改正債権法は、特定物売買であるか不特定物売買であるかに関係なく、売主は種類・品質・数量に関して契約の内容に適合した目的物を引き渡す債務を負うことを前提にして、引き渡された目的物が契約の内容に適合しないときには、買主の手段として、①修補や代替物の引き渡し等の追完の請求(562条1項本文)、②代金減額請求(563条1項・2項)、③損害賠償の請求(564条)、④契約の解除(564条)を規定しています。
改正民法563条は、引き渡された目的物が契約の内容に適合しない場合には、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、期間内に履行の追完がないときには、買主は不適合の程度に応じて代金減額請求をすることができる旨定めました。
さらに、改正民法563条2項は、催告せずに代金減額請求できる場合として、履行の追完が不能であるとき、売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき、契約の性質又は当事者の意思表示により特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達成することができない場合で売主が履行の追完をしないままその時期を経過したとき、買主が催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるときを定めています。
特定物については,品質・性状は契約の内容とはならない,したがって,現状において引き渡せばよいという特定物ドグマの考え方の根拠として,従来,旧民法483条が援用されてきました。
改正民法483条は,「契約・・・及び取引上の社会通念に照らしてその引渡しをすべき時の品質を定めることができないとき」という要件を追加することで,物の品質が契約上の義務内容となる売買契約等では,「現状」で引き渡しても契約の履行とはならない旨明らかにされています。
なお、しっかりと契約の解釈を行うことにより,「品質を定めることができないとき」という事態は,なかなか想定できないという指摘もあるようです。
改正民法605条の2第2項前段は,不動産の譲渡人及び譲受人が賃貸人の地位を譲渡人に留保する合意をし,その不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは,賃貸人の地位は譲受人に移転しないことを規定しています。
賃借人の保護を図る観点から,改正民法605条の2第2項後段は,上記の譲受人と譲渡人の賃貸借が終了した場合には,譲渡人に留保されていた賃貸人の地位は,譲受人に当然に移転することを規定しています。
賃貸不動産の譲渡が行われた際には賃貸人の地位が当然に移転するという判例の考え方を踏まえて,多数の賃借人から個別に賃貸人の地位を留保する同意を得て資産の流動化を行う(賃貸物件を信託的に譲渡する、譲渡担保に供する、不動産小口化商品として取引するなど)という手間が省けるという実務上のメリットが見込まれるとのことです。
先日、経済産業省が、AI・データ利用に関する契約ガイドラインを公表しました(経産省ホームページ)。
標記の本は、ガイドライン作成の経緯や、今後のAIの進展に向けての課題などの解説と、ガイドライン自体が掲載されています。
弁護士には、AIの特殊性を踏まえた、アドバイスが求められる場面が増えていると感じています。
今年も、名古屋税理士会の各支部対抗のソフトボール大会が開催されました。
ナゴヤドームで行われた昨年は準優勝でしたが、今年は、我が名古屋中村支部Aチームが優勝しました。
関支部に5対4(1回戦),名古屋東支部に5対2(2回戦),名古屋中支部に7対0(準決勝),中川支部に4対0(決勝)で勝利しました。
昨年に引き続き、僕はキャッチャーで出場しました。
優勝賞金は、祝勝会と最新のバット購入に充てられる予定です。
「アルゴリズム・AIの利用を巡る法律問題研究会」報告書という形式で,日本銀行のサイトにアップされています。
メンバーは,有吉尚哉,井上聡,加藤貴仁,加毛明,神作裕之,神田秀樹,佐伯仁志,道垣内弘人,森下哲朗の各先生とのことです。
信託の設定の方法は,信託法3条に定めのあるとおり,信託契約,遺言信託,自己信託の3つの方法があり,不動産を信託する場合の登記申請の方法も,それぞれの信託の方法により異なります。
信託契約の場合には,受託者が登記権利者,委託者が登記義務者となって登記申請をすることになりますが,通常の所有権移転登記の申請に加えて,受託者が信託の登記を単独申請するという形式をとることが不動産登記法98条に定められており,法務局に提出すべき書類についても,通常の所有権移転登記の添付書類に加えて,不動産登記法97条に定められている信託に関する情報をまとめた書面も提出する必要があります。
遺言信託の場合にも,信託契約の場合と同様に所有権移転登記と信託の登記を併せて申請することになりますが,この場合の所有権移転登記については,遺贈による登記申請と同様に遺言執行者の有無により必要とされる手続きが異なります。
自己信託の場合には,所有権についての権利の変更の登記と信託の登記を併せて申請するという形式をとりますが(不登法第98条③),受託者が登記権利者兼義務者となる点,法務局に提出すべき書類に公正証書(信託法第3条三)が含まれる点などが特徴であり,注意が必要となる点です。
不動産を信託する際の解説については,いろいろな書籍に記載がありますが,信託を設定する際には,司法書士に依頼することが必要といえます。
残余財産受益者は,信託行為において残余財産の給付を内容とする受益債権の受益者であり,帰属権利者とは,信託行為において残余財産の帰属するべきものとして指定された者を指します。
信託の終了前には帰属権利者に権利はなく,信託が清算されるに至って受益者とみなされます。
なお,信託行為中に残余財産の受益者もしくは帰属権利者の指定がない場合には,信託行為に委託者またはその相続人その他の一般承継人を帰属権利者と指定する定めがあるものとみなされることが,信託法182条2項に定められています。
委託者またはその相続人その他の一般承継人がいない場合には,残余財産は清算受託者に帰属します(信託法182条3項)。
残余財産が予想外の方に承継されないように,信託行為によって,残余財産受益者または帰属権利者を定めておくべきです。
不動産は全国各地の法務局が登記簿という形で情報を公開していますが,不動産について権利変動が生じた場合には法務局に申請して最新の情報を登記簿に反映させる必要があります。
不動産を信託財産とする場合にも登記を申請する必要があります。
信託の登記を申請した場合,登記簿上はそれまでの所有者から受託者に権利が移転するとともに,信託目録が作成されて信託に関する情報が公開されることになります。
不動産の名義が受託者になることについての抵抗感がある場合も考えられるところです。
信託の登記がされないと,信託行為で当該不動産の売却や担保権のを設定が受託者の権限と定められていても,事実上実行することが困難となるという弊害も想定されます。
信託自体が終了した場合には,かつての所有者に所有権が戻ったり,その方が亡くなっていればその相続人に所有権が移転したりすることになりますが,信託行為において想定できる範囲で明確に規定しておくことが推奨されています。
自社株式を信託財産として、オーナー経営者を指図権者とする信託を組成することにより、支配権を継続しながら事業承継を行うことが考えられます。
一方、平成30年度税制改正で適用要件が緩和された事業承継税制では、税負担は軽くなることが期待できるものの、オーナー経営者から後継者へ支配権が移転することが要求されます。
各会社の実情に応じて、選択することになります。
なお、一般社団法人信託協会は、平成30年度税制改正に関する要望において、「株式の信託を利用した事業承継について、納税猶予制度の適用対象とすること。」を要望しています。