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相続させる遺言と登記手続きに関する遺言執行者の権限

 相続開始時に被相続人名義となっている不動産について,相続させる旨の遺言がある場合には,遺言執行の余地がないのが原則とされます。

 このことは,特定の財産を特定の相続人に相続させる旨の遺言の効力に関する最高裁判例が判示するところです。

 しかし,最高裁平成11年12月16日判決は,包括的に相続させる旨の遺言が取り消されたのちに,新たに特定の不動産を特定の相続人に相続させる旨の遺言がなされたにもかかわらず,取り消された遺言に基づいて所有権移転登記がなされた事案で,相続させる旨の遺言の場合に遺言執行者に登記の権限がある旨判示しています。




弁護士会照会報告拒絶に対する報告義務確認請求訴訟の最高裁判決についての会長談話

 愛知県弁護士会が当事者となっていた,弁護士会照会に関する最高裁判決を受けて,会長声明が出されています(愛知県弁護士会ホームページ)。

 弁護士会照会実務に対する今回の最高裁判例の事実上の影響は,特に回答する側の判断に対して,あるような気もします。




弁護士費用の請求

 弁護士費用を相手方に請求することができるかという質問を受けることがあります。

 最高裁昭和44年2月27日判決は、不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を追行するための弁護士費用の内、一定の範囲(事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる範囲)で不法行為と相当因果関係のある損害として認めました。

 また、最高裁平成24年2月24日判決は、労働者が使用者に対して安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求訴訟を追行した場合の弁護士費用の一部について請求を認めました。

 弁護士費用の賠償が認められるとすると、弁護士費用敗訴者負担制度を採用していない現行制度と矛盾する側面があるのではないか、被告が勝訴した場合には相手方に弁護士費用を負担させる手段がないにもかかわらず原告が勝訴した場合にだけ弁護士費用の一部を相手方に負担させることができる点に対する違和感なども指摘されているところです。

 なお、弁護士費用の請求が認められる場合にも、認容額の1割程度ということが多く、ご負担いただいた弁護士費用の全額の請求が認められるわけではありません。




民事信託と遺留分について判断した裁判例(東京地裁平成30年9月12日判決)

 一部で話題になっていますが、東京地裁平成30年9月12日判決は、民事信託と遺留分の関係について判断しています。

 争点は多岐にわたりますが、民事信託との関係では、本件信託契約時の委託者の意思能力の有無、本件信託が公序良俗に反するか、本件信託が有効な場合に遺留分減殺の対象は信託財産か受益権か等が判断されています。

 最も議論を呼びそうなのが、本件信託契約の一部を公序良俗に反して無効であることを導くに際し、他の部分では「仮に遺留分が侵害されているならばそれを行使して利益の回復を図ることができるのであるから、・・・本件信託が遺留分逃れのものであるということはできない。」と指摘しつつ、「民法上認められた遺留分減殺請求権の行使を妨げる内容の信託が許されることになるものではない。」と指摘している点です。

 いずれにせよ信託契約を提案する弁護士としては、検討が必須の裁判例といえます。




遺産分割前の預貯金債権の行使

 改正民法909条の2は、遺産の分割前に家庭裁判所の判断を経ずに預貯金の払い戻しを認める制度を新設しました。

 払い戻しできる金額は、遺産に属する預貯金債権のうち、相続開始時の債権額の3分の1に、共同相続人の法定相続分を乗じた金額について権利行使できると規定しています。

 公平な遺産分割を実現するために、預貯金債権を遺産分割の対象とする最高裁平成28年12月19日決定との関係で、仮分割の仮処分(家事事件手続法200条3項)では対応できない場合において、払戻し可能な金額に合理的な限定を設定したものと考えられます。

 仮分割の仮処分では、権利行使の必要性、他の共同相続人の利益を害しないことに加え、遺産分割の調停または審判の申立てをしていることが必要となります。

 民法909条の2は、標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする旨規定していますが、150万円と定められたようです(民法909条の2に規定する法務省令で定める額を定める法務省令)。




