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一人法人が認められている士業法人と認められていない士業法人

 一人の有資格者が社員となることで法人化できるか否かは、各士業に関する法律で明確に定められています。全体としては、監査法人を除き、一人法人を認める傾向にあることが指摘できます。
1 1人法人が認められている士業法人
⑴ 弁護士法人
 制度創設時(平成14年頃)から1人で可能。

⑵ 社会保険労務士法人
 平成28年(2016年)1月改正で1人法人解禁。
 
⑶ 司法書士法人
 令和2年(2020年)8月改正で1人法人解禁。

⑷ 土地家屋調査士法人
 令和2年(2020年)8月改正で1人法人解禁。司法書士法人と同時改正。

⑸ 行政書士法人

 令和3年(2021年)改正で1人法人解禁。

⑹ 弁理士法人
 令和4年(2022年)改正で1人法人解禁。

2 1人法人が認められていない士業法人
⑴ 税理士法人
 2人以上(1人になったら6ヶ月以内に回復しないと解散)
 
⑵ 監査法人(公認会計士)
 5人以上(1966年制度創設時から維持)。2026年1月に日本公認会計士協会が上場企業監査法人の登録要件で人数引上げの方針発表。




刑事手続きにおける略式手続きの概要

1 略式手続(略式命令)とは、罰金・科料で終わる簡易な刑事手続です。
 公開法廷での審理(正式裁判)を行わず、検察官が提出した書類だけで簡易裁判所が審査し、100万円以下の罰金(または科料)を科す手続です。裁判所に出頭する必要がないのが大きな特徴です。正式裁判で言い渡されるのと同じく有罪判決と同じ効力があり、前科として扱われます。ただし、拘禁刑の可能性はありません。

 
2 略式手続(罰金)の具体的な要件
刑事訴訟法第461条などで定められている要件を満たす必要があります。
⑴ 簡易裁判所の管轄に属する軽微な事件であること
→ 事案が明白で簡単(自白事件が多い)。
⑵ 100万円以下の罰金または科料を科すのが相当であること
→ 法定刑に罰金刑が定められている罪に限られる(実際に科す刑が100万円以下)。
⑶ 被疑者が略式手続に同意していること
→ 検察官から「略式で進めますか?」と聞かれ、書面で同意する。罪を認め、争わないことが前提です。
⑷ 簡易裁判所が「相当」と判断すること
→ 事案が複雑・争いがある・量刑に異論がある場合は却下され、正式裁判に移行します。

3 特に多い罪名
⑴ 道路交通法違反
 速度超過、酒気帯び運転(軽度)、無免許運転、信号無視など。
 
⑵ 窃盗罪(特に万引き)
 初犯・少額のもの。
 
⑶ 暴行罪(刑法208条)
 ケンカで殴ったがケガが軽い場合。

⑷ 傷害罪(刑法204条)
 軽いケガで示談が成立している場合。

⑸ 迷惑防止条例違反**(各都道府県)
 痴漢、盗撮、迷惑行為など。

⑹ その他
 過失運転致傷罪(交通事故で軽傷)
  銃刀法違反(軽微な刃物所持)
 不法投棄(ゴミの不法投棄)
 公然わいせつ罪 など
 
4 略式手続にならない・なりにくい罪名
⑴ 罰金刑自体がない罪(詐欺罪、不同意わいせつ罪、強盗罪など)
⑵ 重い事件(被害が大きい、常習性、前科がある、否認している)
⑶ 100万円超の罰金が妥当な場合

5 手続の簡単な流れ
⑴ 検察官が被疑者に「略式手続に同意しますか?」と確認(同意が必要)。
⑵ 検察官が簡易裁判所に略式命令請求をする。
⑶ 裁判官が書類審査 → 略式命令(罰金金額を記載した書面)が自宅に届く。
⑷ 告知から14日以内に正式裁判の請求をしなければ確定。正式裁判の請求は検察官もできる。
⑸ 確定後、指定期限内に検察庁に罰金を納付。
→ 法廷に出頭する必要は一切ありません。
 
