債務控除(相続税)と債務免除益(所得税)の二重課税が争われた裁判例の紹介
東京高裁令和6年1月25日判決は、相続により承継した債務が条件成就により免除された場合、その免除された金額に対して課税することは、二重課税に該当し、所得税法9条1項16号に反して許されないと判断した。
一審東京地裁令和5年3月14日判決は一時所得とした課税庁の判断を肯定していたところ、最新の判例時報2025年2月1日号(2611号25頁)で紹介されています(なお、上記東京高裁を含めて、既に多くの判例評釈がなされいます。)。
争点は、⑴債務免除益の存否、⑵資力喪失(所得税法44条の2)の有無、⑶二重課税の排除(所得税法9条1項16号(現17号))の適用の有無、⑷理由付記の不備の有無、⑸前訴の弁護士費用等を「その収入を得るために支出した金額」(所得税法34条2項)として控除することの可否と、多岐にわたっており、それぞれ重要なテーマが取り扱われています。
結論として、相続税の申告において債務控除されなかった「債務」について支払義務が免除された場合において、所得税課税がなされることが正当化されるのかという素朴な違和感を、所得税、相続税の観点からどのように議論するべきかということだと思います。
本件のような停止条件付きの支払義務免除の和解契約の機能については、不払いの場合に全額の支払を余儀なくされるという心理的強制が債権者に有利に働くこと、本来支払うべき債務を双方が確認することの意味が小さくないことから、実務上しばしば利用されているという指摘がなされており(増田勝久・古谷恭一郎『和解の基礎と実務』(有斐閣、2022年)131頁)、また、頻繁にあるとも指摘されています(上記判例時報匿名解説)。
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