名古屋市の弁護士 森田清則(愛知県弁護士会)トップ >> 相続法改正 >> 相続による不動産承継の対抗要件に関する改正

相続による不動産承継の対抗要件に関する改正

 最高裁は、いわゆる相続させる旨の遺言(改正民法では、特定財産承継遺言)や、相続分の指定が遺言でされた場合に、登記等の対抗要件を具備しなくても、権利の取得を第三者に対抗することができるとしていました。

 改正民法899条の2第1項は、「相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第901条の規定により算定した相続分〔法定相続分〕を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。」と定め、相続を原因とする権利変動(遺産分割、相続分の指定、遺産分割方法の指定、遺贈)について利益を受ける相続人は、対抗要件を備えなければ法定相続分を超える権利の取得を第三者に主張することができないこととしました。

 対抗要件を要求する範囲を法定相続分を超える部分に限定したのは、特定財産承継遺言や相続分の指定がなくても法定相続分に相当する権利については取得することができることから、相続による権利の承継について権利の競合が生じるのは、法定相続分を超える部分に限られることを理由とするものです。

 なお、理論的な問題として、受益相続人以外の相続人は(第三者に遺産を処分した)無権利者であり、その無権利者からの譲受人も無権利者であることを前提としてきた判例理論あるいは従来の考え方の整合性なり位置づけは問題となり得ると考えられます。