法人税法上欠損金の繰越が認められるのは、企業が継続することを前提としつつ、課税実務上の便宜上事業年度が人為的に設定されているために、過去に生じた損失をその後の事業年度の利益と通算することを認めることが妥当であるという考え方に基づくものです。
最高裁平成25年3月21日判決(神奈川県臨時特例企業税事件)は、「各事業年度間の所得の金額と欠損金額を平準化することによってその緩和を図り、事業年度ごとの所得の金額の変動の大小にかかわらず法人の税負担をできるだけ均等化して公平な課税を行うという趣旨、目的から設けられた制度」と判示しています。
平成28年度の法人税改正により、平成30年4月1日以後に開始する事業年度において生ずる欠損金の繰越期間が9年から10年に変更されましたが、繰越控除前における所得の金額のうちの一定割合のみ控除できることとされており、平成29年4月1日から平成30年3月31日までに開始した事業年度では所得の55パーセント、平成30年4月1日から開始した事業年度では所得の50パーセントが限度とされています。
2016年の特商法改正により,美容医療が特商法の「特定継続的役務提供」に該当することになりました。
対象となる美容医療は,「美容の向上を主たる目的として行う医療行為」のうちの①脱毛,②ニキビ・シミ・入れ墨などの除去,③シワ・タルミとり,④脂肪の溶解,⑤歯の漂白が該当することになります。
期間1か月超・金額5万円超の条件を満たす契約が特定継続的役務に該当し,書面交付義務(42条),広告規制(43条),不当勧誘行為の禁止(44条),8日間のクーリングオフ(48条),不当勧誘行為に基づく取消権(49条の2),中途解約権と2万円の損害賠償制限(49条)等の適用を受けることになります。
なお,美容医療も当然医療の一種であることから,医療法に基づく規制を受けることは従前のとおりです。
消費者庁が,特商法について逐条解説を公表しています(特定商取引に関する法律の解説(平成28年版))。
特定継続的役務提供の部分は,57頁あります。
不法行為の被害者が同じ不法行為により利益を受けた場合、その利益を控除して損害額を算定することを、損益相殺といいます。
いわゆる差額説からは当然の帰結と説明されることもありますが、被害者は原状より利得してはならないという理念や、加害者と被害者の公平の確保の観点も必要と考えられます。
生命保険金については、その保険金の支払いは不法行為とは別個の保険契約に基づいてなされるものであること、保険金はすでに払い込まれた保険料の対価であること、生命保険金が損害の填補を目的とするものではないこと等から、損益相殺の対象とはならないと一般に考えられています。
任意後見監督人選任前の段階で任意後見契約を解除する場合には、任意後見契約の締結が公正証書による要式行為であることとの均衡、及び、当事者の真意に基づく解除であることを担保するため、公証人の認証を受けた書面によることが要件とされています。
この段階で両当事者による解除の自由を制限する必要はないことから委任の一般原則とおり「いつでも」上記方式により任意後見契約を解除することができるとされており、債務不履行を理由とする解除の場合にも公証人の認証を受けた書面によることが必要と解されています。
任意後見監督人の選任後の段階では、本人保護の制度的枠組みが開始した段階であり任意後見人の自由な解除を認めることは妥当ではないことから、解除が認められるためには、「正当な事由」と家庭裁判所の許可が必要とされます。
債務不履行による解除の場合には、債務不履行の事実が「正当な事由」に該当し、家庭裁判所による許可がなされるものと考えられます。
なお、本人の自己決定権を尊重する観点から、任意後見契約が登記されている場合には、家庭裁判所は法定後見の開始をすることができず、「本人の利益のため特に必要があると認めるときに限り」法定後見開始の審判をすることができるとされています。
法定利率は、今回の債権法の改正で、大幅な見直しがなされた項目です。
法定利率は、利息が生ずる債権で利率の定めがない場合を規律する民法404条1項、遅延損害金に法定利率が適用される419条1項、法定利率が適用される中間利息控除の各場面です。
上記3つの場面すべてで同じ「法定利率」を定めるべきかについては議論があり得るところですが、改正後も、従来どおり、同じ利率を使うことで議論は落ち着いたようです。
信託法上の受益者は,受益権を有する者と定義されています(信託法2条6項)。
