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否認権行使の流れと対応

1 裁判所から選任される破産管財人の弁護士は、まず、内容証明による請求により、受益者とされる方に任意で支払いを求めることが通常です。電話で請求の内容の補足説明をすることも考えられます。さらに、裁判所の許可を得て、否認の請求、さらに、否認の訴えに進む可能性もあります。

2 否認の請求は、破産管財人の弁護士が裁判所に申立てることにより手続きが開始され、破産管財人は、否認の原因となる事実を、書証により疎明する必要があります。手続きの中で、受益者とされる方が、裁判所で事情を聴かれる可能性もあります。否認の請求では、上記のとおり、「疎明」、すなわち、一応確からしいという心証を形成することができれば足り、否認の訴えよりは、破産管財人弁護士による立証のハードルは低い手続きといえるでしょう。

3 否認の訴えがなされた場合には、通常の訴訟と同様に、否認の要件を立証するための証拠は書証に限られることはなく、破産者や受益者とされる方等の主観的な要件を中心に証人尋問が行われることが想定されます。したがって、他の手続きと比べて長期間を要することが想定されます。売買契約を念頭におくと、具体的な争点として、受益者とされる方が、①売主である破産者が実質的危機時期の状態にあることを知らなかったこと、または、②当該売却行為が責任財産を減少させる効果をもつものであることを知らなかったことのいずれかを立証する必要があることになります。知らなかったことの立証は、ないことの立証と同じく、一般的には簡単ではないとされていますが、具体的な事情を踏まえて、裁判所が判断することになります。

4 破産管財人は、裁判所と協議して、勝訴の見込みや回収可能性、想定される時間や費用を考慮して、どこまで行うか、和解的な処理するべきかを、随時、検討することになります。