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交通事故判例百選第5版

 18年振りの改訂とのことです。

 他の百選とは異なり,弁護士が手に取ることが多く想定されます。

 編者には,古笛弁護士もはいっています。




納税者支援調整官の制度

 国税庁のホームページによると、納税者支援調査官制度の意義として、『国税庁、国税局又は税務署に対しては、処分に対する不服申立てだけでなく、職員の応対や調査の仕方など税務行政全般について、納税者から不満や注文、批判、困りごとの相談などが寄せられることがあります。このような納税者のさまざまな苦情等に正面から対応することが、納税者の理解と信頼を得るためには不可欠であると考え、納税者の視点に立って迅速かつ的確な対応を図っています。』と説明されています。

 名古屋国税局管内にも設置されており、税務調査の際に利用を検討すべき場合もあると思われます。




民法899条の「相続分」の意義

 民法899条の「相続分」とは,具体的相続分を指すか,法定相続分を指すかについて一応議論があるようです。
 まず,具体的相続分の法的性質について,相続分説と遺産分割分説の対立があるとされます。
 相続分説は,具体的相続分を,具体的な相続分計算をまたずに観念的な権利として存在し,各共同相続人に承継されるとする考え方です。
 しかしながら,寄与分,及び,特別受益の具体的な金額が当事者の協議なり家庭裁判所の審判で決まらなければ具体的相続分は決まらない,すなわち,遺産分割協議までは決まらないとする考え方を遺産分割分説と呼ぶようです。
 判例実務では,民法899条の「相続分」は,法定相続分を指すと考えられているようです。




高報酬労働者と定額残業代(最高裁平成29年7月7日判決)

  定額残業制とは、一般に、毎月の賃金の中に予め割増賃金に代わる一定の残業代を設定し支払う制度をいいます。

 メリットとして一応言われているのは、時間外労働が恒常的に一定時間発生する事業所においては定額残業代の範囲において割増賃金の計算と清算が省略できること、定額残業代が毎月の固定的賃金に含まれるとともに割増賃金の算定基礎から除かれるので相対的に割増賃金の肥大化が抑制できること等があげられます

 高知県観光事件判例(最高裁平成6年6月13日)以降、その有効性については、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分を判別できること、割増賃金として支払われる金額が法定の計算上の金額以上であることが要求されています。

 高報酬労働者について以上のような議論があてはまるか問題となった、モルガン・スタンレー・ジャパン事件(東京地裁平成17年10月19日)は、基本給月額183万円の従業員について、時間外労働の対価も基本給に含まれるという合意を認めていました。

 しかし、高報酬の勤務医の定額残業代の有効性が問題となった最高裁平成29年7月7日判決は、労働基準法37条の趣旨が、割増賃金を使用者に支払わせることにより時間外労働を抑制する点にもあるとし、定額残業代の有効性を肯定した原審の判断を破棄しました。

 そもそも,高報酬とはいくらを指すのか,高報酬と当該労働者に認められる裁量性の広狭とはどのような関係にあるのかなどについて従来から疑問を持っていたところです。




推定相続人の廃除

 推定相続人の廃除とは、相続欠格ほどではないが、推定相続人に被相続人が相続させたくないと思う一定の原因があり、その推定相続人に相続させたくないと考える場合に、家庭裁判所の審判の手続きにより、相続する権利を失わせる制度です。

 廃除された推定相続人は相続資格を失うことになりますが、相続結果とは異なり遺贈を受けることはできるとされています。

 廃除の対象となるのは、遺留分を有する推定相続人、すなわち、兄弟姉妹以外の推定相続人ということになります。

 遺留分を有しない兄弟姉妹については、遺言を作成したり、生前贈与や遺贈により相続させない対応をすることになります。

 廃除の実体的な要件として、被相続人に対する虐待、被相続人に対する重大な侮辱、その他著しい非行が民法892条に定められていますが、肯定された事案、否定された事案それぞれ裁判例があります。

 最近では、高齢者虐待防止法2条4項が、身体的な虐待、保護の懈怠、心理的虐待、性的虐待、経済的虐待を高齢者に対する虐待として定めており、とくに、「経済的虐待」と推定相続人が被相続人の財産を使い込んだケースの扱いに影響が及ぶという指摘もあるようです。

