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差押後に取得した債権による相殺が許される場合

 差押後に取得した債権を相殺に供することは原則として行うことができません。

 しかし,改正民法511条2項は,差押時には発生していない債権であっても,差押時に発生原因が存在する債権について相殺を行うことができる旨規定しました。

 差押と相殺に関するいわゆる無制限説の採用に加え,相殺の適用範囲をさらに拡大したものと評価できます。

 同様の規定である破産法71条2項2号に平仄を合わせたものと説明されています。

 債権譲渡と相殺についても,同様の発想に基づき,改正民法469条2項1号が規定されています。




相当の対価を得てした財産の処分行為の否認と「隠匿等」の実行の要否

 破産法161条は,破産者が相当の対価を得て財産の処分をした場合においても,否認権を認める規定であり,要件として,「当該行為が,不動産の金銭への換価その他の当該処分による財産の種類の変更により,破産者において隠匿,無償の供与その他の破産債権者を害することとなる処分(「隠匿等の処分」)をするおそれを現に生じさせるものであること。(1号)」,「破産者が,当該行為の当時,対価として取得した金銭その他の財産について,隠匿等の処分をする意思を有していたこと(2号)」が規定されています。

 では,「相当の対価」として取得した財産が隠匿等されないままの状況にある場合,否認権を行使することができるのでしょうか。

 この点については,学説上争いがあります。

 条文上隠匿等の処分をしたことは要求されていないことから,隠匿等されないままの状況である場合にも否認権の行使を肯定する見解と,一般的な有害性の要素がないという観点から否認権の行使は否定されるという見解です。

 この争いは,改正民法424条の2の解釈・適用にも影響を与えるものと考えられますが,実際に倒産法上の否認権なり民法上の詐害行為取消権が行使された場合に,相当の対価を得て取得した財産が隠匿等されない状態の場合には,債務者の主観的要件を主張立証することは困難なのではないかとも考えられます。




賃金減額の方法

 賃金を減額する方法としては、以下のものが考えられます。

 各方法により、有効な要件や効果、考慮するべき要素が異なります。

・ 懲戒処分に基づく方法

・ 業務命令としての降格に基づく方法

・ 就業規則の賃金査定条項に基づく方法

・ 就業規則の変更に基づく方法

・ 労働組合法16条(労働協約の規範的効力)に基づく方法

・ 労働組合法17条(労働協約の一般的拘束力)に基づく方法

・ 労働者との合意に基づく方法




現代人文社「少年事件Beginners ver.2」

 少年事件を取り扱う際に一番参照している少年事件Beginnersの改訂版が出ました。

 「付添人スピリットを学ぶ」では,多田元弁護士,川村百合弁護士,安西敦弁護士のインタビューが掲載されています。

 通読して,実務の議論の動きを確認しておきたいと思います。




山川隆一・渡辺弘編著「労働関係訴訟Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」

 青林書院から標記の本が出されましたので,購入しました。

 裁判官が著者となっている類書として,商事法務の「労働関係訴訟の実務〔第2版〕」,立花書房の「労働事件事実認定重要判決50選」,青林書院の「類型別労働関係訴訟の実務」がありますが,扱っている論点も分量も(価格も),こちらのほうが充実している印象もあります。




就業規則のチェックポイント

 最近、就業規則の見直しの依頼が増えています。

 改正なり変更を検討するべきさしあたりのチェックポイントとして多いのが以下の点です。

・ 事業所の実態に適合的か?

  適合的でない場合には、実態に適合させるべき場合が多いと思います。

  適合していない場合、当初からなのか、当初は実態に適合的だったが年月を経て齟齬が生じたのかについてもまず確認をします。

・ 有期の従業員、パートの従業員に適用される規程は整備されているか?

・ 特別休暇は多すぎないか、取得時期の定めは合理的か?

・ 休職の定めは合理的か?

・ 懲戒の定めは明確か?均衡はとれているか?

・ 最新の法改正は反映されているか? 

 変更が必要な場合には、手続きについても適宜アドバイスしています。

 「不利益」か否か、というよりは、従業員によりよく理解してもらうためにどのようにするべきかについても検討しています。

 全体通して、社会保険労務士の先生と意見交換しながら、十分に時間をかけて対応しています。




改正債権法の勉強方法

 改正債権法の勉強は、現行民法の規定内容と、改正によりどのように規律が変化するのかをひとつづつ確認する作業が、弁護士としては必要だと思います。

 そこで、商事法務の一問一答を読みつつ、該当する項目の条文をポケット六法で確認するという作業をしています。

 ポケット六法には、現行の条文と改正後の条文が続けて掲載されているので、それぞれの条文の確認には便利です。

 並行して、商事法務の「詳解改正民法」で、民法学者が整理した改正の経緯を確認します。

 さらに、現在ジュリストで連載されている改正民法の対談の記事を読んで理解を深めています。

 なお、定型約款については、ビジネス法務の特集が非常に参考になりました。




診療録はいつまで保存するべきか

 医師法24条は,医師は診療をしたときは,遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならないこと,5年間保存しなければならないことを定めている(医師法施行規則23条,医療法施行規則20条も参照)。

 なお,違反した場合には,50万円以下の罰金に処せられる旨規定されています(医師法33条の2)。

 診療録は,医師の備忘録・メモではなく,民事裁判でも刑事裁判でも診療経過を解明する重要資料と位置づけられており,診療録に記載されている事項は存在するものと認められ,記載のない事項は存在しなかったものと推定されると一般に言われています。

 上記のような意味で,医療行為の正当性などの問題が発生したときに,診療録を廃棄していると,医療行為の正当性を立証できなくなってしまうということもあり得ます。  

 不法行為に基づく損害賠償請求は,損害および加害者を知った時から3年で消滅時効により消滅し,不法行為の時から20年の除斥期間で消滅するとされ,診療契約違反に基づく損害賠償請求は10年で消滅時効により消滅するとされています。

 どの時点から起算するかの点も踏まえた検討が必要だと思われます。

 なお,2020(平成32)年4月1日施行の改正民法の影響も考慮する必要があります。




事業場外みなしと裁量労働制のみなし時間の違い

 事業場外労働についての労働時間のみなし時間は,基本的な発想としては,できるだけ実労働時間に近い労働時間をみなすことが求められています。

 このことは,「当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす」という規定にあらわれています。

 一方,同じ「みなし」であっても,裁量労働制のみなし労働時間は基本的な発想が異なります。

 条文では,「対象業務に従事する労働者の労働時間として算定される時間」をみなすものとし,その設定が労使協定の当事者にゆだねられています。

 これらのことから,裁量労働制におけるみなし時間は,実労働時間とは切り離された労働時間を想定している制度ということができます。

 裁量労働制には,専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制が現行労基法上認められており,弁護士の業務は,専門業務型裁量労働制の適用をうけることができる旨定められています。




催告と協議を行う旨の合意による時効の完成猶予の関係

 改正民法151条3項前段は、催告により時効の完成猶予を確保した状態で、改正民法で導入された協議を行う旨の合意を行っても完成猶予の効力を有しないと規定しています。

 催告も協議を行う旨の合意も、時効の更新の措置をとるまでの暫定的な措置と位置付けられていると考えることができます。

 なお、改正民法151条3項後段は、協議を行う旨の合意によって時効の完成が猶予されている間に催告がされても完成猶予の効力を有しない旨定められています。




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