懲役刑、禁錮刑、拘禁刑の刑の軽重の考え方
懲役及び禁錮が廃止され、個々の受刑者に応じて必要な作業や必要な指導を行う拘禁刑が導入されましたが、施行日の6月1日より前に懲役または禁錮に当たる罪を犯した場合には、なお懲役または禁錮により処罰されることになり、また、懲役受刑者や禁錮受刑者に拘禁刑が執行されることはありません。
施行日後の改正法の適用に当たり、施行前にした行為に関する罪と施行後にした行為に関する罪が同一罪名の場合には、併合罪の罪数処理の際に罪の軽重を決定する必要がでてきます。
すなわち、併合罪の処断刑については、「その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを長期とする。」とされており、施行前の行為は懲役刑、施行後の行為は禁錮刑の軽重によって「その最も重い罪」が確定されます。
結論としては、罪の軽重は、懲役、拘禁刑、禁錮の順に重いとされており、拘禁刑ではなく懲役刑が課されることになります。
矯正の現場において、拘禁刑に一本化されるのはかなり先になることは明らかで、矯正職員の意識の整理も重要な課題となりそうです。
従来、弁護士が刑事事件の弁護人としては、若干軽視しがちだった部分ですが(弁護士会は人権救済案件として関与してきた分野ではあります)、拘禁刑の運用に対する関心・監視と、弁護活動への反映も重要になりそうです。
刑法第9章
(併合罪)
第四十五条 確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。ある罪について拘禁刑以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。
(併科の制限)
第四十六条 併合罪のうちの一個の罪について死刑に処するときは、他の刑を科さない。ただし、没収は、この限りでない。
2 併合罪のうちの一個の罪について無期拘禁刑に処するときも、他の刑を科さない。ただし、罰金、科料及び没収は、この限りでない。
(有期拘禁刑の加重)
第四十七条 併合罪のうちの二個以上の罪について有期拘禁刑に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを長期とする。ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない。
(罰金の併科等)
第四十八条 罰金と他の刑とは、併科する。ただし、第四十六条第一項の場合は、この限りでない。
2 併合罪のうちの二個以上の罪について罰金に処するときは、それぞれの罪について定めた罰金の多額の合計以下で処断する。
(没収の付加)
第四十九条 併合罪のうちの重い罪について没収を科さない場合であっても、他の罪について没収の事由があるときは、これを付加することができる。
2 二個以上の没収は、併科する。
(余罪の処理)
第五十条 併合罪のうちに既に確定裁判を経た罪とまだ確定裁判を経ていない罪とがあるときは、確定裁判を経ていない罪について更に処断する。
(併合罪に係る二個以上の刑の執行)
第五十一条 併合罪について二個以上の裁判があったときは、その刑を併せて執行する。ただし、死刑を執行すべきときは、没収を除き、他の刑を執行せず、無期拘禁刑を執行すべきときは、罰金、科料及び没収を除き、他の刑を執行しない。
2 前項の場合における有期拘禁刑の執行は、その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを超えることができない。
(一部に大赦があった場合の措置)
第五十二条 併合罪について処断された者がその一部の罪につき大赦を受けたときは、他の罪について改めて刑を定める。
(拘留及び科料の併科)
第五十三条 拘留又は科料と他の刑とは、併科する。ただし、第四十六条の場合は、この限りでない。
2 二個以上の拘留又は科料は、併科する。
(一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理)
第五十四条 一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。
2 第四十九条第二項の規定は、前項の場合にも、適用する。
刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律(令和四年法律第六十八号)


