最高裁は,特殊詐欺におけるいわゆるだまされたふり作戦を「だまされたことに気付いた,あるいはそれを疑った被害者側が,捜査機関と協力の上,引き続き犯人側の要求どおり行動しているふりをして,受領行為等の際に犯人を検挙しよ うとする捜査手法」と定義したうえで,詐欺未遂罪の共同正犯の成立を認めました。
第1審判決は,被告人と共犯者らとの間では,事前共謀は成立しておらず,共犯者による欺罔行為後に共謀がされたと認められると認定した上で,被告人の共謀加担前に共犯者が欺罔行為によって詐欺の結果発生の危険性を生じさせたことについては,それを被告人に帰責することができず,かつ,被告人の共謀加担後は,だまされたふり作戦が開始されたため,被告人と共犯者らにおいて詐欺の実行行為がなされたということはできず, 詐欺未遂罪の共同正犯の罪責を負うとは認められないとして,被告人に対 し,無罪の言渡しをしていました。
「要件事実マニュアル」などで有名な岡口基一裁判官(東京高裁判事)と、独特のイラストで有名な中村真弁護士の標記の本を読みました。
はしがきにもありますが、現役の裁判官の認識・本音が書いてあるのが本書の大きな特徴です。
興味深い項目(以下、目次の項目)として、『裁判所から見た「いい書面」「悪い書面」(16ページ)』、『代理人の印象は訴状で決まる(21ページ)』、『エモーショナルな書面の効き目(25ページ)』、『書面を送るべきはファックスか郵送か(28ページ)』、『「尋問バッチリだったのにこの判決?」という疑問が生じるワケ(51ページ)』、『「7割」和解を成立させる裁判官が語る(70ページ)』、『最終準備書面、コレを書いたら勝たせる(94ページ)、』、『控訴審における和解(117ページ)』、『「被害者」を助けるなかれ(170ページ)』、『弁護士には、なってみたい?(181ページ)』などです。
しおりの完成度も高いです。
個人再生手続きは,裁判所を通じて,債務を圧縮する手続きですが,以下のタイミングで,官報に掲載されることとされています。
1 個人再生手続きの開始決定時
2 提出された再生計画案について債権者の意見を聞くという決定である再生計画案の付議決定時
3 再生計画案が無事認められた際の再生計画案の認可決定時
これに対し,破産手続きの場合には,開始決定時と免責決定時の2回掲載されることになります。
先日のNHK最高裁判決で説得的な反対意見を述べた木内道祥最高裁判事の後任に、税法の分野で著名な長島・大野・常松法律事務所の宮崎裕子弁護士が決まったようです(最近では,LPS事件(最高裁平成27年7月17日判決)に関与されていたようです。)。
私が持っている宮崎裕子弁護士の著書として、「国際租税法(第3版)」(東京大学出版会)があります。
また、BEPS行動計画を踏まえ、一般的租税回避規定の導入の議論が活発ですが(さしあたり、フィナンシャル・レビュー126号所収の論文参照)、ジュリスト1496号37頁掲載の「一般的租税回避否認規定―実務家の視点から<国際的租税回避への法的対応における選択肢を納税者の目線から考える>」の論文は、租税法律主義の機能として、「租税は、国家による私人からの対価なき財産権の強制的な移転である。そうであるが故に、国会が定める法律の根拠に基づくことなしに国家が租税の賦課・徴収することは許されない。納税者の視点から言うならば、租税は、国会が定める法律に規定された明確なルールにしたがって課される場合に初めて正当性を持つのである。そして、明確に法定された課税要件は、納税者に法的安定性と予測可能性を保証する」と述べられています。
同論文の最後では、「国(立法府)には法律制定権限があるが、納税者には法律制定権限はないという本質的な違いがある以上、立法の不備や遅れのつけを国(課税庁)が負うべきではないという考え方をとることはできないし、明確ではない課税要件や立法の遅れのつけをひとり納税者が負担するべき理由はない。アグレッシブなタックスプランニングとのいたちごっこを心配する向きもあるかもしれないが、国に質の高い立法力があってこそ、法的安定性と予測可能性が高まり、納税者のタックスコンプライアンス意識も高まるというものであろう。」と締めくくられています。
国側に対する厳しい判決が期待できるかもしれません。
大阪高裁平成29年4月27日判決は、「アイドルグループのコンサートにおいて、一部の顧客が曲に合わせて大声を出したり、一定のパフォーマンスをしたことにつき、当該コンサートの主催者及び出演者の、コンサートチケットを購入して当該コンサートを鑑賞した者に対する債務不履行責任ないし不法行為責任が否定された事例」として、判例タイムズ1441号37頁に掲載されています。
判決文では、「オタ芸」を、アイドルのコンサートにおいて、一部の顧客が、曲に合わせて「オー!オー!オー!オー!」などの大声を出したり、激しく何度もジャンプしたり、棒状のライトを振り回すなどの行為と定義しています。
