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使用者責任の「事業の執行について」の意義

 事業執行性の要件は、使用者の「事業」の範囲内において、被用者が行った行為と被用者の「職務」との間に関連性が存在することを意味するものとされ、裁判例及び学説によって、①使用者の事業の範囲に属するか、②被用者の職務の範囲に属するかという二段階で検討、判断されることになりますが、権限を逸脱したり濫用したような取引的不法行為の事案や、事業の執行との関係がはっきりしない事実的不法行為の事案では、難しい判断となります。

 取引的不法行為の使用者責任が問題となった最高裁平成22年3月30日判決では、当該不法行為が、単に使用者の事業の範囲内にあるというだけでは不十分であり、客観的、外形的に見て、当該被用者が担当する職務の範囲に属するものでなければ使用者責任は成立しない旨判示しています。

 事実的不法行為としてよく議論されるのが、被用者によるけんか、交通事故、暴力行為などですが、被用者が会社内で盗撮を行った行為について、盗撮された従業員が会社に対して使用者責任を追及したという東京地裁平成25年9月25日判決では、当該盗撮行為の事業執行性について否定されています。