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懲戒解雇と中小企業退職金共済の関係

 懲戒解雇された場合の退職金の(一部)不支給については,社内の規程の定め方も含めて多くの議論があり,裁判例も多数出ています。

 この議論は,基本的に各会社独自の退職金規程を念頭に議論されており,中小企業によく採用されている中小企業退職金共済(いわゆる中退共)の扱いについては,別の観点から,実務上問題になることもあります。

 注意するべき点は,中退共による退職金受給権は,当該従業員が直接独立行政法人勤労者退職金共済機構に対して取得するものと考えられるため,会社の規程に懲戒解雇の場合に退職金を支給しない定めをしていても,従業員が当然に退職金受給権を失うことにはならないということです。

 会社は,機構に対して退職金の減額を申し出ることはできますが,減額するか否かは機構の判断によることになりますし,減額されたとしても差額分が会社に返還されるわけではありません。

 中退共から支給される退職金額が会社の退職金規程の金額を上回る場合にその差額分を会社に返還する旨の合意について,強行法規及び公序良俗に反して無効と判断した,東京高判平成17年5月26日判決があります。