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所得税法157条1項の同族会社の行為計算否認規定

 所得税法157条1項で規定されているいわゆる同族会社の行為計算否認規定の適用は、経済的、実質的見地において当該行為又は計算が合理的経済人の行為として不合理、不自然なものと認められるか否かが基準とされ、①異常もしくは変則的か、②租税回避以外に正当で合理的な理由もしくは事業目的がないかという観点から、所得税の負担が不当に減少されていないかが判断されることと一般に考えられています。

 同規定が適用された場合に,他の税目,例えば法人税法上の課税の調整がされるべき場合については,それを調整する規定として平成18年に所得税法157条3項が定められたと考えられているようです。

 なお,同規定の適用が問題と一応なった裁判例として,大阪高判平成30112TAINS Z8882207、大阪地判平成30419TAINS Z888‐2201があります。

 厳密には,訴訟段階では,必要経費該当性を否定し,同族会社の行為計算否認規定の適用の解釈論及び具体的なあてはめまでは検討されていません。

 ほかに,理由付記が不十分である旨の納税者側の主張もありましたが,認められていません。

 上記裁判の納税者側の代理人弁護士には,同志社大学の占部教授がついており,同教授の関連する最近の論考として,「所得税法における必要経費の概念と判断基準 : 直接関連性要件と必要性要件はどのように用いられているか 」があります。