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管理監督者該当性が否定された場合の付加金の額

 労基法41条2号の管理監督者に該当する場合,労基法上の労働時間,休憩及び休日についての規定が適用されないことになります。

 使用者がある労働者について,管理監督者に該当する前提で割増賃金の支払いを行っていなかった場合に,管理監督者該当性が否定されてしまった場合の付加金の額については裁判例の集積があります。

 客観的に評価して,管理監督者性を基礎づける要素がどれだけ存在したかが問われることになり,4割の限度で認めた例や5割の限度で認めた例や,口頭弁論終結前及び終結後に提示された裁判所の和解勧告に従わなかったことなどを考慮して付加金請求を棄却したAGORATECHNO事件などもあり,弁護士として対応に注意をするべき論点といえます。




遺留分の事前放棄制度

 事業承継対策として、遺留分の事前放棄を検討することがあります。

 遺留分の事前の放棄を法的に有効に行うためには、家庭裁判所の許可が必要です。

 家庭裁判所は、放棄が真意に基づくものか否か、放棄の理由の合理性、放棄と引き換えに代償があるかなどを審理したうえで許可又は却下の審判をすることになります。

 一般的には利用できる場面が限定されるという評価がされていますが、代償をうまく活用できる事案では利用できるかもしれません。 




いわゆる親族内承継の留意点

 企業内に、後継者候補の経営者の親族がいる場合に、その親族を事業承継の後継者候補とすることを検討できます。

 このような親族内承継の場合には、①当該後継者の経営力不足、②経営者が保持している株式を後継者候補にどのように承継するか、③他の推定相続人とのトラブル、④経営者の保証債務をどのようにするか等が問題となります。

 ②③との関係では、平成30年の改正により納税猶予を受けるための要件が緩和された事業承継税制の適用を求める場合には、「特例承継計画」に記載する「特例後継者」についても検討が必要となります。

 ④との関係では、経営者保証ガイドラインをうまく活用できるかを検討することが必要です。




我妻榮・有泉亨・清水誠・田山輝明「我妻・有泉コンメンタール民法〔第6版〕の書評」

 ビジネスロージャーナル2019年8月号の辛口法律書レビューのコーナーで紹介されています。

 「民法改正対応はまだ不十分」「改訂漏れの多さ」「お勧めの使い方」「志を引き継ぐ若い民法学者の協力を!」という章立てで詳しく批評がなされています。




事業場外労働みなし制度

 事業場外労働みなし制度とは、①労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなし(所定労働時間みなし)、ただし、②当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合は、当該業務の遂行に必要とされる時間労働したものとみなし(通常必要時間みなし)、さらに、③上記②の場合において労使協定が締結されたときは、その協定で定める時間を上記②の「当該業務の遂行に必要とされる時間」とする(協定時間みなし)制度です(労働基準法38条の2)。

 「通常必要とされる労働時間」とは、想定される平均的な労働時間とされるので、実労働時間算定に準じた取扱いともいえ、実労働時間の算定困難性を認めて事業場外みなし制を適用した東京地判平成22年7月2日等も、事業場外労働の実態等を具体的に検討した上で通常必要時間を算定しています。

 最高裁平成26年1月24日は、使用者が労働者の勤務状況を具体的に把握することが困難か否かという観点から判断しており、実務の具体的な判断としては、①事前に具体的な勤務内容が定められ、②業務上の裁量の幅が限られ、③使用者がその内容に沿って業務遂行を指示しているだけでなく、④添乗日報のような事後の報告(自己申告)の正確性が確認できれば、労働時間算定困難性は否定されることになるものと考えられます。




菅野和夫「労働法<第12版>」

 もうすぐ出るようです(弘文堂ホームページ)。

 水町先生の詳解労働法とあわせて,労働事件を扱う弁護士必携の本だと思います。

 荒木先生や土田先生も近いうちに改訂版を出してほしいところです。




配偶者居住権と持戻し免除の意思表示

 相続人に対する贈与や遺贈は特別受益として扱われ,被相続人から遺産の先渡しを受けたものとして,遺産分割における取り分を計算することになります。

 具体的には,その贈与等の価額を遺産の価額に持ち戻した上で,遺産の総額に各相続人の相続分を乗じ,贈与等を受けた相続人は贈与等の価額を差し引いて遺産分割における各自の取り分を計算します。

