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受託者の公平義務と民事信託

 信託法33条は,「受益者が二人以上ある信託においては,受託者は,受益者のために公平にその職務を行わなければならない。」と,いわゆる受託者の公平義務を定めています。

 以下のような民事信託の事例で,受託者の公平義務が議論されています。

 収益物件を信託財産とし,受託者が同物件の売却権限を有すること,一次受益者の生きている間は同物件からの収益を分配し,一次受益者がなくなった後は二次受益者に残余財産を分配するという受益者連続信託を想定した場合,同物件の価値の下落との関係で,受託者による同物件の売却のタイミングによっては,片方の受益者を害すると評価でき得る。

 信託の目的などを適切に設定することにより,受託者の権限行使に不当な負担がかからないような工夫が必要と考えられます。




休職期間満了による雇用契約の終了と労働者の対応

 いわゆる私傷病休職の休職期間満了による雇用契約の終了を主張する使用者は、就業規則に規定された休職命令の発令及び休職期間満了の事実を主張立証することになります(私傷病休職制度は、一定期間私傷病で労働できないことを理由に直ちに労働契約関係を解消することが労働者に過酷であることを踏まえて、解雇または退職を一定期間猶予する制度と位置付けられています。)。

 対象となる労働者としては、復職の申し入れと債務の本旨に従った労務の提供ができる程度に病状が回復したことを立証できれば、雇用契約終了の効果を妨げることができると解されています。




認知症の事前対策~信託の活用場面

(事例)

 高齢者甲の財産は自宅不動産と金銭であるが,甲が,将来老人ホーム等に入居することになった場合には,自宅不動産を売却し,入居費用や生活費,介護費用などに充てたいと考えている。

(検討事項)

 甲が自宅不動産を売却したい時点,あるいは,売却するべき時点において,甲の判断能力が低下している場合(後見相当と判断されるような場合)には,売却が困難となる事態が想定される。

 また,甲の判断能力が後見相当に至る前の段階でも,甲が自宅不動産や金銭の管理を十分にできない不安もある。

(信託の概要)

⑴ 信託目的

 将来における甲の意思能力の減退または喪失があっても,信託財産を管理すること,自宅不動産に甲を居住させること,甲が自宅不動産に居住することが困難になった場合には自宅不動産を売却すること,信託財産に属する金銭から甲に対し,生活費,介護費,医療費等を支払うことにより,甲の安定した生活を支援することを目的とする。

⑵ 信託行為

  甲と長男Aとの信託契約

⑶ 信託財産

  自宅不動産,金銭

⑷ 当事者等 

  委託者:甲

  当初受託者:長男A

  後継受託者:次男B

  受益者:甲

⑸ 信託期間・信託の終了事由

  甲が死亡するまで

(その他の事項)

 信託口口座の開設,公証人との調整,任意後見契約の締結,遺言の必要性,弁護士の継続的な関わり方 など




成年年齢の引下げ等を内容とする改正民法の施行日

 平成30年6月13日に成立し,同月20日に公布された,成年年齢の引下げを内容とする「民法の一部を改正する法律」は,平成34年(2022年)4月1日に施行されることになっています。

 ①民法4条が定めている成年年齢を20歳から18歳に引き下げること,②民法731条が定める女性の婚姻可能最低年齢を16歳から18歳に引き上げることが,民法自体の改正の主な内容です。




労災保険給付の不支給処分取消訴訟に対する会社側の補助参加の利益

 いわゆる労災事故と思われる事故が発生した場合、被災労働者が労災保険給付請求を先行させたうえで、支給決定後に会社を被告に安全配慮義務違反に基づく民事訴訟を提起することが行われることがあります。

 まず会社が、労災保険給付の不支給処分の取消訴訟に補助参加する目的としては、被災労働者が後続する民事訴訟で不利とならないように取消訴訟に参加することが考えられます。

 しかしながら、取消訴訟での業務起因性の判断が、安全配慮義務の判断に事実上の影響力もないと考えられるため、補助参加の利益はないと一般に考えられています。

 次に、労災保険のメリット制を前提として、業務起因性ありという判断で不支給処分が取消しされることにより保険料が上がることを防ぐ目的で補助参加するということが考えられます。

