名古屋市の弁護士 森田清則(愛知県弁護士会)トップ >> 労働 >> 旧労働契約法20条に関する最高裁判決とパート有期雇用法8条の解釈

旧労働契約法20条に関する最高裁判決とパート有期雇用法8条の解釈

 令和2年10月に旧労働契約法20条に関する5つの最高裁判例、すなわち、退職金が問題となったメトロコマース事件、賞与及び私傷病による欠勤中の賃金問題となった大阪医科薬科大学事件、年末年始勤務手当、有給の病気休暇に係る相違、年始期間の祝日給に係る相違、有給の夏季冬季休暇に係る相違が問題となった日本郵便事件3件(東京、大阪、佐賀)が出ました。

 令和2年4月1日から施行されている短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(いわゆる「パート有期雇用法」)8条の解釈の先例的意義を有するかが議論されています。

 大阪医科薬科大学事件、メトロコマース事件の各最高裁判決が当該労働条件の性質・目的とは無関係に旧労働契約法20条に規定する諸事情を考慮に入れている点で、当該労働条件の性質及び目的に照らして適切と認められる事情を考慮するというパート有期雇用法8条に合致しないことを理由にその先例的意義を疑問視する見解も主張されているところです。

 労働事件を扱う弁護士は、平成30年に出されたハマキョウレックス事件最高裁判決及び長澤運輸事件最高裁判決と合わせて、最高裁判例の考え方を整理しておく必要があります。

短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律8条

事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。