しかし,相続税法上は,受益者としての権利を現に有する者(相続税法9条の2第1項),及び,特定委託者(信託を変更する権限を現に有しかつ信託財産の給付を受けることとされている者(相続税法9条の2第5項)を指すことになります。
さらに,相続税基本通達では,詳細に規定がなされています。
信託行為を考える上では,予想外の課税が生じないよう慎重な検討が必要です。
相続税基本通達 第3節 信託に関する特例
第9条の2《贈与又は遺贈により取得したものとみなす信託に関する権利》関係
(受益者としての権利を現に有する者)
9の2-1 法第9条の2第1項に規定する「受益者としての権利を現に有する者」には,原則として例えば,信託法第182条第1項第1号((残余財産の帰属))に規定する残余財産受益者は含まれるが,停止条件が付された信託財産の給付を受ける権利を有する者,信託法第90条第1項各号((委託者の死亡の時に受益権を取得する旨の定めのある信託等の特例))に規定する委託者死亡前の受益者及び同法第182条第1項第2号に規定する帰属権利者(以下9の2-2において「帰属権利者」という。)は含まれないことに留意する。(平19課資2-5,課審6-3追加)
(特定委託者)
9の2-2 法第9条の2第1項に規定する特定委託者(以下「特定委託者」という。)とは,公益信託ニ関スル法律(大正11年法律第62号)第1条((公益信託))に規定する公益信託(以下9の2-6において「公益信託」という。)の委託者(その相続人その他の一般承継人を含む。以下同じ。)を除き,原則として次に掲げる者をいうことに留意する。(平19課資2-5,課審6-3追加)
(1) 委託者(当該委託者が信託行為の定めにより帰属権利者として指定されている場合,信託行為に信託法第182条第2項に規定する残余財産受益者等(以下9の2-5までにおいて「残余財産受益者等」という。)の指定に関する定めがない場合又は信託行為の定めにより残余財産受益者等として指定を受けた者のすべてがその権利を放棄した場合に限る。)
(2) 停止条件が付された信託財産の給付を受ける権利を有する者(法第9条の2第5項に規定する信託の変更をする権限を有する者に限る。)
一橋大学大学院法学研究科の角田先生(民法)と、電気通信大学大学院情報理工学研究科の工藤先生(ロボット工学)が、ロボット・AIに関わるさまざまな分野の研究者が各専門分野についてプレゼンテーション(基調報告のようなもの)を行ったうえで、その後対談の形式をとって、深い議論がなされています。
豪華なメンバーですが、特に、東大ロボで有名な、国立情報研究所の新井紀子先生と、劇作家の平田オリザ先生の章は、知らなかったことが多く参考になりました。
少年事件について,警察官向けに書かれた本です(東京法令出版)。
付添人を行う弁護士向けの付添人活動に関する定評のある本は多くありますが,警察がどのように少年事件を整理し対応しているかについて,随所に記載されている本書は,別の観点から少年事件の解決にあたり参考になります。
元弁護士で臨床心理士の岡田裕子先生の本です。
本書では、「難しい依頼者」を、感情の表し方、思考方法、対人関係における態度に、常識を超えた極端さがあるため、弁護士が困惑するような依頼者と定義し、「難しい依頼者」を弁護士が積極的に引き受け、適切に対応することによって、「難しい依頼者」の権利を守るために、パーソナリティ障害の理論を用いた理解と対応法について書かれています。
境界性パーソナリティ障害、自己愛性パーソナリティ障害、反社会性パーソナリティ障害などの事例をもとに、「弁護士の困りどころ」と、それに対する「望ましい対応」という形式で、解説がなされています。
事例は,弁護士が遭遇しそうなリアルなものとなっており,非常に参考になります。
法テラスの立替基準では,債権者数により,援助される着手金が異なります。
この債権者数については,平成30年4月1日以降,各種税金,国民健康保険,介護保険,年金等の社会保険料等の債権者が存在する場合にも,原則として債権者数に含めないこととされるようです。
破産申し立てをしても免責されず本人が対応することが多いことを理由とする変更という説明がなされています。
債務整理の方針決定の際に,とくに個人再生事件の履行可能性を裁判所がどう判断するかという予測をすることも多いですが,上記のような債権の滞納が存在する場合には,裁判所に詳細な説明を行う必要がある点等からは,債務整理を扱う弁護士としては,違和感もありうるところです。