任意後見契約の解除
任意後見監督人選任前の段階で任意後見契約を解除する場合には、任意後見契約の締結が公正証書による要式行為であることとの均衡、及び、当事者の真意に基づく解除であることを担保するため、公証人の認証を受けた書面によることが要件とされています。
この段階で両当事者による解除の自由を制限する必要はないことから委任の一般原則とおり「いつでも」上記方式により任意後見契約を解除することができるとされており、債務不履行を理由とする解除の場合にも公証人の認証を受けた書面によることが必要と解されています。
任意後見監督人の選任後の段階では、本人保護の制度的枠組みが開始した段階であり任意後見人の自由な解除を認めることは妥当ではないことから、解除が認められるためには、「正当な事由」と家庭裁判所の許可が必要とされます。
債務不履行による解除の場合には、債務不履行の事実が「正当な事由」に該当し、家庭裁判所による許可がなされるものと考えられます。
なお、本人の自己決定権を尊重する観点から、任意後見契約が登記されている場合には、家庭裁判所は法定後見の開始をすることができず、「本人の利益のため特に必要があると認めるときに限り」法定後見開始の審判をすることができるとされています。
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