 この場合には、会社の法律上の利害関係に関わることは明らかであり、補助参加の利益があると考えられています。

 なお、メリット制の適用により引き上げられた保険料の認定処分について、会社側が保険料の引き上げの理由となった保険給付支給処分の違法性を争うことができるかについては、①原告適格の問題(行政事件訴訟法9条1項)と、②違法性の承継の有無が問題となりますが、東京地判平成29年1月31日及び東京高判平成29年9月21日は、①を肯定し、②については、保険給付処分が取り消されたり無効なものでない限りは違法の主張ができないと判断しています。




固定資産税における台帳課税主義

 固定資産税は、固定資産の所在する市町村が課税する税であり、固定資産の所有の事実に着目して課される財産税と位置付けられています。

 いわゆる台帳課税主義とは、固定資産課税台帳に登録されたところに従って課税されるルールで、縦覧の制度により課税の公平を確保する仕組みがあります。

 地方税法341条9号は、固定資産課税台帳の種類として、土地課税台帳、土地補充課税台帳、家屋課税台帳、家屋補充課税台帳、償却資産課税台帳を規定しています。

 




録音媒体の証拠能力と否定された事例

 民事訴訟における録音媒体の証拠能力については,一般的には証拠能力を有するものとされていますが,著しく反社会的な方法を用いて収集されたものであるときには証拠能力が否定されると考えられています。

 労働関係訴訟の実務〔第2版〕284頁で紹介されている東京高判平成28年5月29日は,証拠収集の方法及び態様,侵害される権利利益の要保護性,訴訟における重要性等を総合考慮の上,その証拠を採用することが訴訟上の信義則に反するといえる場合に証拠能力が否定されるとし,学校法人が非公開で録音しない運用とされ,委員に守秘義務が課されているハラスメント防止委員会の審議における委員の発言を,何者かが無断録音した媒体について結論として証拠能力を否定しています。

 違法性の程度が高いことに加え,証拠価値が乏しいことも認定されています。




SFCG破産手続きの進捗状況

 平成21年4月に破産手続き開始決定がなされた株式会社SFCGの第22回債権者集会が平成31年3月20日に東京地裁で開催される予定とのことです(SFCG破産管財人室ホームページ)。

 調査報告書を確認することにより,手続きの状況を知ることができます。

 各アセットファイナンスが設定していた各種担保権の抹消手続きの処理についての報告もなされています。




会社法改正要綱案

 2019年に成立する見込みの会社法改正要綱案の概要が報道されています。

 上場会社・非上場会社の大会社について社外取締役の設置義務化,株主提案権の上限を10にすること,役員報酬の明確化,株主総会資料の電子提供が主な内容となっています。




年末年始に向けた住宅対象侵入盗の未然防止対策のお願い

 愛知県警察本部から愛知県弁護士会宛てに通知が来たようです。

 以下,一部引用して紹介させていただきます。

【防犯対策】

1 一般的な対策

・出かける前に必ず施錠確認し、多額の現金や貴重品は保管しないようにしましょう。(県内の住宅対象侵入盗の約3割が無施錠からの侵入です。)

・夜に家を空けるときは、室内や階段等の電気をつけたままにするなど、在宅を装いましょう。

・長期間家を空けるときは、新聞販売店に留守中の配達停止を依頼して、留守を悟られないようにしましょう。

2 扉、窓等関口部の強化

 扉には補助錠やガードプレート、窓には補助錠や防犯フィルム等を貼付するなど関口部を強化しましょう。また、扉や窓が開放されると吹鳴する警報機の設置も有効です。

3 機械警備、防犯カメラの導入

・機械警備の導入により早期に異常を知らせましょう。

・防犯カメラと警戒中を示すプレートを設置し、対策を外部にアピールしましょう。

4 その他

 犯人の中にはSNS等を使って情報収集を行っている者もおりますので、SNSなどで、個人情報や自分の居場所を発信しないようにしましょう。

  複数の対策を重ねることで犯人が嫌う環境にしましょう。




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