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シンガー・ソーイング・メシーン・カムパニー事件の事実関係

 シンガー・ソーイング・メシーン・カムパニー事件最高裁判決(最判昭和48年1月19日民集27巻1号27頁)は、退職金債権の放棄の有効性が問題となった事案で、労働者の自由な意思に基づくと認め得る合理的な理由が客観的に存在するときは有効との判断基準を示し、結論として退職金債権の放棄を有効と判断したことで有名な最高裁判例です。

 実際の事実関係は、以下のとおりであり、労働事件を扱う弁護士としては、結論と合わせて理解しておくべきだと思います(最高裁判例を一部引用。上告人が労働者。①当該労働者がそれなりの地位にあったこと、②競争関係にある他の会社に就職することが判明していたこと、③旅費等の使用に疑惑が生じていた点に対する損害の填補を会社が求めた経緯で書面が作成されたことに要約できると思います)。

 「原審の確定するところによれば、上告人は、退職前被上告会社の西日本における総責任者の地位にあつたものであり、しかも、被上告会社には、上告人が退職後直ちに被上告会社の一部門と競争関係にある他の会社に就職することが判明しており、さらに、被上告会社は、上告人の在職中における上告人およびその部下の旅費等経費の使用につき書面上つじつまの合わない点から幾多の疑惑をいだいていたので、右疑惑にかかる損害の一部を填補する趣旨で、被上告会社が上告人に対し原判示の書面に署名を求めたところ、これに応じて、上告人が右書面に署名した」