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事業場外みなしの適用が認められた場合の労働時間

 事業場外みなしの適用が認められた場合(労基法38条の2「労働時間を算定し難い」の要件を満たしていることが前提となります。),原則として,①労働時間は「所定労働時間」とみなされますが(労基法38条の2第1項本文),②当該事業場外の業務遂行に「通常必要とされる時間」が所定労働時間を超えている場合には「通常必要とされる時間」が労働時間とみなされます(同条同項ただし書)。

 ②の場合,事業場外みなしの制度が労働時間の算定が困難であることを前提とするものであることから通常必要とされる時間を客観的に算定することは困難であることが容易に想定されることから,当該事業場における過半数労働組合(過半数労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者)との書面による協定で通常必要とされる時間を定めている場合には,その時間が労働時間とみなされます(労基法38条の2第2項)。




休日に8時間を超える労働をした場合の賃金の割増率

 労基則20条1項は,時間外労働が深夜労働と重なる場合には,重なる労働時間に対しては割増率は5割以上(1か月の時間外労働が60時間以内の場合),あるいは,7割5分以上(1か月の時間外労働が60時間を超える場合)と定めています。

 休日に1日8時間を超える労働をした場合には,休日労働に関する規制のみが及ぶことから,3割5分以上の割増率が適用されることになります。

 休日の労働が深夜労働と重なる場合には,重なる時間は,6割以上の割増率となることが,労基則20条2項が定めています。




受託者の相続についての整理

 信託法56条1項1号は、受託者の死亡を信託の終了事由と定められていることから、受託者の地位は、受託者の相続人に承継されないことになります。

 ただし、信託法60条は、新しく受託者が信託事務の処理をできるようになるまで受益者の利益が害されることのないように、受託者の相続人が信託財産の保管と信託事務の引継ぎに必要な行為をすることを義務付けている点には注意が必要です。

 さらに、受託者は、取引により負った債務について信託財産を超えて責任を負うこと、受託者は無限責任を負うことが原則であることから、受託者の債務は、受託者の相続人に承継されることになります。




不法行為に基づく損害賠償請求権を受働債権として相殺が許容される場合

 改正債権法509条1号及び2号は、悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権、及び、生命又は身体に対する不法行為に基づく損害賠償請求権について、それらを受働債権とする相殺を禁止する旨定めています。

 したがって、上記のような不法行為でなければ、受働債権とする相殺が認められることになります。

 なお、悪意で債務を履行しなかったことによる損害賠償請求権についても、改正民法509条1号の類推適用により、相殺が禁止されるべきという見解が主張されています。




債権者代位行権行使時に債務者の管理処分権が制限されないことの意味

 改正民法423条の5は、債権者代位権が行使されても、被代位権利についての債務者の処分権限は制限されない旨明示しています。

 このことから、第三債務者は、債権者代位権が行使されても被代位債権について債務者に弁済することも当然認められる(同423条の5後段)。

 さらに、改正民法423条の6は、債権者代位訴訟提起の際に債務者への訴訟告知が義務付けていますが、訴訟告知後も債務者の処分権限は制限されないことから、債務者は第三債務者に被代位債権について請求をすることもできますし、第三債務者は債務者への弁済を有効に行うことができます。

 加えて、債権者代位訴訟において代位債権者への直接支払いを命じる判決が確定した場合においても、債務者は第三債務者に被代位債権について請求をすることもできますし、第三債務者は債務者への弁済を有効に行うことができることになります。

 なお、訴訟告知がなされなかった場合には、訴訟告知を訴訟要件と考えれば、訴えを却下するべきであると考えられます。




保険の多重契約と契約内容登録制度と重大事由解除

 保険の多重契約がなされていた場合、改正保険法により導入された重大事由解除の適用の可否が議論されているようです。

 まず、契約内容登録制度によっては、システムの限界などから、十分に多重契約を抑制することができないとの指摘もあるようです。

 また、実務的には、保険の営業の方が、積極的に保険契約を勧誘しているケースもあるような気がしますので、保険業法の規制も考慮して妥当な解決を図るべき場合もあるものと考えられます。




賃料増額請求権の法的性質とその効果

 賃料の増額請求権の法的性質はいわゆる形成権と考えられており,当事者の一方的な意思表示により相当な賃料額について形成的効果が生じると考えられます。

 したがって,賃料増額の効果は,協議や合意,調停・訴訟などの確定の時点で生じるのではなく,増額請求の意思表示が相手方に到達した時点で生じることになります。




不可分債権の概念・考え方

 現行民法428条は,不可分債権を,①その目的が性質上可分であるが当事者の意思表示によってその目的が不可分とされた債権と,②性質上不可分である債権の双方を含む概念として規定しています。

 改正民法428条は,不可分債権を上記①,すなわち,その目的が性質上不可分である場合に限定した概念として整理し,不可分債権の対外的効力について,連帯債権における更改・免除の絶対的効力を定めた民法433条,及び,連帯債権における混同の絶対的効力を定めた435条を除いて,連帯債権の規定を準用しています。

 改正民法432条は,その目的が性質上可分な債権の内,法令の規定又は当事者の意思表示によって連帯債権が成立することを定めています。

 不可分債務については,改正民法430条が,連帯債務者の一人との間の混同の絶対的効力を定める440条を除いて,連帯債務に関する規定を準用しいます。




将来債権の譲渡後に締結された債権譲渡制限特約の効力

 将来債権の譲渡後に債務者と譲渡人との間で譲渡制限特約が締結された場合の効力について,現行民法に規定はありませんでした。

 改正民法は,譲受人が債務者対抗要件を備えるまでに譲渡制限特約を締結した場合には,譲受人が特約の存在を知っていたものとみなし,譲受人が特約の存在を知らなくても債務者は特約があることを前提に履行の拒絶を行うことが可能である旨規定しています。

 一方で,債務者対抗要件を備えたのちに特約が締結された場合には,債務者は譲受人に対し特約を対抗できない旨規定し,ルールを明確にしています。




差押後に取得した債権による相殺が許される場合

 差押後に取得した債権を相殺に供することは原則として行うことができません。

 しかし,改正民法511条2項は,差押時には発生していない債権であっても,差押時に発生原因が存在する債権について相殺を行うことができる旨規定しました。

 差押と相殺に関するいわゆる無制限説の採用に加え,相殺の適用範囲をさらに拡大したものと評価できます。

 同様の規定である破産法71条2項2号に平仄を合わせたものと説明されています。

 債権譲渡と相殺についても,同様の発想に基づき,改正民法469条2項1号が規定されています。




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