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配偶者居住権を換金する必要が生じた場合

 配偶者居住権が、一旦成立したあと、配偶者が障害等で施設に入所するなどして不要となる場合があり得ます。

 また,配偶者居住権を処分して入居資金を用意したい場合には,配偶者居住権を居住建物の所有者に買い取ってもらうか,同所有者の承諾を得たうえで,建物を第三者に賃貸する方法が一応考えられます。

 しかし,居住建物の所有者に対する買取請求権の制度は検討された結果,立法化されなかったため,建物所有者の上記承諾を得られるかは制度上不確定です。

 配偶者と居住建物の所有者との間で,予め,「配偶者が存続期間満了前に配偶者居住権を放棄するときは,居住建物の所有者が,配偶者に対して残存期間分の価値相当額の金銭を支払うこと」を合意しておくことが一応検討されているようですが,アドバイスを行う弁護士としては,以下の通達の存在を念頭に置く必要があります。

<通達 配偶者居住権が合意等により消滅した場合>

9-13の2 配偶者居住権が,被相続人から配偶者居住権を取得した配偶者と当該配偶者居住権の目的となっている建物の所有者との間の合意若しくは当該配偶者による配偶者居住権の放棄により消滅した場合又は民法第1032条第4項((建物所有者による消滅の意思表示))の規定により消滅した場合において,当該建物の所有者又は当該建物の敷地の用に供される土地(土地の上に存する権利を含む。)の所有者(以下9―13の2において「建物等所有者」という。)が,対価を支払わなかったとき,又は著しく低い価額の対価を支払ったときは,原則として,当該建物等所有者が,その消滅直前に,当該配偶者が有していた当該配偶者居住権の価額に相当する利益又は当該土地を当該配偶者居住権に基づき使用する権利の価額に相当する利益に相当する金額(対価の支払があった場合には,その価額を控除した金額)を,当該配偶者から贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。(令元課資2-10追加)

(注) 民法第1036条((使用貸借及び賃貸借の規定の準用))において準用する同法第597条第1項及び第3項((期間満了及び借主の死亡による使用貸借の終了))並びに第616条の2((賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了))の規定により配偶者居住権が消滅した場合には,上記の取り扱いはないことに留意する。