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連鎖販売取引の「特定利益」の考え方

1 特商法は、弁護士が相談を受けることが比較的多い法律ですが、改正が多く、要件も複雑で、早急な対応を要することも多い印象があります。

2 連鎖販売取引に該当する要件である「特定利益」について、令和4年6月22日付特定商取引に関する法律等の施行についての第3章において、以下のとおり解説がなされています。

 「法」とは、特商法を指しています。

 「特定利益」とは、再販売等を行う者を勧誘する際の誘引となる利益であり、法第33条第1項は「その商品の再販売、受託販売若しくは販売のあっせんをする他の者又は同種役務の提供若しくはその役務の提供のあっせんをする他の者が提供する取引料その他の主務省令で定める要件に該当する利益の全部又は一部」と定義し、省令第24条において、特定利益の要件を規定している。

 「その商品の再販売、受託販売若しくは販売のあっせんをする他の者又は同種役務の提供若しくはその役務の提供のあっせんをする他の者」とは、組織の他の加盟者のことであるが、現に加盟している者である必要はなく、加盟しようとする者を含むものである。

 例えば「あなたが勧誘して組織に加入する人の提供する取引料の○○%があなたのものになる。」と勧誘する場合は省令第24条第1号に該当し、「あなたが勧誘して組織に加入する人が購入する商品の代金(提供を受ける役務の対価)の○○%があなたのものになる。」と勧誘する場合は同条第2号に該当し、「あなたが勧誘して組織に加入する人があれば統括者から一定の金銭がもらえる。」と勧誘する場合は同条第3号に該当する。これらの同条に規定する利益は、いずれも組織の外部の者ではなく、組織の内部の者(組織に加入することとなる者を含む。)の提供する金品を源泉とするものであり、組織の外部の者(一般消費者)への商品販売による利益(いわゆる小売差益)は含まれない。

3 以上の解説から、「特定利益」とは、組織の外部の者ではなく、組織の内部の者(又は組織に加わろうとする者)から提供される金品を源泉とするものを指していることは明らかであり、組織外の者、例えば最終消費者から支払われる役務提供の対価は、特定利益に該当しないことになります。