譲渡制限株式を譲渡する場合の流れ
1 株式の譲渡には、会社の承認が必要な旨定められている場合があります。
譲渡制限株式(会社法2条17号)と呼ばれ、中小企業の多くが発行しており、発行する全部または一部の株式の内容として譲渡制限の定款の定めを設けていない株式会社が、「公開会社」です(会社法2条5号)。
2 譲渡制限株式を換価、現金化しようとして当該株式を譲渡する場合には、譲渡する株式の数、当該株式を譲り受ける者の氏名、名称を明らかにして会社に請求することになります(会社法138条1項1号イ・ロ)。
会社法136条は、「譲渡制限株式の株主は、・・・他人・・・に譲り渡そうとするときは、当該株式会社に対し、当該他人が当該譲渡制限株式を取得することについて承認をするかの決定をするか否かの決定をすることを請求することができる。」と定めています。
当該承認がない限り、株主名簿の名義書き換えを請求することができません(会社法134条)
3 譲渡の承認をしない場合に、当該株式会社か、当該会社が買取を指定する者に対し株式を買い取りを請求する場合にはその旨を明らかにします(会社法138条1号ハ)。
なお、譲渡制限株式の取得者が、譲渡制限株式を取得したことについての承認をするか否かの決定をすることを当該会社に請求できる旨会社法137条1項が定めています。
会社の事前の承認なしになされた譲渡制限株式の譲渡は会社に対する関係では効力を生じないが、譲渡当事者間では有効とするのが最高裁判例の立場です。
4 会社は、譲渡を承認したか否かについてその内容を通知する必要があり、不承認とした場合にも、承認請求の日から2週間以内にその旨を通知しなかったときは、承認した扱いとなります。
5 会社または指定された買取人が買い取る場合、株主総会の特別会議により、株式を買い取ることおよび買い取る株式数を決議する必要があります。
会社・指定買取人が対象株式を買い取る旨の通知は、形成権の行使とされ、対象株式に関する売買契約が成立し、その後具体的な価格を協議することになります(会社法144条1項、7項)。
なお、会社法141条2項、142条2項は、買取の通知の要件として、1株当たり純資産額に買い取る対象株式の数を乗じて得た額を本店所在地の供託所に供託し、その供託を証明する書面を交付することを要求しています。
協議が調わないときは、裁判所に対し、「売買価格」の決定の申立てをすることができ(会社法144条2項、同7項)、裁判所は、「譲渡等承認請求の時における株式会社の資産状態の一切の事情」(会社法144条3項)を考慮することになります。
裁判所の決定に対しては、即時抗告ができます(会社法144条6項、7項)。
6 DCF法、収益還元法、配当還元法、純資産法などの評価手法を用いて、非流動性ディスカウントなどの調整が行われ、弁護士、公認会計士、税理士と連携して対応することが求められます。
なお、最高裁令和5年5月24日第三小法廷決定は、会社法144条2項に基づく手続きにより譲渡制限株式の売買価格の決定をする場合において、「当該譲渡制限株式に市場性がないことを理由に減価を行うことが相当と認められるときは、当該譲渡制限株式が任意に譲渡される場合と同様に、非流動性ディスカウントを行うことができるものと解される。」と判示しています。
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