 手続きとしては、被相続人が生前に家庭裁判所に請求する方法(民法892条)、遺言により廃除の意思表示を行い遺言執行者が家庭裁判所に請求する手続き(民法893条)があります。遺言執行者がいないとき、またはなくなったときには、利害関係者が遺言執行者の選任を家庭裁判所に請求することになります。




財産分与と譲渡所得

 離婚の際に、一方が他方に自己名義の財産を与えることを一般に財産分与とよびます(民法768条)。

 財産分与について最高裁昭和50年5月27日判決は、財産分与による財産の移転は、分与者にとっては譲渡に当たることから譲渡所得税がかかると判断して言います。

 所得税基本通達33-1の4が同趣旨の規定を定めており、課税実務はこの最高裁判例の立場によっています。

 財産分与は夫婦共有財産の清算、離婚に伴う慰謝料、離婚後の生活についての扶養の要素があるとして、それぞれの法的性質に即して考えるべきであるという有力な反対説も主張されています。

 なお、現金は譲渡所得を発生させる資産ではないので、現金で財産分与を行った場合には、最高裁の立場に立っても、譲渡所得課税はなされないことになります。




被相続人の生前贈与契約に基づく相続人の所有権移転登記手続は「保存行為」か「処分」か

 被相続人が行った不動産の贈与契約について、被相続人が亡くなった後、相続人が当該契約に基づき所有権移転登記手続きを行った場合、「保存行為」にとどまるといえるか。

 「保存行為」にとどまると評価されれれば相続放棄手続をすることができますが,「処分」と判断されれば単純承認事由ありということで有効に相続放棄手続きができないということになります。

 東京地裁平成28年8月24日判決(判例タイムズ1433号211頁)は、既に発生している所有権移転登記義務の履行にすぎないということはできず、「処分」にあたると判断しています。

 当該判例は、弁護士の説明義務違反を肯定したものとしても参考になります。




懲戒処分としての減給

 懲戒処分として減給を行う場合にはできる減給できる範囲には制限があります。 

 1回の減給の額は平均賃金の1日分の半額を超えることはできず,また,減給の総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えておこなうことはできません(労働基準法91条)。

 前提として就業規則上の根拠と,懲戒事由の程度・内容に照らしての相当性も求められます。

 出勤停止処分による賃金減額は労務提供がなされなかったことによるものであり減給の規制は受けないと考えられ,また,人事処遇としての降格に伴う降給についても別の議論となります。

 なお,国家公務員については,人事院規則12-0第3条が,「1年以下の期間,俸給の月額の5分の1以下に相当する額を,給与から減ずるものとする」と定めており,民間の労働者よりも多額の減給処分が可能です。




遺留分の喪失

 遺留分権利者は、兄弟姉妹を除く法定相続人、すなわち、配偶者、子、直系尊属です(民法1028条)。

 この遺留分権利者は、相続欠格、廃除、相続放棄の手続きにより相続権を失った場合には、遺留分を失うことになります。

 そのほかにも、相続権を失わずに遺留分のみを失う手続きとして遺留分の放棄があります。

 遺留分の放棄は、特定の相続人に遺産を集中させるために行う遺贈や贈与の効力を失わせないための手続きという位置づけですが、(推定)相続人の保護を図るため、相続開始前に行うためには、家庭裁判所の許可が必要となります。

 なお、解釈上、遺留分減殺請求権の放棄も認められています。




成年後見と信託の違い

 成年後見は、一般に財産管理及び身上監護のための制度と位置付けられますが、信託は財産管理及び財産承継の制度として活用されるものであり、その機能は重なる部分があり、どのように活用するか、どのように使い分けをするべきかの判断が、任意後見の利用も含めて、弁護士に求められることもあります。

 成年後見は、判断能力を欠くようになってから利用が可能である点で、判断能力が不十分な期間の本人の保護が十分ではないという指摘がなされています。

 一方で、信託の場合には、規定の仕方によりすぐに効力を生じさせることが可能です。

 さらに、信託の場合には、相続税対策のための贈与や、教育資金の贈与などの他人に対する財産処分、自宅を売却して施設に入所するための資金を確保する等の財産処分が、その旨の規定をすることにより可能となるなどのメリットがあります。




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