遺留分減殺請求と登記
不動産の登記名義人が亡くなった場合にどのような相続登記をするかについては,その相続の態様に応じてしかるべき登記手続をする必要があります。
遺言がある場合にはそれに従って登記手続をすることになりますが,遺言の内容が特定の相続人の遺留分を侵害するものであった場合には,遺留分減殺請求がされることもあります。
被相続人Aが遺言によって相続人Bに対して不動産,甲・乙・丙を相続させる,としていた場合に,他の相続人Cが遺留分減殺請求をして甲不動産の所有権を取得したケースではどのような登記申請をすべきかを考えてみましょう。
まずBについては甲乙丙について●年●月●日相続を原因とする所有権移転登記をB単独で申請することができます。
一方でCからの登記申請については二通りの登記申請が考えられます。
一つ目のケースは既にAからBへの所有権移転登記が完了していた場合です。
この場合には甲不動産について○年○月○日遺留分減殺を原因として所有権移転登記を申請することになりますが(昭和30年5月23日民甲973号),注意しなくてはならないのがこの場合にはCのみならず登記義務者としてBの協力が必要になる点です。
Bの協力なしにCが単独で登記申請をするためには裁判,調停等の手続を経る必要があります。
二つ目のケースはBの相続登記がいまだなされていない場合です。
この場合Cは甲不動産について●年●月●日相続を原因とする所有権移転登記をC単独で申請することができます。
実際には甲不動産の所有権はAからAの死亡日にBへ,Cからの遺留分減殺請求がBに到達した日にBからCへと移っているわけですが,登記簿上はAの死亡日付でAからCへ所有権が移転した,との公示がされることになります。
なお,令和元年7月1日からは,遺留分に関する権利行使(遺留分減殺請求権という呼称から,「遺留分侵害額の請求」とされました。)の効果は,物権的効果は生じず,金銭債権は発生することとされます(改正民法1046条1項)。
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