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配偶者居住権と持戻し免除の意思表示

 相続人に対する贈与や遺贈は特別受益として扱われ,被相続人から遺産の先渡しを受けたものとして,遺産分割における取り分を計算することになります。

 具体的には,その贈与等の価額を遺産の価額に持ち戻した上で,遺産の総額に各相続人の相続分を乗じ,贈与等を受けた相続人は贈与等の価額を差し引いて遺産分割における各自の取り分を計算します。

このような持戻し計算をすることにより,贈与等があっても贈与等を受けた相続人の最終的な取り分は変わらないことになってしまいます。

 そこで,被相続人が特定の贈与等について,その価額を遺産に含めない意思を示していた場合(いわゆる持戻し免除の意思表示がされていた場合)には,このような計算をする必要がなくなり,最終的な取り分が増えることになります。

 遺贈又は死因贈与により配偶者居住権を取得した場合には、配偶者居住権の価値相当額を当該配偶者が取得したことになるため、特別受益に該当することになりますが、婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が,配偶者に対してなした配偶者居住権の遺贈については,持戻し免除の意思表示が推定されることが、改正民法1028条3項が,改正民法903条4項を準用していることから導かれます。