6 まとめ
 略式手続は罪を認めていることが大前提です。少しでも不安や争いがある場合は、弁護士に相談して正式裁判を検討するのも一つの選択肢です。なお、十分に理解しないまま略式手続きに同意してしまった場合に、不起訴処分を得られることも、場合によってはあることも知識として知っておいて損はないでしょう。

 




取適法施行後の価格決定に関する留意点等

 1月1日に改正下請法(中小受託取引適正化法、取適法)が施行されていますが、そのポイントないし要点は後述の1及び2ですが、後述3についても軽視できないと考えられ、どちら側に対してかにかかわらず、弁護士が気にしておく内容といえるでしょう。

 さらに、独占禁止法の優越的地位の濫用や近時弁護士も適用対象となったフリーランス法にも注意が必要です。

1 買いたたき

⑴ 委託事業者は、製造委託等代金の額を決定する際に、発注した内容と同種、又は、類似の給付の内容に対し、通常支払われる対価に比べて著しく低い額を不当に定めると、取適法が禁止する買いたたきに該当します。買いたたきに該当するか否かは、以下の4つの要素を勘案して総合的に判断されます。

① 製造委託等代金の額の決定に当たり、中小受託事業者と十分な協議が行われたかどうかなど対価の決定方法
② 差別的であるかどうかなど対価の決定内容
③ 通常支払われる対価と当該給付に支払われる対価との乖離状況
④ 当該給付に必要な原材料等の価格動向

⑵ 買いたたきに該当するおそれのある行為として具体的に以下のようなものが考えられます。
 a 多量の発注をすることを前提として中小受託事業者に見積りをさせ、その見積価格の単価を少量の発注しかしない場合の単価として代金の額を定めること。
b 量産期間が終了し、発注数量が大幅に減少しているにもかかわらず、単価を見直すことなく、一方的に量産時の大量発注を前提とした単価で代金の額を定めること。
c 労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストの上昇分の取引価格への反映の必要性について、価格の交渉の場において明示的に協議することなく、従来どおりに取引価格を据え置くこと。
d 労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストが上昇したため、中小受託事業者が取引価格の引上げを求めたにもかかわらず、価格転嫁をしない理由を書面、電子メール等で中小受託事業者に回答することなく、従来どおりに取引価格を据え置くこと。
e 一律に一定比率で単価を引き下げて代金の額を定めること。
f 委託事業者の予算単価のみを基準として、一方的に通常の対価より低い単価で代金の額を定めること。
g 短納期発注を行う場合に、中小受託事業者に発生する費用増を考慮せずに通常の対価より低い代金の額を定めること。
h 給付の内容に知的財産権が含まれているにもかかわらず、当該知的財産権の対価を考慮せず、一方的に通常の対価より低い代金の額を定めること。
i 合理的な理由がないにもかかわらず特定の中小受託事業者を差別して取り扱い、他の中小受託事業者より低い代金の額を定めること。
j 同種の給付について、特定の地域又は顧客向けであることを理由に、通常の対価より低い単価で代金の額を定めること。

2 協議に応じない一方的な代金決定
⑴ 委託事業者は、①中小受託事業者の給付に関する費用の変動その他の事情が生じた場合において、②中小受託事業者が製造委託等代金の額に関する協議を求めたにもかかわらず、③当該協議に応じず、又は当該協議において中小受託事業者の求めた事項について必要な説明若しくは情報の提供をせず、一方的に製造委託等代金の決定をすると、取適法の禁止する協議に応じない一方的な代金決定に該当することになります。買いたたきの禁止は、価格が著しく低いことが要件となっており、認定が難しいことから、交渉プロセスに着目した規制を追加した意義があります。

⑵ 協議に応じない一方的な代金決定に該当するおそれのある行為として、具体的にいかのようなものが考えられます。
a 中小受託事業者が代金の額の引上げに係る協議を求めたにもかかわらず、これを拒否し、無視し、又は回答を引き延ばす等により、協議に応じないこと。
b 中小受託事業者が代金の額の引上げを求めたのに対し、合理的な範囲を超えて詳細な情報の提示を要請し、当該情報の提示を協議に応じる条件とすること。
c 中小受託事業者が合理的な理由を示して代金の額の引上げを求めたのに対し、具体的な理由の説明や根拠資料の提供をすることなく、中小受託事業者の申し入れた引上げ額の一部を拒み、又は従前の代金の額を提示すること。
d 委託事業者が代金の額の引下げを要請する場合において、中小受託事業者がその説明を求めたのに対し、具体的な理由の説明や根拠資料の提供をすることなく、当該引下げをした額を提示すること。