オタ芸一般を迷惑行為として強く非難する意見があること、その反面、コンサートの雰囲気を高揚させる側面もあることなどの分析もなされています。
判示事項は、「自動車売買で所有権留保の合意がされ,代金債務の保証人が販売会社に代金残額を支払った後,購入者の破産手続が開始した場合において,その開始の時点で自動車につき販売会社名義の登録がされているときは,保証人は,留保所有権を別除権として行使することができる」となっています。
最高裁平成22年6月4日判決との関係については、「販売会社,信販会社及び購入者の三者間において,販売会社に売買代金残額の立替払をした信販会社が,販売会社に留保された自動車の所有権について,売買代金残額相当の立替金債権に加えて手数料債権を担保するため,販売会社から代位によらずに移転を受け,これを留保する旨の合意がされたと解される場合に関するものであって,事案を異にし,本件に適切でない。」と判示されています。
申立代理人として、あるいは破産管財人弁護士として関与する際の実務上の取扱いが明らかになった点で意義のある最高裁判決です。
必要経費の原則的規定として,所得税法37条1項があります。
売上原価などは費用収益対応の原則との関係で個別対応とされていること,償却費以外の費用については債務の確定が必要経費に算入する要件となっていること,「損失」は一般的には必要経費とされないことなどがポイントとしてあげられます。
必要経費の制限規定として,家事費・家事関連費を位置づけることができます。
家事費は消費のための支出,家事関連費は家事費(消費)と必要経費の両方の性格をもつ支出です。
所得税法基本通達では,支出の内業務に必要な部分が50パーセント以下であっても,業務に必要な部分を明らかに区分することができる場合には,その部分を必要経費に算入できるとしています。
所得税法37条1項 その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額(事業所得の金額及び雑所得の金額のうち山林の伐採又は譲渡に係るもの並びに雑所得の金額のうち第三十五条第三項(公的年金等の定義)に規定する公的年金等に係るものを除く。)の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。
所得税法45条1項 居住者が支出し又は納付する次に掲げるものの額は、その者の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入しない。
一 家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの
所得税法施行令96条 法第45条第一項第一号(必要経費とされない家事関連費)に規定する政令で定める経費は、次に掲げる経費以外の経費とする。
一 家事上の経費に関連する経費の主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費
二 前号に掲げるもののほか、青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者に係る家事上の経費に関連する経費のうち、取引の記録等に基づいて、不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務の遂行上直接必要であつたことが明らかにされる部分の金額に相当する経費
給与所得控除は、給与所得の必要経費の個別的認定が困難であることを考慮した概算経費控除を認めるべきであること、給与所得の勤労性所得の側面による担税力の弱さ、給与所得の捕捉率が他の所得と比べて高いこと等を理由に採用されたと考えられています。
なお給与所得控除の具体的金額については、平成26年所得税法改正において、平成28年分について給与等の収入金額が1200万円を超える場合には230万円、平成29年分以降については1000万円を超える場合には220万円に引き下げられています。
給与所得者が給与所得控除の2分の1を超える特定支出を行うと、その超えた金額を給与所得控除後の給与所得金額からさらに控除できることからすると、現行所得税法は、給与所得控除額の2分の1が給与所得の概算経費控除にあたると考えているということができます。
特定支出控除は、いわゆる大島事件最高裁判決をふまえて、昭和62年に導入された制度ですが、適用例は極めて少ないといわれています。
弘文堂からでるようです(弘文堂ホームページ)。
編著者が道垣内先生,著者が,大村敦志,沖野眞已,角紀代恵,加毛明,佐伯仁志,佐久間毅,菱田雄郷,弥永真生,山下純司の各先生となっています。