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23条照会に対する報告を拒絶する行為は弁護士会に対し不法行為を構成するか

 最高裁平成28年10月18日判決は、「23条照会の制度は,弁護士が受任している事件を処理するために必要な事実の調査等をすることを容易にするために設けられたものである。そして,23条照会を受けた公務所又は公私の団体は,正当な理由がない限り,照会された事項について報告をすべきものと解されるのであり,23条照会をすることが上記の公務所又は公私の団体の利害に重大な影響を及ぼし得ることなどに鑑み,弁護士法23条の2は,上記制度の適正な運用を図るために,照会権限を弁護士会に付与し,個々の弁護士の申出が上記制度の趣旨に照らして適切であるか否かの判断を当該弁護士会に委ねているものである。そうすると,弁護士会が23条照会の権限を付与されているのは飽くまで制度の適正な運用を図るためにすぎないのであって,23条照会に対する報告を受けることについて弁護士会が法律上保護される利益を有するものとは解されない。」とし、結論として、23条照会に対する報告を拒絶する行為について、当該弁護士会に対する不法行為を構成することを否定しました。

 原審は、「23条照会をする権限は,その制度の適正な運用を図るために弁護士会にのみ与えられており,弁護士会は,自己の事務として,個々の弁護士からの申出が制度の趣旨に照らして適切であるか否かについて自律的に判断して上記権限を行使するものである。そして,弁護士会が,23条照会の適切な運用に向けて力を注ぎ,国民の権利の実現を図ってきたことからすれば,23条照会に対する報告を拒絶する行為は,23条照会をした弁護士会の法律上保護される利益を侵害するものとして当該弁護士会に対する不法行為を構成するというべきである。」と判断していました。

 さらに、23条照会に対する報告をする義務があることの確認を求める訴えの適否について、最高裁平成30年12月21日判決は、「23条照会に対する報告の拒絶について制裁の定めがないこと等にも照らすと,23条照会の相手方に報告義務があることを確認する判決が確定しても,弁護士会は,専ら当該相手方による任意の履行を期待するほかはないといえる。そして,確認の利益は,確認判決を求める法律上の利益であるところ,上記に照らせば,23条照会の相手方に報告義務があることを確認する判決の効力は,上記報告義務に関する法律上の紛争の解決に資するものとはいえないから,23条照会をした弁護士会に,上記判決を求める法律上の利益はないというべきである。本件確認請求を認容する判決がされれば上告人が報告義務を任意に履行することが期待できることなどの原審の指摘する事情は,いずれも判決の効力と異なる事実上の影響にすぎず,上記の判断を左右するものではない。」として、23条照会をした弁護士会が,その相手方に対し,当該照会に対する報告をする義務があることの確認を求める訴えは,確認の利益を欠き不適法と判断しています。