相続人に対する贈与や遺贈は特別受益として扱われ,被相続人から遺産の先渡しを受けたものとして,遺産分割における取り分を計算することになります。
具体的には,その贈与等の価額を遺産の価額に持ち戻した上で,遺産の総額に各相続人の相続分を乗じ,贈与等を受けた相続人は贈与等の価額を差し引いて遺産分割における各自の取り分を計算します。
このような持戻し計算をすることにより,贈与等があっても贈与等を受けた相続人の最終的な取り分は変わらないことになってしまいます。
そこで,被相続人が特定の贈与等について,その価額を遺産に含めない意思を示していた場合(いわゆる持戻し免除の意思表示がされていた場合)には,このような計算をする必要がなくなり,最終的な取り分が増えることになります。
遺贈又は死因贈与により配偶者居住権を取得した場合には、配偶者居住権の価値相当額を当該配偶者が取得したことになるため、特別受益に該当することになりますが、婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が,配偶者に対してなした配偶者居住権の遺贈については,持戻し免除の意思表示が推定されることが、改正民法1028条3項が,改正民法903条4項を準用していることから導かれます。
時効取得に基づく一時所得の年度帰属は,民法学説における援用の議論や,税法上の観点等から,①占有開始時,②時効完成時,③時効援用時,④時効取得について判決等が確定した場合,が理論上考えられます。
東京地裁平成4年3月10日では,納税者が④,課税庁が③を主張しましたが,同判決は、課税庁の主張した③時効援用を主張した年度に帰属する旨判示しました。
時効取得の主張が認められるためには,短くても10年の占有継続が要件ですから(民法162条1項,同2項参照),時効取得の援用ができる事実関係の下では,①の立場の主張では、自動的に課税の消滅時効期間が経過していることになり(国税通則法72条1項,地方税法18条1項は,租税の徴収権は原則として法定納期限から5年間行使しないことにより時効により消滅する旨規定しています〔金子宏租税法〔23版〕871ページ〕。)、およそ時効取得が認められた場合には課税ができないことを意味することになり、「筋が悪い」主張という印象を受けます。
改正民法465条の2第2項は、「一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約」を根保証契約と定義し、書面又は電磁的記録で「極度額」を定めなければ無効と定めています。
立法担当者の解説では、不動産の賃借人が賃貸借契約に基づいて負担する債務の一切を個人が保証する場合、代理店等を含めた取引先企業の代表者との間で損害賠償債務や取引債務等を保証する場合、介護等の施設への入居者の負う各種債務を保証する場合が挙げられていますが、「一定の範囲に属する不特定の債務」に該当する債務に該当するものが多数あるものと考えられます。
弁護士としては、該当しそうな契約について、その類型に応じて、限度額をいくらに設定するかの検討も求められることになります。
取引基本契約に基づいて継続的取引を行っている場合には(このような取引に基づいて発生する債務は、「一定の範囲に属する不特定の債務」に該当するものと考えられます。)、取引残高が極度額を超えるとその超過部分は保証の対象外となることから、取引残高の確認がより一層求められることになります。
1 まず、以下の行政通達がありますが、一見して、「使用者の具体的指揮監督」、「労働時間の管理」、「指示」という概念の関係があいまいという印象をうけます。
「事業場外労働に関するみなし労働時間制の対象となるのは、事業場外で業務に従事し、かつ、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難な業務であること。したがって、次の場合のように、事業場外で業務に従事する場合であっても、使用者の具体的な指揮監督が及んでいる場合については、労働時間の算定が可能であるので、みなし労働時間制の適用はないものであること。
① 何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合
② 事業場外で業務に従事するが、無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら労働している場合
③ 事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けたのち、事業場外で指示どおりに業務に従事し、事業場にもどる場合」
2 最高裁平成26年1月24日判決は、事業場外労働みなし制の要件である労働時間算定困難性について、使用者が労働者の勤務状況を具体的に把握することが困難か否かという観点から判断しています。
労働時間の算定が困難であることと使用者の指揮監督とは本来別の次元であると考えられることから、理論的には相当と考えられますが、実務上の問題としては、事業場外労働みなし制が有効に認められるためには、どの程度の困難さが求められるかということになります。
相続人ではない者(相続人の配偶者等)が被相続人の療養看護に努めるなどの貢献を行った場合であっても,遺産の分配を受けることができないという不公平を解消し,被相続人の療養看護等に尽くした者の貢献に報いるために,相続人に対し,その貢献に応じた額の金銭(特別寄与料)の支払を請求することができるようにするため,特別の寄与の制度が新設されました。
これにより,相続人以外の被相続人の親族が,被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与をした場合,その親族は,相続の開始後相続人に対し,寄与に応じた額の金銭の支払いを請求することができることになります。
特別寄与料の額は,寄与の時期,方法及び程度,相続財産の額その他一切の事情を考慮して,特別寄与料の額を定めることとsれており(1050条3項),特別寄与料の額は,被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができないことが定められています(同条4項)。