3 内閣官房・公正取引委員会「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」(労務費指針)

~発注者が本指針に記載の12の採るべき行動/求められる行動に沿わないような行為をすることにより、公正な競争を阻害する恐れがある場合には、公正取引委員会において独占禁止法及び中小受託取引適正化法に基づき厳正に対処していくという趣旨の記載が2か所にあります。
⑴ 発注者として採るべき行動/求められる行動
① 経営トップの関与
② 発注者から定期的な協議の実施
③ 説明・資料を求める場合は公表資料とすること
④ サプライチェーン全体での適切な価格転嫁を行うこと
⑤ 要請があれば協議のテーブルにつくこと
⑥ 申入れの巧拙にかかわらず必要に応じ考え方を提案すること

⑵ 受注者として採るべき行動/求められる行動
① 相談窓口の活用と情報収集
価格転嫁交渉について、国・地方公共団体の相談窓口や中小企業支援機関(商工会議所・商工会など)を活用し、積極的に情報を収集して交渉に臨む。価格交渉ハンドブック(中小企業庁)やツール(埼玉県「価格交渉支援ツール」、中小企業基盤整備機構「価格転嫁検討ツール」「儲かる経営キヅク君」)を活用して準備する。
② 根拠資料として公表資料を用いる
労務費の上昇傾向を示す根拠として、最低賃金上昇率、春季労使交渉妥結額、毎月勤労統計調査などを用いる。
③ 値上げ要請のタイミングの活用
定期的な交渉機会や、受注者が申出しやすいタイミング(最低賃金改定後、繁忙期前など)を活用して要請する。
a 発注者の会計年度にあわせて(翌年度の予算を策定する前)
b 最低賃金の引き上げ幅の方向性が判明した後
④ 自ら希望額を提示
発注者からの提示を待たず、公表資料を活用して自社及びその先の取引先(サプライチェーン全体)の労務費上昇分を考慮した希望額を提示する。自社労務費だけでなく、二次・三次受注者の分も反映。

⑶ 発注者・受注者の双方が採るべき行動/求められる行動
定期的なコミュニケーションと交渉記録保管




上訴権放棄の手続き

1 はじめに

 上訴権放棄とは、刑事事件の判決言い渡し時に、被告人が上訴(控訴・上告)権を放棄する制度です(刑事訴訟法359条)。放棄の手続きは書面で裁判所へ提出し、検察官も放棄すれば判決が即時確定します。

 名古屋地裁では、担当部ではなく、事件管理の部に提出する扱いとされています。

 なお、死刑・無期拘禁刑に処する判決では放棄はできないこととされています(同法360条の2)。

2 メリット

 言い渡された判決が早期に確定する点です。通常、上訴期間(判決翌日から14日)経過で確定しますが、被告人と検察官の双方が放棄することにより即確定します。

 執行猶予判決の場合、猶予期間が早く開始することになり、執行猶予期間が早く終了します。

 上訴をする可能性がそもそも低い場合、無駄な時間・費用を避け、精神的負担を軽減できる場合もあります。

3 デメリット

 判決に誤りや不服があっても、訂正・破棄の機会を失うことになります。

 後日、後悔しても取り返しがつかないことになります。

 判決の言い渡しでは、判決の理由をすべて話していない可能性もあり、判決直後に軽率に放棄することがないように慎重に対応する必要があります(なお、岐阜地裁では、通常の公判手続きの際にはなされないにもかかわらず、また、執行猶予が予想される判決の言い渡し日に所持品検査が行われるようです。名古屋地裁本庁では、そもそも一般の傍聴人を含めて、持ち物検査が一律行われています。)。




「取適法」という略称

1 いわゆる改正下請法の正式名称は、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」で、2026年1月1日から施行されています。略称として「中小受託取引適正化法」や、上記の「取適法」(とりてきほう)がすでに定着しつつあります。

