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取得時効に基づく一時所得の年度帰属

 時効取得に基づく一時所得の年度帰属は,民法学説における援用の議論や,税法上の観点等から,①占有開始時,②時効完成時,③時効援用時,④時効取得について判決等が確定した場合,が理論上考えられます。
 東京地裁平成4年3月10日では,納税者が④,課税庁が③を主張しましたが,同判決は、課税庁の主張した③時効援用を主張した年度に帰属する旨判示しました。
 時効取得の主張が認められるためには,短くても10年の占有継続が要件ですから(民法162条1項,同2項参照),時効取得の援用ができる事実関係の下では,①の立場の主張では、自動的に課税の消滅時効期間が経過していることになり(国税通則法72条1項,地方税法18条1項は,租税の徴収権は原則として法定納期限から5年間行使しないことにより時効により消滅する旨規定しています〔金子宏租税法〔23版〕871ページ〕。)、およそ時効取得が認められた場合には課税ができないことを意味することになり、「筋が悪い」主張という印象を受けます