名古屋市の弁護士 森田清則(愛知県弁護士会)トップ >> 労働, 医療 >> 高報酬労働者と定額残業代(最高裁平成29年7月7日判決)

高報酬労働者と定額残業代(最高裁平成29年7月7日判決)

  定額残業制とは、一般に、毎月の賃金の中に予め割増賃金に代わる一定の残業代を設定し支払う制度をいいます。

 メリットとして一応言われているのは、時間外労働が恒常的に一定時間発生する事業所においては定額残業代の範囲において割増賃金の計算と清算が省略できること、定額残業代が毎月の固定的賃金に含まれるとともに割増賃金の算定基礎から除かれるので相対的に割増賃金の肥大化が抑制できること等があげられます

 高知県観光事件判例(最高裁平成6年6月13日)以降、その有効性については、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分を判別できること、割増賃金として支払われる金額が法定の計算上の金額以上であることが要求されています。

 高報酬労働者について以上のような議論があてはまるか問題となった、モルガン・スタンレー・ジャパン事件(東京地裁平成17年10月19日)は、基本給月額183万円の従業員について、時間外労働の対価も基本給に含まれるという合意を認めていました。

 しかし、高報酬の勤務医の定額残業代の有効性が問題となった最高裁平成29年7月7日判決は、労働基準法37条の趣旨が、割増賃金を使用者に支払わせることにより時間外労働を抑制する点にもあるとし、定額残業代の有効性を肯定した原審の判断を破棄しました。

 そもそも,高報酬とはいくらを指すのか,高報酬と当該労働者に認められる裁量性の広狭とはどのような関係にあるのかなどについて従来から疑問を持っていたところです。