懲戒解雇された場合の退職金の(一部)不支給については,社内の規程の定め方も含めて多くの議論があり,裁判例も多数出ています。
この議論は,基本的に各会社独自の退職金規程を念頭に議論されており,中小企業によく採用されている中小企業退職金共済(いわゆる中退共)の扱いについては,別の観点から,実務上問題になることもあります。
注意するべき点は,中退共による退職金受給権は,当該従業員が直接独立行政法人勤労者退職金共済機構に対して取得するものと考えられるため,会社の規程に懲戒解雇の場合に退職金を支給しない定めをしていても,従業員が当然に退職金受給権を失うことにはならないということです。
会社は,機構に対して退職金の減額を申し出ることはできますが,減額するか否かは機構の判断によることになりますし,減額されたとしても差額分が会社に返還されるわけではありません。
中退共から支給される退職金額が会社の退職金規程の金額を上回る場合にその差額分を会社に返還する旨の合意について,強行法規及び公序良俗に反して無効と判断した,東京高判平成17年5月26日判決があります。
少しずつ読んでます。
・平野晋教授著「ロボット法ーAIとヒトの共生にむけて」(弘文堂)
・山本龍彦教授著「おそろしいビッグデータ 超類型化AI社会のリスク」(朝日新書)
・遠藤英嗣弁護士著「家族信託契約 遺言相続、後見に代替する信託の実務」(日本加除出版)
・能見善久教授・樋口範雄教授・神田秀樹教授編「信託法制の新時代 信託の現代的展開と将来展望」(弘文堂)
・ジャン=ノエル・ミサ、パスカル・ヌーベル編「ドーピングの哲学 タブー視からの脱却」(新曜社)
・野矢茂樹教授著「大人のための国語ゼミ」(山川出版社)
所得税の納税義務が発生する前提として、その所得が個人に帰属していることが大前提となります。
所得と納税義務者のこうような結びつきを、所得の人的帰属とよんで議論されています。
所得税法12条は、「資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。」と定めています(いわゆる実質所得者課税の原則)。
この規定の趣旨については、私法上の法律関係に即して人的帰属を決めるべきとする法律的帰属説と、私法上の法律関係からは離れて経済的実質によって人的帰属を決めるべきとする経済的帰属説の考え方が成り立ちますが、安定性の観点から、法律的帰属説が通説とされています。
しかしながら、「所得」という経済的概念を私法上の概念から決めるという時点で、ずれが生じることは容易に想定されますし、私法上の概念自体に争いがあったり(私法は租税法に比べてはるかに自由な解釈が行われているという指摘もあります。)、私法上の議論と租税法上の議論が解決を想定している内容がそもそも異なるということもあり、慎重な検討が必要となります。
緑大輔一橋大学准教授が,判例時報2343号128頁で紹介しているアメリカ合衆国ウィスコンシン州最高裁2016年6月13日判決です。
COMPAS(CorrectionalOffenderManagementProfiling for AlternativeSanctions)による再犯予測結果が宣告刑の理由の一つであることを説示しました。
再犯可能性を見積もるこのCOMPASによる算定方法は企業秘密とされ,裁判所には評価結果のみが報告されたということです。
このような制度が近い将来日本の刑事裁判で利用されることはないとは思いますが,従業員採用の際にAIを活用することなどは現実に検討されているようであり,日本にも示唆的な裁判例といえそうです。
日本の文献として駒村圭吾教授の『「法の支配」vs「AIの支配」』が参照されています。
また,AIやプロファイリング・ビッグデータの憲法問題については,山本龍彦教授の一連の研究があり,最近出た弘文堂の「AIがつなげる社会」に掲載されている,『AIと「個人の尊重」』の論文のなかで,今回の判例が紹介されています。
最近、「生産性」という言葉をよく耳にします(そのままずばり、伊賀泰代『生産性ーマッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの』という本も出ています。)。
本書は、2010年12月の刊行ですが、生産性をあげるための取り組み方について、「イシュー」という概念を軸に論じられています。
帯には、『「根性」に逃げない。』という力強い言葉があります。
主債務者及び(連帯)保証人を共同被告とする訴訟は,いわゆる通常共同訴訟に分類されます。
訴訟の追行態度等をふまえ(保証人が訴訟に欠席するなど)により,実務上,弁論を分離するということが行われることがあります。
分離後,保証人が敗訴となり主債務者が勝訴した場合には,実体法上の観点からは,調整が難しい問題が発生することになります。
このような問題を避けるため,弁論の分離自体を制限する方向での解決も一応考えられるところですが,この種の訴訟が必要的共同訴訟であることからすると,民事訴訟法39条の定める共同訴訟人独立の原則にもかかわらず,共同訴訟人間の証拠共通の原則を解釈上採用することに加え,主張共通の原則を採用しなければ解決しないということになります。
判例時報2342号139頁に大阪弁護士会司法改革検証・推進本部高裁民事問題プロジェクトチームによる記事が掲載されています。
142頁以下では,「記録はどこまで読まれているか」という項目があり,「主任でない陪席判事が通常読むのは地裁判決と控訴理由書くらいであるという声も聞こえてくる。」「主任の裁判官も,和解協議をしていて,記録をきちんと読んでいないことが分かったという事例が報告されている。」「合議の結論はまだ出ていないといって,脅すように和解を勧告されることも少なくない。」という記載があります。
他の法律で用いられ明確に意味内容を与えられている概念が、税法上の適用で問題となるときに、その概念を他の法律で用いられているのと同義に解釈するべきという考え方を、統一説と呼びます。
借用概念について統一説をとる理由としては、法的安定性や、立法者意思をふまえ自然(もし異なる意味内容を与える場合には特別の規定が置かれることが想定される。)であることなどが挙げられます。
一方、他の法律にない租税法特有の概念を、固有概念と呼び、例として、「所得」が挙げられます。
一般に固有概念については、租税法独自の観点から決めるべきと考えられており、所得は経済上の利得を意味することから、実現した経済的成果に即して判断するべきとされています。
ただし、法律行為に瑕疵がある場合などを念頭に、所得が固有概念であることをもって、私法上の法形式を全く無視して課税を行うことが許されているわけではないとの指摘もあるようです。
電通法務マネジメント局を編者とする,標記の本が出ました(なお,現代消費者法32号では,「広告と消費者法」という特集が組まれています)。
執筆者のほとんどが,電通に所属する弁護士資格を持った方のようです。
広告ビジネスにかんする実務の概説から,広告に関する各法律の解説まで広く取り扱われています。
近時話題になることの多い景品表示法は,2章にわたり扱われています。