診療録はいつまで保存するべきか
医師法24条は,医師は診療をしたときは,遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならないこと,5年間保存しなければならないことを定めている(医師法施行規則23条,医療法施行規則20条も参照)。
なお,違反した場合には,50万円以下の罰金に処せられる旨規定されています(医師法33条の2)。
診療録は,医師の備忘録・メモではなく,民事裁判でも刑事裁判でも診療経過を解明する重要資料と位置づけられており,診療録に記載されている事項は存在するものと認められ,記載のない事項は存在しなかったものと推定されると一般に言われています。
上記のような意味で,医療行為の正当性などの問題が発生したときに,診療録を廃棄していると,医療行為の正当性を立証できなくなってしまうということもあり得ます。
不法行為に基づく損害賠償請求は,損害および加害者を知った時から3年で消滅時効により消滅し,不法行為の時から20年の除斥期間で消滅するとされ,診療契約違反に基づく損害賠償請求は10年で消滅時効により消滅するとされています。
どの時点から起算するかの点も踏まえた検討が必要だと思われます。
なお,2020(平成32)年4月1日施行の改正民法の影響も考慮する必要があります。
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