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脳・心臓疾患を伴う過労死の労災認定

1 脳・心臓疾患を伴う過労死について、「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」(平成13・12・12基発1063号)を改正した、「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」(令和3年9月14日基発0914第1号)が現在適用されています。

2 対象疾病は以下のとおりとされています。

⑴ 脳血管疾患

ア 脳内出血(脳出血)

イ くも膜下出血

ウ 脳梗塞

エ 高血圧性脳症

⑵ 虚血性心疾患等

ア 心筋梗塞

イ 狭心症

ウ 心停止(心臓性突発死を含む。)

エ 重篤な心不全

オ 大動脈解離

3 認定要件として、原則として、以下の⑴から⑶の業務による明らかな過重負荷を受けたことにより上記2の対象疾病を発症した場合には、業務に起因する疾病として扱うものとされています。

⑴ 発症前の長期間にわたって、著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務(以下「長期間の過重業務」という。)に就労したこと ※長期間とは、6か月を指します。疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と位置付けられる労働時間について、発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できるとされています。

⑵ 発症に近接した時期において、特に過重な業務(以下「短期間の過重業務」という。)に就労したこと ※短期間とは、1週間を指します。労働時間について具体的な定めはありません。

⑶ 発症直前から前日までの間において、発生状態を時間的及び場所的に明確にし得る異常な出来事(以下「異常な出来事」という。)に遭遇したこと

4 相談にのる弁護士としては、その他の部分の認定基準の理解と、取消訴訟まで含めた的確な見通しを行うことが重要と考えられます。

 一般に、行政の認定基準は講学上の通達であり、裁判所の判断を拘束しないとされており、例えば労働の過重性については時間数という量的なものではなく質的な負荷要因も十分に考慮する傾向があり、実際、認定基準では過労死と認定されない事案について、裁判所により救済される場合もあると指摘されています。