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労災保険給付の不支給処分取消訴訟に対する会社側の補助参加の利益

 いわゆる労災事故と思われる事故が発生した場合、被災労働者が労災保険給付請求を先行させたうえで、支給決定後に会社を被告に安全配慮義務違反に基づく民事訴訟を提起することが行われることがあります。

 まず会社が、労災保険給付の不支給処分の取消訴訟に補助参加する目的としては、被災労働者が後続する民事訴訟で不利とならないように取消訴訟に参加することが考えられます。

 しかしながら、取消訴訟での業務起因性の判断が、安全配慮義務の判断に事実上の影響力もないと考えられるため、補助参加の利益はないと一般に考えられています。

 次に、労災保険のメリット制を前提として、業務起因性ありという判断で不支給処分が取消しされることにより保険料が上がることを防ぐ目的で補助参加するということが考えられます。

 この場合には、会社の法律上の利害関係に関わることは明らかであり、補助参加の利益があると考えられています。

 なお、メリット制の適用により引き上げられた保険料の認定処分について、会社側が保険料の引き上げの理由となった保険給付支給処分の違法性を争うことができるかについては、①原告適格の問題(行政事件訴訟法9条1項)と、②違法性の承継の有無が問題となりますが、東京地判平成29年1月31日及び東京高判平成29年9月21日は、①を肯定し、②については、保険給付処分が取り消されたり無効なものでない限りは違法の主張ができないと判断しています。