名古屋市の弁護士 森田清則(愛知県弁護士会)トップ >> 弁護士業務一般 >> 民事執行法197条1項2号に該当する事由があるとしてされた財産開示手続の実施決定に対する執行抗告において請求債権の不存在又は消滅を執行抗告の理由とすることはできないとした最高裁令和4年10月6日決定

民事執行法197条1項2号に該当する事由があるとしてされた財産開示手続の実施決定に対する執行抗告において請求債権の不存在又は消滅を執行抗告の理由とすることはできないとした最高裁令和4年10月6日決定

 民事執行法197条1項2号に該当する事由があるとしてされた財産開示手続の実施決定に対する執行抗告において請求債権の不存在又は消滅を執行抗告の理由とすることが許されるかが論点となった事案で、最高裁令和4年10月6日決定は、許されないと判示しました。

 原審の東京高裁は、子の監護費用に係る確定期限の定めのある金銭債権を請求債権として、財産開示の申立てを行い財産開示決定が出されたところ、債務者が執行抗告を行い弁済を行い、確定期限が到来している債権について弁済を行ったことから、財産開示の申立てを却下する判断をしていました。

 上記決定は、以下のとおり理由を述べています。

 「法には、実体上の事由に基づいて強制執行の不許を求めるための手続として、請求異議の訴えが設けられているところ、請求債権の存否は請求異議の訴えによって判断されるべきものであって、執行裁判所が強制執行の手続においてその存否を考慮することは予定されておらず、このことは、強制執行の準備として行われる財産開示手続においても異ならないというべきである。そのため、執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者から法197条1項2号に該当する事由があるとして財産開示手続の実施を求める申立てがあった場合には、執行裁判所は、請求債権の存否について考慮することなく、これが存するものとして当該事由の有無を判断すべきである。」

 「債務者は、請求異議の訴え又は請求異議の訴えに係る執行停止の裁判の手続において請求債権の不存在又は消滅を主張し、法39条1項1号、7号等に掲げる文書を執行裁判所に提出することにより、財産開示手続の停止又は取消しを求めることができるのであり(法203条において準用する法39条1項及び40条1項)、法203条が法35条を準用していないことは、上記事由があるとしてされた財産開示手続の実施決定に対する執行抗告において、債務者が請求債権の不存在又は消滅を主張することができる根拠となるものではない。」

 「したがって、法197条1項2号に該当する事由があるとしてされた財産開示手続の実施決定に対する執行抗告においては、請求債権の不存在又は消滅を執行抗告の理由とすることはできないと解するのが相当である。」

 財産開示手続きは、最近の民事執行法改正で導入されたものであり、弁護士実務上も重要な制度ですが、その争い方も含めて確認をしておくべきといえるでしょう。