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解雇予告手当の論点

 いわゆる解雇予告手当に関して、使用者が即時解雇をした場合でも使用者が即時解雇に固執する趣旨ではない場合、即時解雇の意思表示後30日を経過すれば解雇の効力を生じることになるという相対的無効説が判例の考え方とされています(最高裁昭和35年3月11日判決)。

 しかしながら、上記相対的無効説を前提とした場合に、解雇された労働者は、上記30日の期間について、①解雇予告手当請求権を取得するのか、②同期間中は労働契約が継続していることから労務の提供を条件に賃金請求権を取得することになるのか、③上記各請求権の両方を取得するかという論点があります。

 解雇予告手当と賃金の金額は異なることが通常であることから、実務上問題となりえます。

 ②、③に関連して、労務の提供をしなくても賃金請求を取得することはあり得るかも論点となります。

 また、解雇予告が不要となる場合としての行政官庁の認定(除外認定)について、労基法20条3項、19条2項は、即時解雇する場合には行政官庁の認定を受けなければならない旨規定していますが、上記認定は、行政官庁が解雇予告の除外事由に該当する事実が存在するか否かを確認する行為であって、解雇の効力発生要件ではないと一般に考えられていることにも注意が必要です。

 さらに平均賃金の計算方法についてもいくつかの方法があることについても、労働事件を扱う弁護士は知っておく必要があります。

 なお、学説上は、労働者は解雇無効の主張をするか解雇有効を前提に予告手当の請求をするか選択できるとする選択権説が有力に主張されています。