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相当の対価を得てした財産の処分行為の否認と「隠匿等」の実行の要否

 破産法161条は,破産者が相当の対価を得て財産の処分をした場合においても,否認権を認める規定であり,要件として,「当該行為が,不動産の金銭への換価その他の当該処分による財産の種類の変更により,破産者において隠匿,無償の供与その他の破産債権者を害することとなる処分(「隠匿等の処分」)をするおそれを現に生じさせるものであること。(1号)」,「破産者が,当該行為の当時,対価として取得した金銭その他の財産について,隠匿等の処分をする意思を有していたこと(2号)」が規定されています。

 では,「相当の対価」として取得した財産が隠匿等されないままの状況にある場合,否認権を行使することができるのでしょうか。

 この点については,学説上争いがあります。

 条文上隠匿等の処分をしたことは要求されていないことから,隠匿等されないままの状況である場合にも否認権の行使を肯定する見解と,一般的な有害性の要素がないという観点から否認権の行使は否定されるという見解です。

 この争いは,改正民法424条の2の解釈・適用にも影響を与えるものと考えられますが,実際に倒産法上の否認権なり民法上の詐害行為取消権が行使された場合に,相当の対価を得て取得した財産が隠匿等されない状態の場合には,債務者の主観的要件を主張立証することは困難なのではないかとも考えられます。