旧法下での相続させる旨の遺言は、改正法では、「遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言」と定義されたうえで、受益相続人が法定相続分を超える部分についての対抗要件を備えるために必要な行為をすることも遺言執行者の権限に含まれることが規定されました(1014条2項)。
不動産登記実務では、相続させる旨の遺言では、不動産登記法63条2項による受益相続人が単独で登記申請できることになっていますが、最高裁平成11年12月16日判決が、相続させる旨の遺言の事案で、受益相続人以外の相続人が自己への所有権移転登記を経由しているときに、遺言執行者が当該移転登記の抹消登記手続きのほか、受益相続人への真正な登記名義の回復を原因とする登記請求権を有すると判示していることも参考にされたものです。
ついにSFCGによる最後配当が行われ,過払金回収についての代理人業務が終了しました。
10年以上の付き合いになる依頼者さんのファイルは,かなり色あせています。
求人票記載の労働条件と実際の労働条件とが異なる場合の法的な処理については議論があります。
京都地裁平成29年3月30日判決は、求人票記載の労働条件と就労開始後における実際の労働条件とが異なる事案において、①就労開始後の契約書面に対する労働者の署名等を労働条件の変更に向けた同意の問題と位置付け、②同意の認定に際し、最高裁平成28年2月19日判決(山梨県民信用組合事件)の法理を参照し、結論として、求人票記載の労働条件による労働契約の成立を認めました。
同最高裁判例は,就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に関する同意には,「労働者の自由な意思に基づいていされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在する」ことを要すると判示しています。
京都地裁の事案は,有期契約か無期契約か、定年制の有無等に違いのある事案であり、求人票記載の労働条件は一応の見込みとはいえず記載の条件で労働契約が成立したと認定される場合には、変更の同意の有効性は厳しく判断されることになりますが、求人票記載と異なる労働条件となることについて、採用面接、採用通知、書面の署名押印の時点で使用者からの十分な説明がないとの認定がされていることにも注意が必要です。
求人票の記載が申込みの誘引とは単純に認められないことが明らかにされたという評価も可能だと思います。
店舗の外装や店内構造、店内の内装等の店舗の外観が不正競争防止法2条1項1号の「商品等表示」に該当するかが問題になることがあります。
商品等表示に該当する場合には、看板等の廃棄(不正競争防止法3条)や損害賠償(不正競争防止法4条)が認められることになります。
名古屋地裁平成30年9月13日判決は、店舗外観が営業主体の店舗イメージを具現することことを目的に選択され特定の出所を表示する機能を有する場合があり、①客観的に他の同種店舗の外観とは異なる顕著な特徴を有しており、②特定の事業者によって継続的・独占的に使用された期間の長さや営業の態様等に関する宣伝の状況等により需要者において当該外観を有する店舗における営業が特定の事業者の出所を表示するものとして広く認識されるに至ったことが必要との判断をしています。
令和元年7月施行版の不正競争防止法の逐条解説が公開されています(経済産業省ホームページ)。
旧民法1013条は、遺言執行者がある場合相続人は相続財産の処分その他遺言の執行を妨げる行為をすることができない旨定めており、判例は1013条に違反する相続人による相続財産の処分を絶対的に無効であるという立場でした。
しかし、遺言執行者がいない場合について、旧法下の最高裁判例では受遺者と相続財産を差し押さえた相続人の債権者との関係は対抗関係に立つとしており、このような結論の差異が正当化できるかについて議論がありました。
新民法1013条2項は、相続人と取引関係に立つ相手方は通常遺言の内容を知り得る立場にないにもかかわらず遺言執行者の有無で取引の有効性に違いがでることを避けるという観点、及び、遺言執行者による円滑な遺言の執行を確保するという観点から、「前項の規定に違反した行為は無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。」と規定しました。
民事訴訟法3条の11は、「裁判所は、日本の裁判所の管轄に関する事項について、職権で証拠調べをすることができる。」と定めています。
人事訴訟についても、この規定が適用されることが人事訴訟法1条により導かれますが、人事訴訟法29条1項は、「人事に関する訴えについては、民事訴訟法第3条の2から第3条の10まで、第145条3項及び第146条3項の規定は、適用しない。」と規定しています。
日弁連が,大崎事件再審請求棄却決定に抗議する会長声明をだしています(日弁連ホームページ)。
最高裁決定は,再審開始を認めることが,著しく正義に反するとしています。
弁護士出身の担当裁判官が2名いるにもかかわらず,検察官の特別抗告には理由がないと判断しながら職権で再審開始決定を取り消し自判した点,全員一致の決定であることについて残念な印象をもちます。
改正民法により、相続人の配偶者等の相続人ではない者が、被相続人の療養看護に努めるなどの貢献を行った場合に、相続人ではない被相続人の親族が、相続人に対して、貢献に応じた額の金銭の支払いを請求できるという特別寄与の制度が新設されました。
寄与分における「特別の寄与」とは、被相続人と相続人の身分関係に基づいて通常期待される程度の貢献を超える高度なものと解されています。
一方、特別寄与における「特別の寄与」は、特別寄与者が被相続人に対して民法上の義務を負わない者も含まれることから、その者の貢献に報いるの相当と認められる程度の顕著な貢献があったことを意味するものと解すべきとされています(「東京家庭裁判所家事第5部(遺産分割)における相続法改正を踏まえた新たな実務運用(家庭の法と裁判号外)」116ページ)。
特別寄与料の支払いについて当事者間に協議が調わないときや協議ができないときには、特別寄与料を請求する者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができます(民法1050条2項)。
特別寄与料の請求は、寄与分とは異なり、遺産分割に関する事件が家庭裁判所に係属していなくても家庭裁判所に請求できることとされています。
改正民法1037条1項及び3項で、配偶者短期居住権が新設されました(令和2年4月1日から施行されます)。
配偶者短期居住権は、存続期間が満了した時、1037条3項による居住建物取得者による消滅請求がなされた場合、配偶者が配偶者居住権を取得した時、配偶者が死亡した時、居住建物が全部滅失等したとき等に消滅します。
配偶者が配偶者居住権を取得した場合を除いて配偶者短期居住権が消滅した場合の配偶者は、居住建物を返還する必要があります(民法1040条1項本文。ただし書では、配偶者が居住建物について共有持分を有する場合には、配偶者短期居住権が消滅したことを理由に返還を求めることはできないことが規定されています。)。
遺産分割が早期に終了した場合にも、6か月間は居住建物の無償使用が保障されることが、最高裁平成8年12月17日判決を前提とした実務に大きな影響がある点だと思います。
6月6日に衆議院にて可決し,成立しました。
1 使命規定
司法書士法1条が,「司法書士は,この法律の定めるところによりその業務とする登記,供託,訴訟その他の法律事務の専門家として,国民の権利を擁護し,もって自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とする。」と改正されました。
2 懲戒規定
⑴ 懲戒権者が,「法務局又は地方法務局の長」から,「法務大臣」に改正されました。
⑵ 懲戒の除斥期間が7年とされました。
⑶ 戒告処分の際に聴聞の機会が与えられることが定められました。
3 司法書士法人規定
社員一人の司法書士法人の設立が認められました。