権利行使期間については,家庭裁判所に対する調停・審判の申立ては,①特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月以内,②相続開始の時から1年以内にしなければならないとされ(1050条2項,いずれも除斥期間),最長でも相続開始時から1年以内に申立てる必要があります。
特別寄与料の額に相当する金額を被相続人から遺贈により取得したものとみなし,相続税が課税されることになりますが,相続税の計算では,特別寄与者は「一親等の血族や配偶者以外の者」に該当するため2割加算する必要があることになります(相続税法18条1項)。
準委任契約等の財産権上の請求権も排除されていないこと等からも,このような税務上の取扱には疑問も残るところです。
なお,特別寄与料は,相続人の相続税の課税価格から控除されるため,相続税申告後に特別寄与者から請求を受けた場合,更正の請求をすることができることが規定されています(相続税法32条1項7号)。
もうすぐ出るようです(弘文堂ホームページ)。
弁護士法の解説本は類書もありますが,やはりこの本が一番参考になると思います。
株式が複数の相続人に相続された場合,法定相続分に従って当然に分割されるのではなく,1株1株について共有に属することになります。
会社法106条本文は,株式が共有に属するときに権利行使する際には,当該共有者は,株式について権利を行使する者を1人定めて会社に対し通知する必要があることを規定しています。
権利行使者は,持ち分の価格の過半数で決定することになります(最高裁平成9年1月28日判決)。
旧法の下では,遺留分減殺請求権を行使すると,当然に物権的効果が生じ,遺贈等の目的財産は遺留分権利者と遺贈等を受けた者との間で共有になることから,遺贈等の目的財産が事業用財産であった場合には,円滑な事業承継を困難にし,また,共有関係の解消をめぐって新たな紛争が生じるという問題が指摘されていました。
改正法により金銭債権化され,遺留分侵害者が贈与等により取得した財産そのものの全部又は一部が遺留分権利者に移転することはなくなり,当該財産をめぐる法律関係の複雑化,事後的な権利変動が防止される点で,被相続人の意思に沿って,事業承継が進みやすいと考えられます。
一方で,旧法では,遺留分侵害者としては,贈与等により取得した対象財産の減殺(共有化を含む。)を甘受するか,金銭で弁償するか(旧1041条項)の選択が可能であったが,改正法では,金銭支払い以外の選択の余地がない点が問題となる事案もあると考えられます。
実務では,遺産分割は遺産分割の時に実際に存在する財産を共同相続人間で分配する手続きであるという考え方に従って,共同相続人の一人が遺産分割前に遺産の一部を処分した場合には,その時点で実際に存在する財産基準に遺産分割を行い,当該処分によって当該共同相続人が得た利益も遺産分割において考慮しないという取扱いがされていました。
そうすると,当該処分をした者の最終的な取得額が当該処分を行わなかった場合と比べて大きくなり,他の共同相続人の遺産分割における取得額が小さくなるという計算上の不公平が生じ得ることとなり問題となっていました。
例外的に,遺産分割の当事者の間で当該処分された財産を遺産分割の対象とする旨の合意が成立した場合等には,その財産を遺産分割の対象とする取扱いがされていました。
民法906条の2は以下のとおり定め、上記のような不都合を解消するようにしています。
⑴ 共同相続人全員の同意によって,処分された財産が遺産の分割時に存在するものとみなすことができる(906条の2第1項)。
⑵ 共同相続人の一人が遺産分割前に遺産に属する財産を処分した場合には, 当該共同相続人の同意を得ることを要しない(906条の2第2項)。
配偶者居住権が、一旦成立したあと、配偶者が障害等で施設に入所するなどして不要となる場合があり得ます。
また,配偶者居住権を処分して入居資金を用意したい場合には,配偶者居住権を居住建物の所有者に買い取ってもらうか,同所有者の承諾を得たうえで,建物を第三者に賃貸する方法が一応考えられます。
しかし,居住建物の所有者に対する買取請求権の制度は検討された結果,立法化されなかったため,建物所有者の上記承諾を得られるかは制度上不確定です。
配偶者と居住建物の所有者との間で,予め,「配偶者が存続期間満了前に配偶者居住権を放棄するときは,居住建物の所有者が,配偶者に対して残存期間分の価値相当額の金銭を支払うこと」を合意しておくことが一応検討されているようですが,アドバイスを行う弁護士としては,以下の通達の存在を念頭に置く必要があります。
<通達 配偶者居住権が合意等により消滅した場合>
9-13の2 配偶者居住権が,被相続人から配偶者居住権を取得した配偶者と当該配偶者居住権の目的となっている建物の所有者との間の合意若しくは当該配偶者による配偶者居住権の放棄により消滅した場合又は民法第1032条第4項((建物所有者による消滅の意思表示))の規定により消滅した場合において,当該建物の所有者又は当該建物の敷地の用に供される土地(土地の上に存する権利を含む。)の所有者(以下9―13の2において「建物等所有者」という。)が,対価を支払わなかったとき,又は著しく低い価額の対価を支払ったときは,原則として,当該建物等所有者が,その消滅直前に,当該配偶者が有していた当該配偶者居住権の価額に相当する利益又は当該土地を当該配偶者居住権に基づき使用する権利の価額に相当する利益に相当する金額(対価の支払があった場合には,その価額を控除した金額)を,当該配偶者から贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。(令元課資2-10追加)
(注) 民法第1036条((使用貸借及び賃貸借の規定の準用))において準用する同法第597条第1項及び第3項((期間満了及び借主の死亡による使用貸借の終了))並びに第616条の2((賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了))の規定により配偶者居住権が消滅した場合には,上記の取り扱いはないことに留意する。