遺留分の金銭債権化と事業承継との関係
旧法の下では,遺留分減殺請求権を行使すると,当然に物権的効果が生じ,遺贈等の目的財産は遺留分権利者と遺贈等を受けた者との間で共有になることから,遺贈等の目的財産が事業用財産であった場合には,円滑な事業承継を困難にし,また,共有関係の解消をめぐって新たな紛争が生じるという問題が指摘されていました。
改正法により金銭債権化され,遺留分侵害者が贈与等により取得した財産そのものの全部又は一部が遺留分権利者に移転することはなくなり,当該財産をめぐる法律関係の複雑化,事後的な権利変動が防止される点で,被相続人の意思に沿って,事業承継が進みやすいと考えられます。
一方で,旧法では,遺留分侵害者としては,贈与等により取得した対象財産の減殺(共有化を含む。)を甘受するか,金銭で弁償するか(旧1041条項)の選択が可能であったが,改正法では,金銭支払い以外の選択の余地がない点が問題となる事案もあると考えられます。
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