名古屋市の弁護士 森田清則(愛知県弁護士会)トップ >> 労働 >> 労働条件を規律する規範の関係

労働条件を規律する規範の関係

 労働条件を規律する規範は複数あり、弁護士業務を行う上でも、整理しておくことが有益な場合があります。

1 労基法等の強行法規がすべてに優先

2 就業規則と労働契約(個別合意)との関係

① 使用者と労働者が個別的な合意をしていない場合、その内容が合理的であり、周知されている場合、就業規則の定めが労働契約の内容になる(労契法7条本文、就業規則の補充効)。

② 就業規則と異なる内容の合意をしている場合、その合意が優先する(労契法7条ただし書)。

③ その個別合意が就業規則で定める基準よりも低い場合には就業規則が優先する(労契法12条、最低基準効)。

3 労働協約と労働契約、就業規則との関係

⑴ 労働協約の定めは、個別労働契約に優先して適用される。

 労働協約が、個別労働契約に関する項目を定めている場合に問題となります。

 労組法16条は、「労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は、無効とする。この場合において無効となった部分は、基準の定めるところによる。労働契約に定がない部分についても、同様とする。」

⑵ 労働協約は就業規則に優先して適用される。

 労働協約の規範的効力とは、労働協約で「労働条件その他の労働者の待遇に関する基準」について取り決めをした場合には、労働協約の定めは個別労働契約に優先して適用される。労働条件を不利に変更する効力も有するというもの。

※ 労基法89条は、就業規則について以下のとおり定めています。

 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。

 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項

 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項

 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

三の二 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項

 臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項

 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項

 安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項

 職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項

 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項

 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項

 前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項