交通事故刑事弁護士費用保険の限度額

 損害保険ジャパン日本興亜株式会社から交通事故刑事弁護士費用保険が発売されることが,日弁連新聞で紹介されています。

 危険運転致死傷罪などの故意・重過失がある場合を除く事案について適用があるようです。

 報酬金の限度額では,不起訴の場合20万円,無罪の場合60万円という限度額が定められています。

 着手金・報酬金以外に,接見日当その他日当,実費が保険金支払いの対象となり,上限の150万円を超える弁護士費用は依頼者の負担とのことです。




東京大学法科大学院ローレビューvol.13

 東京大学法学研究科のサイトからみれます(こちら)。

 今年も興味深い論文が並んでいます。

 今年は,学生の論文掲載が少ないような気もします。




「遺産分割方法の指定」と「特定遺贈」の違いと判例理論

 特定の財産を特定の相続人に「相続させる」遺言については、遺産分割方法の指定とするか、特定遺贈とするかについて議論がなされており,遺産分割を経ることなく権利を確定できるという点では特定遺贈,登記手続きの観点からら遺産分割方法の指定と解する方が便宜と考えられていました。

 遺産分割方法の指定と考えると、当該財産の承継は包括承継の相続として行われることになり、相続人(登記権利者)による単独申請で、「相続」を原因とする登記が行われることになります。

 また、相続開始により当然には当該財産の所有権は帰属せず、協議分割により当該指定と異なる分割を阻止できないとされます。

 遺贈の場合には、「意思表示による物権変動」であることから、受遺者(登記権利者)と遺贈義務者(登記義務者)の共同申請により、「遺贈」を原因とする登記が行われることになります。

 所有権は相続の開始と同時に移転することになります。

 なお,遺産分割方法の指定と特定遺贈の他の違いとしては,遺産に債務が含まれる場合に,特定遺贈なら相続人は受遺者として当該財産の承継ができる一方で,相続人として相続放棄をすることにより相続債務の承継を免れることができる点だと思います。

 最高裁平成3年4月19日判決は,「『相続させる』趣旨の遺言は,・・・遺産の分割の方法を定めた遺言であり,他の共同相続人も右の遺言に拘束され,これと異なる遺産分割の協議,さらには審判もなし得ないのであるから,・・・何らの行為を要せずして,被相続人の死亡の時に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継される」と判示し,従来の議論の前提を変更した上で,遺産分割手続きの対象となることを否定しています。




特別受益となる贈与が遺留分減殺請求の対象とならない特段の事情

 共同相続人に対する特別受益に該当する贈与は、遺留分侵害についての認識や時期を問わず、遺留分の算定の基礎に加算されること、したがって、遺留分減殺請求の対象になることは、最高裁平成10年3月24日判決で明らかにされています。

 一方で、同判決は、減殺請求を受ける相続人の利益が過度に侵害される特段の事情が存在する場合には、当該贈与に対する減殺請求が例外的に否定される場合を認めています。

 同判決の調査官解説では、相続開始の30年前になされた特別受益となる生前贈与が、被相続人がその後事業に失敗して破産したことにより遺留分減殺請求の対象となる場合には、受贈者の経済状況によっては過酷な結果をもたらすような場合には特段の事情が認められる可能性がある旨指摘されています。

 なお、相続法の改正により、遺留分算定の基礎に算入される特別受益となる贈与は、相続開始前の10年間に限ることとなり、実務上の影響が大きいものと考えられます。




否認している事件では保釈が認められないか

 被告人が犯罪の成立を否定しているいわゆる否認事件の場合には,一般に,保釈が認められにくい傾向にあることは否定できませんが,保釈が認められるケースもあります。

 実際,僕が過去に担当した否認事件でも,保釈が認められたケースがあります(その事件では,複数起訴された事件の内,一部について無罪判決を獲得することができました。)。

 なお,被告人が犯罪の成立を認めているいわゆる自白事件の場合であっても,検察官は保釈することに反対の意見を述べることが通常であり,保釈がされないケースもあります。




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