2 いわゆるフリーランス法の正式名称は、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」であり、これはフリーランス(個人事業主)の取引保護を主眼とした別個の法律で、2024年11月1日から施行されています。通称として「フリーランス・事業者間取引適正化等法」(またはフリーランス新法)が用いられています。
3 これら2つの法律は、目的が重なる部分(取引の公正化、中小事業者や個人事業主の保護)があるものの、対象範囲や適用要件が異なり、当然のことながら別の法律です。略称「中小受託取引適正化法」からさらに短縮した「取適法」は、名称の核心部分である「取引適正化」を抽出しており、法律の趣旨(取引の適正化と中小事業者の保護)を簡潔に反映しており、政府広報や公正取引委員会の公式資料でもこの通称が採用されていますが、法律の正式名称自体に、「取引」や「適正」という言葉は入っていません。一方で、フリーランス法の正式名称(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)も「取引の適正化」という言葉がを含むため、弁護士にとっても慣れるまでは混乱が起きる可能性もありそうです。

 




公務員個人の免責の論理

1 国家賠償法(以下、国賠法)1条1項は、公務員の職務執行による違法行為について、国または公共団体が損害賠償責任を負うことを定めているが、公務員個人の責任については明文の定めがない。判例は一貫して、公務員個人が対外的に責任を負わないとする立場を採っており、大阪地裁令和4年11月25日判決及び同地裁の控訴審である大阪高裁令和5年12月19日判決も、この原則を基に請求を棄却している。同事件では、共同被告とされた国が請求認諾をしたことが弁護士の間でも話題になった。

2 上記判決は、財務省近畿財務局の職員の遺族が、国と公務員個人に対し、国賠法1条1項および民法709条に基づく損害賠償を請求した事案である。大阪地裁令和4年11月25日判決は、被告の行為が公務員としての職務執行に該当し、国賠法1条1項の適用を受けるものであるとして、公務員個人の賠償責任を否定したが、最高裁判所昭和30年4月19日判決などの判例を引用し、「公務員の職務行為による損害については、国または公共団体が責任を負う場合、公務員個人は民法上の不法行為責任を負わない」との理屈である。
 大阪高裁令和5年12月19日判決は控訴を棄却したが、被告の指示行為は国賠法1条1項の「公権力の行使に当たる公務員の職務執行」に位置づけた上で、個人責任を否定した。
 昭和52年10月25日最高裁判決などを基に、公務員の行為が職務関連性を持ち、故意または過失による違法性が認められる場合でも、責任主体は国に限定されるとした。説明義務違反などの主張も退けた。
 国賠法1条1項は、「国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体がこれを賠償する」と規定する。判例(最高裁判所昭和30年4月19日判決以降)は、この条項を公務員個人の責任を否定する根拠とし、公務員は対外的に賠償義務を負わないとする。
 この原則は、公務員の過失を「組織的過失」と捉える判例(最高裁判所昭和57年4月1日判決)により強化されており、個々の公務員の主観的有責性を厳格に問わず、行政全体の違法性を評価する。指定判決もこれを踏襲し、公文書改ざんのような職務行為を組織的文脈で扱い、個人責任を否定した。

3 学説では、国賠法1条1項の責任性質について二つの主な見解がある。
  代位責任説は、公務員個人の不法行為責任を国が代位して負うため、個人は責任を負わない。実益として、加害公務員が特定できない場合や無過失の場合でも、国賠責任が生じうるよう緩やかに解釈される。
  自己責任説は、国または公共団体が直接責任を負うため、公務員個人の責任は発生しないとする。代位責任説との違いは、加害公務員の有責性を問わず国が責任主体となる点にあり、組織的責任を強調する。
  一方で、公務員に故意または重過失がある場合(例:職権濫用)、制裁や抑止の観点から民法709条の適用を認めるべきとする見解もある。個人責任を一律否定することは、「公務員保護の行き過ぎ」との批判が根底にある。




下請法改正で導入される従業員基準

 2026年1月に施行される下請法改正において、従来の資本金基準に加えて、新たに従業員数の基準が導入されることになりました。この改正により、下請法の適用対象が拡大し、多くの企業が親事業者として規制の対象となることが予想されています。従来の下請法は、親事業者と下請事業者の区別を資本金で形式的に判断してきました。例えば、製造委託の場合、親事業者の資本金が3億円超で下請事業者が3億円以下であれば適用対象となります。