このような持戻し計算をすることにより,贈与等があっても贈与等を受けた相続人の最終的な取り分は変わらないことになってしまいます。

 そこで,被相続人が特定の贈与等について,その価額を遺産に含めない意思を示していた場合(いわゆる持戻し免除の意思表示がされていた場合)には,このような計算をする必要がなくなり,最終的な取り分が増えることになります。

 遺贈又は死因贈与により配偶者居住権を取得した場合には、配偶者居住権の価値相当額を当該配偶者が取得したことになるため、特別受益に該当することになりますが、婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が,配偶者に対してなした配偶者居住権の遺贈については,持戻し免除の意思表示が推定されることが、改正民法1028条3項が,改正民法903条4項を準用していることから導かれます。




取得時効に基づく一時所得の年度帰属

 時効取得に基づく一時所得の年度帰属は,民法学説における援用の議論や,税法上の観点等から,①占有開始時,②時効完成時,③時効援用時,④時効取得について判決等が確定した場合,が理論上考えられます。
 東京地裁平成4年3月10日では,納税者が④,課税庁が③を主張しましたが,同判決は、課税庁の主張した③時効援用を主張した年度に帰属する旨判示しました。
 時効取得の主張が認められるためには,短くても10年の占有継続が要件ですから(民法162条1項,同2項参照),時効取得の援用ができる事実関係の下では,①の立場の主張では、自動的に課税の消滅時効期間が経過していることになり(国税通則法72条1項,地方税法18条1項は,租税の徴収権は原則として法定納期限から5年間行使しないことにより時効により消滅する旨規定しています〔金子宏租税法〔23版〕871ページ〕。)、およそ時効取得が認められた場合には課税ができないことを意味することになり、「筋が悪い」主張という印象を受けます




個人根保証に関する規律の対象

 改正民法465条の2第2項は、「一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約」を根保証契約と定義し、書面又は電磁的記録で「極度額」を定めなければ無効と定めています。

 立法担当者の解説では、不動産の賃借人が賃貸借契約に基づいて負担する債務の一切を個人が保証する場合、代理店等を含めた取引先企業の代表者との間で損害賠償債務や取引債務等を保証する場合、介護等の施設への入居者の負う各種債務を保証する場合が挙げられていますが、「一定の範囲に属する不特定の債務」に該当する債務に該当するものが多数あるものと考えられます。

 弁護士としては、該当しそうな契約について、その類型に応じて、限度額をいくらに設定するかの検討も求められることになります。

 取引基本契約に基づいて継続的取引を行っている場合には(このような取引に基づいて発生する債務は、「一定の範囲に属する不特定の債務」に該当するものと考えられます。)、取引残高が極度額を超えるとその超過部分は保証の対象外となることから、取引残高の確認がより一層求められることになります。




事業場外労働みなし制の考え方

1 まず、以下の行政通達がありますが、一見して、「使用者の具体的指揮監督」、「労働時間の管理」、「指示」という概念の関係があいまいという印象をうけます。

「事業場外労働に関するみなし労働時間制の対象となるのは、事業場外で業務に従事し、かつ、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難な業務であること。したがって、次の場合のように、事業場外で業務に従事する場合であっても、使用者の具体的な指揮監督が及んでいる場合については、労働時間の算定が可能であるので、みなし労働時間制の適用はないものであること。

① 何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合

② 事業場外で業務に従事するが、無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら労働している場合

③ 事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けたのち、事業場外で指示どおりに業務に従事し、事業場にもどる場合」

2 最高裁平成26年1月24日判決は、事業場外労働みなし制の要件である労働時間算定困難性について、使用者が労働者の勤務状況を具体的に把握することが困難か否かという観点から判断しています。

 労働時間の算定が困難であることと使用者の指揮監督とは本来別の次元であると考えられることから、理論的には相当と考えられますが、実務上の問題としては、事業場外労働みなし制が有効に認められるためには、どの程度の困難さが求められるかということになります。




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