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商法512条と追加変更工事に基づく代金請求の関係

 追加変更工事の合意の存在が争われる場合に,「商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは,相当な報酬を請求することができる。」と定める商法512条に基づく相当額の報酬が請求される場合があります。

 しかし,同条の「他人のため」の要件をみたすには,民法697条の事務管理の要件をみたす必要がありますが,①施主の利益のためにする意思に基づいて行われること,②施主の意思及び利益に反しないことという要件をみたすのは難しいことが多いと思われます。

 さらに,商法512条は任意規定であり,当事者間において工事を無償とする旨の合意は抗弁として主張できることから,有償合意が認められない場合,すなわち,商法512条が問題となる状況では,無償合意が認定できる場合もあるという指摘もなされています。

 この場合の無償合意には,当初の見積金額の範囲内で行うことの合意や,当初予算の範囲内で当該工事を行うことの合意も含まれるものと考えられます。