 しかし、下請法の適用を免れるために資本金を操作することも可能であることや、資本金が低くても従業員が多く、会社の規模として大きく、取引の条件交渉に際して有利な立場の企業は存在しており、資本金の基準だけでは不十分な場合が指摘されていました。
 そこで、従業員数による基準が追加されることになったのです。
 具体的に、製造・建設・運送委託では親事業者が従業員300人超、下請事業者が300人以下(個人事業主を含む)で適用することになり、情報成果物作成や役務提供委託では、親事業者100人超、下請事業者100人以下が基準となります。
 従業員基準は、資本金基準が適用されない場合に適用されることとされています。
 この従業員は、「常時使用する従業員」で、賃金台帳に記載される正社員、契約社員、パート、アルバイトなど雇用契約のある全労働者を指し、日雇い労働者などは除く、労働基準法に基づく人数でカウントすることとされています。
 さらに実務的には、契約締結時、履行の期間などのどの時期を基準とするのか、取引先の従業員数に関する調査義務はどの程度求められるのかなど、会社関係の案件を扱う弁護士としては、対応が悩ましい点が多いという印象です。
 改正項目は多岐にわたりますが、「事業者が業として行う販売・請負・修理の目的物たる物品等を取引の相手方に対して運送する行為」を他の事業者に委託することを特定運送委託という概念で対象としたり、手形払いの一律禁止、合意の有無にかかわらず振込手数料を負担させることが禁止される点なども重要です。

 

 

 




敗訴判決が出た場合に備えて

1 金銭支払いを求める敗訴判決が出た場合の対応について、訴訟代理人の弁護士は、依頼者と、以下のような流れを想定して、準備をしておくことが求められます。
⑴ 支払が認められた金額を支払う場合
  支払日、振込先口座の確認、遅延損害金等を原告と確認することになります。

⑵ 支払わず争う(控訴する)場合
ア 仮執行宣言が付された場合
  控訴すると、敗訴判決は確定しませんが、敗訴判決に仮執行宣言が付されると、敗訴判決が確定していないにもかかわらず給与等の差押え(強制執行)を手続きを行うことができます。
  仮執行宣言が付いた場合、仮執行宣言による給与等の差押えをさせないようにするために、強制執行停止の申し立てを行い、裁判所の指示する金額を法務局に供託する手続きがあります
イ 敗訴判決でも、仮執行宣言がつかないこともあります。
  この場合は、上記⑴の対応は不要です。
 
2 控訴の提起は、第一審の判決書の送達を受けた日から2週間の不変期間内に提起する必要があります。一般に控訴期間と呼ばれており、判決の言い渡しがなされていれば、送達を受ける前になされた控訴は適法です。
  判決言い渡し前になされた控訴は不適法ですが、その後判決が言い渡されることによりその不適法が治癒されるかについては、最高裁は否定していますが、救済を認めるべきという見解も有力です。
  当事者が敗訴を見越して判決言い渡し期日に欠席し、かつ、判決の言い渡しが延期されたような場合がありうるとされています。
 
3 請求がすべて認められなかった場合には、不服申し立てをする方法としては控訴しかありませんが、一部勝訴している場合には、相手方からの控訴を受けてから控訴する方法があり、これを一般に付帯控訴と呼び、控訴の要件を満たす場合には独立付帯控訴と呼ばれ、法律の取扱いが異なってきます。
  付帯控訴の場合は、相手方による控訴が取り下げられると(控訴審の終局判決があるまで控訴を取り下げることがきます。)効力を失うことになります。
  控訴審の手続きについては、第一審の手続きが一般的に準用されていますが、一部例外もあります。

 




在宅被疑者が弁護人立会いなしの取調べを拒否したところ、逮捕された事例というタイトルで紹介された名古屋高裁令和4年1月19日判決

 1 逮捕の違法性、弁護権の侵害を理由とする国家賠償請求がなされた裁判です。

   前提となる事案の概要として、以下のように紹介されています(適宜省略している。)。特徴として、いわゆる迷惑防止条例違反であり思い犯罪とは言えないこと、結果として無罪判決となっていること、弁護人の同席を認めれば取調べに応じることを通知していることが挙げられます。

