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いわゆる「同一労働同一賃金」の法的意味

 日本で導入された正規・非正規の格差是正のための同一労働同一賃金ガイドラインや、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律8条による法的規制は、①賃金に限られないすべての労働条件に関するものであること、②通勤手当や福利厚生施設の利用等においては「同一労働」ではなくても同一扱いをするべきか議論されるべきこと、③そもそも「同一労働」を要件とすることなく不合理な労働条件の相違を禁止しようとする内容であること等から、法的には誤解を招く表現であると考えられます。

 正確には「不合理な相違禁止規制」とも呼ぶべきだと考えられますが、令和2年10月に出された5つの最高裁判決を踏まえた短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律対応を内容とする最近出版された弁護士執筆の実務書のタイトルは、「最新同一労働同一賃金27の実務ポイントー令和3年4月完全施行対応ー」(新日本法規)、「同一労働同一賃金対応の手引き(第2版)」というように、スローガン的な分かりやすさを重視したものになっています。

 なお、ジュリスト最新号の特集名は「正規・非正規の不合理な待遇格差とはー5つの最高裁判例を契機に」となっています。

短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律8条(不合理な待遇の禁止)

 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。