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名義貸与の依頼を承諾して自動車の名義上の所有者兼使用者となった者が運行供用者に該当するとされた事例(最高裁平成30年12月17日判決)

 自動車損害賠償保障法3条の「運行供用者」は、「運行支配」と「運行利益」の要素から判断する二元説が判例・通説とされています。

 運行支配は危険責任、運行利益は報償責任に対応すると説明されます。

 最高裁平成30年12月17日判決の事案は、生活保護を受けていたAはが、弟である被上告人に対して名義貸与を依頼し,被上告人が承諾、Aが本件自動車を購入し,所有者及び使用者の各名義を被上告人としたというものです。

 最高裁は、「被上告人は,Aからの名義貸与の依頼を承諾して,本件自動車の名義上の所有者兼使用者となり,Aは,上記の承諾の下で所有していた本件自動車を運転して,本件事故を起こしたものである。Aは,当時,生活保護を受けており,自己の名義で本件自動車を所有すると生活保護を受けることができなくなるおそれがあると考え,本件自動車を購入する際に,弟である被上告人に名義貸与を依頼したというのであり,被上告人のAに対する名義貸与は,事実上困難であったAによる本件自動車の所有及び使用を可能にし,自動車の運転に伴う危険の発生に寄与するものといえる。また,被上告人がAの依頼を拒むことができなかったなどの事情もうかがわれない。そうすると,上記2(3)のとおり被上告人とAとが住居及び生計を別にしていたなどの事情があったとしても,被上告人は,Aによる本件自動車の運行を事実上支配,管理することができ,社会通念上その運行が社会に害悪をもたらさないよう監視,監督すべき立場にあったというべきである。したがって,被上告人は,本件自動車の運行について,運行供用者に当たると解するのが相当である。」と判示し、運行供用者に該当する判断をしました。