 本件甲事件は、控訴人が、後に無罪判決を受けた公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反(電車内の痴漢行為)の被疑事件について、逮捕の必要性がなく、逮捕状請求が却下されたにもかかわらず、⑴検察官が再度の逮捕状請求をし、発付された逮捕状を執行したこと及び⑵再度の逮捕状請求に基づき裁判官が逮捕状を発付したことが違法であると主張して、被控訴人に対し、国家賠償法1条1項に基づき慰謝料160万円及び弁護士費用40万円の損害賠償を請求した事案である。
 本件乙事件は、控訴人の私選弁護人であった控訴人弁護士が、上記被疑事件について、⑴控訴人の弁護人として取調べの日程調整の窓口になることを申入れていたにもかかわらず、検察官が控訴人に直接連絡をして日程調整をしようとしたこと、⑵検察官が再度の逮捕状請求及び発付された逮捕状を執行したこと、⑶再度の逮捕状請求に基づき裁判官が逮捕状を発付したことが、それぞれ控訴人弁護士の弁護権を違法に侵害したと主張して、被控訴人に対し、国家賠償法1条1項に基づき慰謝料160万円及び弁護士費用40万円の損害賠償を請求した事案である。

2 続けて同判決は、請求を棄却した原審の判断を以下のようにまとめています。

「担当検察官と控訴人らとの間で取調べにおける弁護人の立会いの可否をめぐって対立状況が継続する中で、本件逮捕状請求時において、担当検察官の合理的判断として、控訴人の逮捕の必要が明らかにないと判断すべきであったとまでは認められないから、担当検察官の逮捕状請求及び発付された逮捕状の執行に国家賠償法1条1項の違法はなく、逮捕の必要が明らかにない場合には該当しないとして本件逮捕状を発付した担当裁判官の行為にも、同条項の違法はないとして、控訴人らの請求をいずれも棄却した。」

