前であったこと,当該厳重注意を受ける前の事情聴取の際, 被申立人は,訴訟の関係者を傷つけたことについて深く反省しているなどと述べていたことにも照らすと,そのような経緯があるにもかかわらず,本件ツイートに及んだ被申立人の行為は,強く非難されるべきものというほかない。」と判示しています。

 同じく補足意見は,「ちなみに,現役裁判官が,ツイッターにせよ何にせよ,SNSその他の表現手段によってその思うところを表現することは,憲法の保障する表現の自由によって保護されるべきであることは,いうまでもない。

 しかしながら,裁判官はその職責上,品位を保持し,裁判については公正中立の立場で臨むことなどによって,国民の信頼を得ることが何よりも求められている。

 本件のように,裁判官であることが広く知られている状況の下で表現行為を行う場合には,そのような国民の信頼を損なうものとならないよう,その内容,表現の選択において,取り分け自己を律するべきであると考える。

 そして,そのような意味での一定の節度あるいは限度というものはあるものの, 裁判官も,一国民として自由な表現を行うということ自体は制限されていないのであるから,本件のような事例によって一国民としての裁判官の発信が無用に萎縮することのないように,念のため申し添える次第である。」と述べています。




前へ 56789101112131415