3 そして、同判決の判断として、まず、逮捕状請求手続きの違法について以下のとおり判断をしています。

「(1)ア 刑事事件において無罪の判決が確定したというだけで直ちに起訴前の逮捕が違法となるということはない(最高裁昭和53年10月20日第二小法廷判決)。そして、司法警察職員や検察官は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由及び逮捕の必要性の有無について裁判官が審査した上で発付した逮捕状によって、被疑者を逮捕することができる(刑訴法199条1項本文、2項)。逮捕状の請求を受けた裁判官は、提出された資料等を取り調べた結果(刑訴規則143条、143条の2)、被疑者が逃亡するおそれがなく、かつ、罪証を隠滅するおそれがない等明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない(刑訴法199条2項ただし書、刑訴規則143条の3)。なお、上記罪証隠滅のおそれについては、被疑事実そのものに関する証拠に限られず、公訴を提起するかどうかの判断や刑の量定に関して参酌される事情に関する証拠も含めて審査されるべきものである。そして、逮捕状を請求された裁判官に求められる審査、判断の義務に対応して考えると、司法警察員や検察官においても、逮捕の理由がないか、又は明らかに逮捕の必要がないと判断しながら逮捕状を請求することは許されないというべきである(最高裁平成10年9月7日第二小法廷判決)。
イ また、本件逮捕状請求は、本件現行犯逮捕がされた後に前件勾留却下がされ、その後にされた再度の逮捕状請求であるところ、手続上、再度の逮捕状請求も予定されており(刑訴法199条3項、刑訴規則142条1項8号)、法的に許容されたものではあるが、同一犯罪事実による逮捕の繰り返しが無制限に許されるとすれば、逮捕の時間的制限が無意味なものになるから、以前逮捕がされ、留置期間が満了した者につき再度の逮捕状請求を受けた裁判官は、上記アと同様に提出された資料を取り調べた結果、再度の逮捕をすべき特別の事情がない場合には、再度の逮捕状の請求を却下しなければならないと解すべきである。そして、上記アと同様、再度の逮捕状を請求された裁判官に求められる審査、判断の義務に対応して考えると、司法警察員や検察官においても、明らかに再度の逮捕の必要がないと判断しながら再度の逮捕状を請求することは許されないというべきである。」「(3)ア そこで、控訴人が、弁護人の取調べ立会権を主張し、控訴人Bの立会いのない取調べには応じなかったことによって、明らかに逮捕の必要がないとはいえない状況となったかを検討する。
イ 逮捕又は勾留されている場合を除き、被疑者は、検察官からの出頭要求に応じる義務はなく、出頭後いつでも退去することができる(刑訴法198条1項)。しかし、そうであるからといって、在宅の被疑者が取調べに応じるに当たり必要かつ合理的な限度で条件を付することができ、選任した弁護人を取調べに立ち会わせる権利があると当然に解されるわけではなく、明文で弁護人の取調べ立会権を認める規定は存在しない上、最高裁判所による明確な判断も示されておらず、弁護人の取調べ立会権があるとの解釈は確立していない。
 また、正当な理由のない不出頭は、一般的には逃亡ないし罪証隠滅のおそれの一つの徴表であると考えられ、数回不出頭が重なれば逮捕の必要が推定されることがあると解されている。そうすると、検察官の出頭要求に応じて被疑者が出頭したものの、弁護人を取調べに立ち会わせることを求め、これを検察官が認めなかったことから、結果として被疑者の取調べを行うことができない事態が繰り返された場合に、検察官が、被疑者が正当な理由なく取調べを拒否しており、正当な理由のない不出頭を繰り返した場合に準じ、逃亡ないし罪証隠滅のおそれがあるとして逮捕の必要性があると評価することに合理的根拠がないとはいえず、本件においては、明らかに逮捕の必要がなかったということはできず、本件逮捕状の請求及び逮捕状の執行は、刑訴法及び刑訴規則の定める要件を満たす適法なものであったということができる。」「控訴人が弁護人の立会いなしでの取調べに1回応じなかったのみではいまだ罪証隠滅や逃亡のおそれが高まったとはいえないが、数回の出頭要求と説得を重ねたものの、結局控訴人単独での取調べに応じなかったことから罪証隠滅や逃亡のおそれが高まったと評価することに合理的根拠がないとはいえず、弁護人の取調べへの立会を求められた際に直ちに再度の逮捕状の請求をしなかったからといって、濫用目的があったと認めることはできない。」「また、控訴人は、別の理由として、本件逮捕状発付後に直ちに本件逮捕状が執行されていないことや、本件逮捕状による逮捕後の補充捜査が予定されておらず、逮捕当日に起訴されていること、在宅求令状の方法をとらず敢えて本件逮捕状請求をしていることなどから、上記濫用目的が認められると主張する。しかし、証拠(乙10ないし14、17)によれば、本件逮捕状の執行の嘱託を受けた担当警察官は、8月2日の本件逮捕状受領後に、控訴人が出張により帰宅しないこともあり、妻子があること等を考慮して、早朝の出勤時に逮捕することが適切であると判断し、早朝を中心に控訴人の動向を確認し、同月8日に控訴人を発見して本件逮捕状を執行したこと、控訴人は、逮捕当日の弁解録取手続及びその後の取調べで黙秘したことが認められる。このような事実関係からすると、検察官は、控訴人の主張を得て補充捜査を行うことができなかったことから、同日、公訴提起に至ったものと考えられ、本件逮捕状請求の時点で、逮捕後の補充捜査が予定されていなかったとは認めるに足りない。」

4 この裁判例は、刑事弁護を扱う弁護士には、不当な裁判例として有名です。黙秘権の行使ではなく、取調べ自体の拒否を推進するべきという考え方も(事案によっては)ありうるとされているところですが(取調べ拒否権を実現する会https://rais2024.jp/)、このような思考をする検察官や裁判官がいる(いた)ことも踏まえて、弁護方針を考えるべき場合もあります。




懲役刑、禁錮刑、拘禁刑の刑の軽重の考え方

 懲役及び禁錮が廃止され、個々の受刑者に応じて必要な作業や必要な指導を行う拘禁刑が導入されましたが、施行日の6月1日より前に懲役または禁錮に当たる罪を犯した場合には、なお懲役または禁錮により処罰されることになり、また、懲役受刑者や禁錮受刑者に拘禁刑が執行されることはありません。

 施行日後の改正法の適用に当たり、施行前にした行為に関する罪と施行後にした行為に関する罪が同一罪名の場合には、併合罪の罪数処理の際に罪の軽重を決定する必要がでてきます。

 すなわち、併合罪の処断刑については、「その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを長期とする。」とされており、施行前の行為は懲役刑、施行後の行為は禁錮刑の軽重によって「その最も重い罪」が確定されます。

 結論としては、罪の軽重は、懲役、拘禁刑、禁錮の順に重いとされており、拘禁刑ではなく懲役刑が課されることになります。

 矯正の現場において、拘禁刑に一本化されるのはかなり先になることは明らかで、矯正職員の意識の整理も重要な課題となりそうです。

 従来、弁護士が刑事事件の弁護人としては、若干軽視しがちだった部分ですが(弁護士会は人権救済案件として関与してきた分野ではあります)、拘禁刑の運用に対する関心・監視と、弁護活動への反映も重要になりそうです。

刑法第9章

(併合罪)

第四十五条 確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。ある罪について拘禁刑以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。

(併科の制限)

第四十六条 併合罪のうちの一個の罪について死刑に処するときは、他の刑を科さない。ただし、没収は、この限りでない。

2 併合罪のうちの一個の罪について無期拘禁刑に処するときも、他の刑を科さない。ただし、罰金、科料及び没収は、この限りでない。

(有期拘禁刑の加重)

第四十七条 併合罪のうちの二個以上の罪について有期拘禁刑に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを長期とする。ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない。

(罰金の併科等)

第四十八条 罰金と他の刑とは、併科する。ただし、第四十六条第一項の場合は、この限りでない。

2 併合罪のうちの二個以上の罪について罰金に処するときは、それぞれの罪について定めた罰金の多額の合計以下で処断する。

(没収の付加)

第四十九条 併合罪のうちの重い罪について没収を科さない場合であっても、他の罪について没収の事由があるときは、これを付加することができる。

2 二個以上の没収は、併科する。

(余罪の処理)

第五十条 併合罪のうちに既に確定裁判を経た罪とまだ確定裁判を経ていない罪とがあるときは、確定裁判を経ていない罪について更に処断する。

(併合罪に係る二個以上の刑の執行)

第五十一条 併合罪について二個以上の裁判があったときは、その刑を併せて執行する。ただし、死刑を執行すべきときは、没収を除き、他の刑を執行せず、無期拘禁刑を執行すべきときは、罰金、科料及び没収を除き、他の刑を執行しない。

2 前項の場合における有期拘禁刑の執行は、その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを超えることができない。

(一部に大赦があった場合の措置)

第五十二条 併合罪について処断された者がその一部の罪につき大赦を受けたときは、他の罪について改めて刑を定める。

(拘留及び科料の併科)

第五十三条 拘留又は科料と他の刑とは、併科する。ただし、第四十六条の場合は、この限りでない。

2 二個以上の拘留又は科料は、併科する。

(一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理)

第五十四条 一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。

2 第四十九条第二項の規定は、前項の場合にも、適用する。

刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律(令和四年法律第六十八号)

(新旧の刑の軽重)
第四百四十四条 懲役、禁錮、旧拘留及び刑法等一部改正法第二条の規定による改正後の刑法(以下「新刑法」という。)第九条に規定する主刑の軽重は、死刑、懲役、拘禁刑、禁錮、罰金、拘留、旧拘留及び科料の順序による。ただし、無期の拘禁刑又は禁錮と有期懲役とでは拘禁刑又は禁錮を重い刑とし、無期禁錮と有期拘禁刑とでは禁錮を重い刑とし、有期拘禁刑の長期が有期懲役の長期を超えるときは拘禁刑を重い刑とし、有期禁錮の長期が有期の懲役又は拘禁刑の長期の二倍を超えるときは禁錮を重い刑とし、旧拘留の長期が拘留の長期の二倍を超えるときは旧拘留を重い刑とする。




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